月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

moonridersの数名による二、三の事柄「FUN HOUSE YEARS BOXリリース記念スペシャル」 @ ニュー風知空知

毎回、観覧希望メール殺到で激しい競争率と思われる「二、三の事柄」企画。今回ラッキーにも当選してナマで参加することができた。8/23に発売になる『FUN HOUSE years』BOXの特集ということで、FUN HOUSE時代のディレクターであり今はバンドのブレーン“GHQ”としてムーンライダーズに関わる、松本篤彦さんがゲスト司会。2020年12月の「二、三の事柄」(『ムーンライダーズの夜』発売25周年記念企画だった)の続編という趣だね。

 

moonridersの数名による二、三の事柄
「FUN HOUSE YEARS BOXリリース記念スペシャル」
2023年7月30日(日) 
下北沢 ニュー風知空知
開場16:40/開演17:00
会場観覧料金:4,000円(別途ドリンク代600円)
出演:鈴木博文白井良明澤部渡佐藤優
ゲスト司会:松本篤彦(GHQ)

 

人の多い下北沢の街を、熱中症の危険と隣り合わせになりながら会場に着き、開場時間に整理番号順に中へ。前めの席に座れてしまう、わー。最近のホールライブであまり席運に恵まれていない分の運の払い戻しだろうか、ありがたやー。これまでに「二、三の事柄」が何回開催されているか、もはや把握できていないのだけれど、澤部さん優介さんが参加するのは初めてかしら…? と、セッティングされているキーボードを眺めながら思う。

 

開演時間になり、まず入ってこられた司会の松本篤彦さんが自己紹介、そしてメンバーを呼び込む~。ステージ向かって左から、優介さん、博文さん、良明さん、澤部さん。ロンドンにピーター・ガブリエルを観に行った優介さん、ハリウッドボウルにスパークスゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツを観に行った澤部さん、かしぶちさんの「リラのホテル」ライブのアレンジに励む良明さん、人間ドックで内臓がきれいとほめられた博文さん(笑)、などの近況報告。

 

今回のBOXに入るものや入らないもの、貴重な当時の写真や資料などを壁に投影しながらのファンハウス時代振り返りトーク。松本さんの進行がしっかりしているのと、優秀なメンバーが2名(優介澤部)入っているので、ライダーズにありがちなグダグダトークになりそうでならずに進む(これ大事 笑)。

 

ファンハウス移籍第一弾だったカバー曲集『BYG High School Basement 1』は最初に候補曲リストを松本さんがバンドに渡したけど、最終的には1曲も選ばれなかった話(松本さん曰く「それも想定内でした」)、タイアップがたくさんあっていろんなイベントをした話(投影ではタワレコのインストアの写真も)、レコーディングでハチャメチャやった話(スタジオでスイカ割り!とか、録音終わりに必ず併設のバーカウンターで飲んじゃうとか、ハロウィンの仮装とか)…。松本さんの記憶と記録がしっかり残っていることにあらためて驚きと敬意を感じる。

 

シングル「冷えたビールがないなんて」の話題のとき、澤部さんから「作詞・ムーンライダーズ文芸部、作曲・ムーンライダーズ軽音楽部って表記は、なんでなんですか?」というような質問も。「博文・慶一・かしぶちが詞を書いて岡田・良明・くじらが曲を書くんだけど、必ずしもそうなってるとも限らないんだけどね」というのが2人の答え。松本さんの補足も合わせると、タイアップ曲についてはデモは全員がそれぞれ作ってたので、クレジットはこういうことにしようとなったのだとか。博文「レノン=マッカートニーみたいなもんだよ」。ふむふむ。あと、松本さんのお話で個人的に長年の疑問が解けたのが、ブルー分のハッピーは当初は良明さんが『BYG』用に書いた曲で、でも生みの苦しみでなかなかカタチにならず何パターンも書き直しを重ねていて、最初のバージョンに松本さんが「'94」とつけていたので、世に出たバージョンが「'95」なのだと。なーるーほーどー!どうしてこの曲、タイトルにわざわざ「'95」ってついてるのかなーと、うっすらずっと疑問に思ってたのでスッキリした~。

 

トークメンバーに澤部さんと優介さんが入っていると、後追い世代の深い洞察に照らされて、作品のまた新たな側面が見えるような感じもあった。阪神淡路大震災オウム事件のことは知っている(覚えがある)澤部さんと優介さんだけど、くじらさんが巻き込まれたハイジャック事件のことは、それこそムーンライダーズを通してあとから知ったと。そしてそんな後追い世代の優介さんは、ファンハウス時代の印象を「かしぶちさんの生のドラムの割合が増えて、バンドっぽい、明るい感じ」。それを聞いて良明さんは「ずっと打ち込みで来たから、あの頃かしぶちくんもドラム叩きたがってたんだよね。ファンハウス時代のリズムはアートポートの音がしてる」と。澤部さんも「後追いで聴くと、アマチュア・アカデミーからAORぐらいまでは生のドラムがほとんどないけど、それがBYGで生のドラムがああいう風に(1曲目の名犬ロンドン物語)聴こえてきて、リアルタイムで聴いた人はうれしかったんじゃないかな」。そしてメンバー全員でかしぶちさんのドラムの独特さについて、「音色(おんしょく)がめちゃくちゃいい」「おかずを入れないですよね」「そう!入れてって言っても入れない(←良明 笑)」「スネア一発の説得力がすごい」「ああいうドラマー今いないですよね」などなど…。

 

良明さんはとにかく、ファンハウス時代がすごく好きだと。メンバー全員プロデュース業とか外部との交流がものすごくあって(良明さんがプロデュースしてた某T○KI○←伏字 が、ライダーズのレコーディングを見学に来てた話とかこの日も出てた)、外で吸収したことをバンドにまた持ち込んだりする楽しさがあった、って。

 

最後のほうに松本さんが投影してくれた、『Le Cafe de la Plage』の「くれない埠頭」録音時のビデオが、レアですごかったなー(これは今回のBOXには入ってないそう)。アカペラのコーラスを、ファンハウスの講堂で録音しているときの様子。せーので生音で声を録っていて、音の響きをメンバーそれぞれのマイクまでの距離や立ち位置で調節している。なんていうかムーンライダーズって、こういう、誰よりも自分たちが音作りを一番楽しんでいたいっていうプリミティヴな気持ちが一貫して変わらないのだよな…と、ちょっと感動してしまった。

 

エピソードはまだまだ尽きないけれど、盛り上がりのうちにトークは終了、そして休憩なしでそのままライブへ。演ってくれた曲は

 

01.ガールハント
02.君に青空をあげよう
03.おかわり人生
04.僕は負けそうだ

 

かな。「ガールハント(かしぶち曲)」も「君に青空をあげよう(岡田・白井曲)」もライブでは珍しいよね!?この日は博文さんもアコースティックギターで、驚きのアコギ×3+キーボードだったんだけど、4人のうちの半分が澤部さん優介さんということも手伝ってか、フシギにフレッシュな感じがあったなー。ガールハントの「ン~チュパチュパ」というコーラスも、アコギが3本鳴りまくるのも、まるで部室で合わせてるみたいな気安さとガッツがあって。「君に青空をあげよう」の澤部さんの歌もよかったし、「僕は負けそうだ」の優介さんの男っぽいボーカルもとてもよかった…。良明さんから「この4人でまたやりたいね」というような言葉が確かあったと思うのだけど、すごくイイと思う~。

 

まだまだ書ききれていないこと多々だけど…。2020年12月の「二、三の事柄」のときと同様、松本篤彦さんのムーンライダーズ愛と、ディレクターとしてそれを形にして世の中に伝えようとしていた熱意に、しみじみ敬服する1時間半余りだった。こういう方が要所要所にいてこそ、30年前の作品がBOXとなって再び最新の耳に届いたり未発表作品が世に出たりということが起きるのだなあと思う。今回も貴重なイベント、ありがとうございました!

 

 

(ちょっと時間差できちゃったけど【あとからメモ】として記録~。2023.08.15)