月夜のドライブ

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moonriders『80年代のムーンライダーズvol.1』 @ EX THEATER ROPPONGI

この日のムーンライダーズ、全部よかったなー全曲よかったなー全瞬間攻めてたなー!!!!1曲が1回のライブに相当するぐらいドラマに満ちてて、毎曲走馬灯回しまくる勢いでいろんなこと思いながら聴いてるんだけど、終わってみれば「凄いライブだったな…」と息切れ切れでやっと言うのみ。はーーーー凄かった…。

 

2021年6月の"THE SUPER MOON"のとき以来、2年半ぶりのEX THEATER ROPPONGI。(余談になるけど前回のEXシアターのときはまだ優介・澤部がライブの固定メンバーではなかったことを考えると、この2年半の間にもムーンライダーズはものすごい変貌を遂げているな…。あのライブに退院翌日で登場した岡田さんが今はいないというあまりにも寂しい変化もあるけれど…。)いつもながら『いったい普段どこにこんなにたくさんムーンライダーズファンが生息を?(お互い様)』と思うほどの長い列を経て場内へ。S席のお土産受け取って席へ。(ここでお土産バッグの中身見るべきだった!→私)

 

moonriders『80年代のムーンライダーズvol.1』
2023/12/27(水)
EX THEATER ROPPONGI
開場18:00 開演18:30
チケット価格(税込/全席指定):
S席¥12,800(お土産付) / A席¥8,800 ※ドリンク代別途(¥500)
moonriders鈴木慶一武川雅寛白井良明鈴木博文、夏秋文尚)
澤部渡佐藤優
guest:矢口博康

 

 

EXシアター、横に長いー。その中で私は今回やはり席のx軸運がなく、前方なれど超はじっこ。満員の場内に、ちらほらとペンライトの灯りが見える。これを眺めながら『今日はペンラ勢多いね~』『…え、でもムーンライダーズのライブにしちゃ多過ぎね?』『もしかして(マニラ・マニエラのライブのときみたいに)良明さんから事前に指示出てたりした?』『だとしたらツイート見落としてたなー、最近TLにも全部のツイが反映されないしな…』と納得までしてた私だ。ペンライトがS席のお土産だったことに最後まで気づかず!振りそびれたー!

 

開演1曲目は「悲しいしらせ」。並びは前列向かって左から優介、(矢口さんのスペース、)良明さん、博文さん、夏秋さん(ドラムがステージの内側に向いてる&アクリル衝立あり)、少し高くなってる後列左から慶一、澤部、くじら。ちょっと斬新な並び。私は下手ハジだったので、優介さんが目の前で、結果優介さんの天才さに撃ち抜かれまくることに…。わちゃわちゃした演奏が80年代っぽい「エレファント」。黒っぽいギターのリフとピアノの絡みがカッコイイ「G.o.a.P」。優介さんのピアノが絶品だ…。

 

ここで矢口博康さん呼び込まれ、博文ボーカルで「30」。フッフッフーフフッフー♪ 矢口さんのサックスが入ると一気に80年代のムーンライダーズぽさが増すの、さすが(慶一さんもMCでそう言ってた)!でー、次の「真夜中の玉子」(ライブで聴くのなんていつぶりだろう!?!?)が、とんでもなくカッコよかった!私的この日のハイライトその1だったな!あのテンポあの緊迫感の演奏を、あの頃以上のテンションで!とんでもないAround70たち。♪夜中の2時までいつでもクッキン…♪のとこの優介さんのプレイが60年代ロンドンの有能なタイピストみたいでめちゃくちゃカッコよくてしびれたなー!次の「霧の10㎡」、去年マニエラ+青空百景ライブで聴いたときも思ったけどギターのリフとかすごくAMATEUR ACADEMYっぽい音よね。聴き手は1枚ごと聴くけど、ムーンライダーズの時間はつながってるのだ。

 

次が!意外すぎて最初わかんなかった!「ロシアン・レゲエ」アートポートのナンバー!選曲マニアックだな!これ(当時もそうだったと思うけど)、今聴いてもヘンすぎておかしくってしょうがなかった。みよんみよんした耽美な音像。TVKテレビ神奈川)の深夜の5分番組とかで北欧から来た謎の外タレ見てるみたいな気分(笑)。スモークまでもくもく出てきちゃっておもしろすぎた。さらに博文さんがキーボードに入って優介さんがベースにチェンジした次の曲が最後までわからなかったよ。水族館のアルバムに入ってそう…と必死で考えてたけど、くじらさんのソロアルバムの「渚のアンビエント・ミュージック」だったらしい(アートポートの曲なんだね)。博文さんのあの不穏なピアノの音が入るだけで、湾岸ぽいの、スゴイな…。「Y.B.J.」めちゃめちゃ矢口印のサックスを聴かせまくって、いったん矢口さんは捌ける。

 

無防備都市」でギアがさらに一段上がるバンド。かっけー!もうここ最近のライブでのムーンライダーズは、いつでもビュンと走り出せる、豹とかそういう生き物のようよね。30代&50代の懐刀を忍ばせてるとはいえ、こんなAround70バンド他にいないのでは。雑多な音がだんだん集まってきてカタチをとるイントロ、「A FROZEN GIRL, A BOY IN LOVE」。くじらさんのボーカルはひとライブごとに強さを増してきてると毎回思う。くじらさんにこれを歌われると、私は個人的にムーンライダーズを初めて観た衝撃の86年青年館ライブを思い出さずにいられないけど、でも(今日の80年代しばり選曲どれもそうだけど)「懐かしい!」って感じにはならない、なぜなら目の前の「今の」ムーンライダーズがすごい勢いで上書きしてくるから。彼らが演奏するとどの曲も思い出じゃなくもっとリアルな「今」になる。アウトロでくじらさんのバイオリンの音だけが残った…と思ったら、ギギギギというまさかのハエの羽音になって「僕はスーパーフライ」へ。つなぎかっけー!この曲の歌詞を聴きながら思ったけど、今のVtuberが出す歌みたいよね。ほんっと先取りしすぎなぐらい時代のずっと先を走ってるし、だからこそいつも孤高のワンアンドオンリーなのだよなーーー。

 

くじらさんのMCを挟み、年末だからみんなで歌おう、とトランペットの先導で「No.9」…“クズにはクズの死に場所があるよ”と全員で声を合わせる我らライダーズファン(笑)。演奏はそのまま「だるい人」に突入!うわー生で聴けるなんて!「だるい人」80年代当時もだし、今聴いても少しも衝撃が薄れない歌詞(蛭子能収さん)よね、それを今演ってカッコイイライダーズが最高だ。

 

かしぶちくんの曲を、と言って「Frou Frou」。矢口さんのサックスが派手にのびやかに鳴りまくる!この曲に限らずだけど澤部さんのボーカルとコーラス、大活躍だったなあ。さらに「GYM」またツウな曲、イイ曲。演奏後、慶一さんが「これはシングルのA面もB面も化粧品会社のタイアップがついたけど“ノーヒット”」って(笑)。たたみかけるように「NO.OH」、うおー!歌詞のかけ合いかっこいいーーー!アガル!そして「Kのトランク」ライブタイトル通りとはいえ息もつけないほどの80年代の嵐!薔薇がなくちゃ生きていけないまま何十年、の民も歌う、歌う。

 

本編ラストは「DON'T TRUST ANYONE OVER 30」だった。曲前に慶一さんが「Don't trust over 30、40代はいないので50、60、70で!」と指南してくれる。ナルホド今のメンバーの年代ね。それにしても、この曲が出た86年、ムーンライダーズは10周年だったけど「10年バンドが続くってすごいな」って当時思ったこと、ものすごくリアルに覚えてる。(その頃10年続いてるロックバンドなんてなかったから。)まさか「Don't trust anyone over 70」と歌う未来が来るなんて、誰も1ミリも思わなかったよね。歌い終えて慶一さんが「Don't trust us!Don't trust us!」とアジテーションしてエンド。

 

アンコールの拍手が続き、メンバーは、フジオプロのキャラのそれぞれがプリントされた黒Tシャツ(非売品!)に着替えて戻ってきてくれた。優介さんが代理で岡田さんキャラのTシャツを着ててグッとくる(し、この日優介さんがかぶってたハット、見覚えあるなと思ってたらやはり岡田さんのだったようだ)。慶一さんが少し寂しそうに「今年はたくさんの人がいなくなってしまった」と言い、岡田くんの曲でユキヒロがよく歌ってくれました、との紹介で「9月の海はクラゲの海」。口数少ない優介さんの、岡田さんへの思いがあふれるような美しいピアノの音。

 

そしてラスト、PANTAがよく歌ってくれた曲、と「くれない埠頭」。(そうだ、30周年(2006年)の野音のときにもPANTAさんこの曲選んで歌ってるね。)この日の!この!「くれない埠頭」が!これまでライブでも何十回も聴いてきた曲だけど、これまでで一番カッコよくて驚愕した…!!!!アンビエントというのかサイケデリックというのか、すべての音が静かに美しくそして激しく混然一体となるイントロダクション、ひんやりしたビートと漂うノイズ、博文、澤部、慶一と回していくやわらかで優しいボーカル。途中でまたインプロビゼーションパートへと突入するのだけど、なんだか、メンバーみんながここではない仮想空間に集まって音を出しているような感覚があったな…そこにはきっと岡田さんもかしぶちさんもいて、一緒に音を合わせているのだろう…と、そんな気がしてしまった。いつ果てるともない音の実験はいつしかまた静かな旋律に戻り、オーディエンスの歌を引き連れてラストへと駆けた。あれだけくり返し演奏してきた大定番曲の「くれない埠頭」でさえも、この激しい破壊と美しい再構築。まだこんなアレンジと演奏が出てくる驚き。こんなことやられたら、もう覚悟決めて一生ついていくしかないよね…。

 

やーホント今日のムーンライダーズ衝撃的にカッコよかったな!慶一さんがくり返し「Don't trust us!」って言ってたけどホント信用も安心もできないよ。落ち着くと思ってたらとんでもないし、緩やかに円熟するなんて思ったら痛い目あうね!?ここにきてまだまだ転がり続けて変化してカッコよくなってオモシロくなるんだもん。

 

全員隅から隅までよかった。まじで全曲全演奏よかった。この日のライブこの日のセトリ、80年代のムーンライダーズがいかにとんでもなかったかということがもちろんまざまざとわかるんだけど、それ以上に、そのカッコよさに耐えうる今の、むしろ凌駕して余りある今の、ムーンライダーズに驚異と恐怖を感じたよ!どこまで行くつもりなのかこのバンドは…!?おっかねー!けどついてく!

 

(セットリスト)
01.悲しいしらせ
02.エレファント
03.G.o.a.P
04.30
05.真夜中の玉子
06.霧の10㎡
07.ロシアン・レゲエ
08.渚のアンビエントミュージック
09.Y.B.J.
10.無防備都市
11.A FROZEN GIRL, A BOY IN LOVE
12.僕はスーパーフライ
13.No.9~だるい人
14.Frou Frou
15.GYM
16.NO.OH
17.Kのトランク
18.DON'T TRUST ANYONE OVER 30
encore
19.9月の海はクラゲの海
20.くれない埠頭

 

 

帰宅後、Twitter(と今も呼ぶ)眺めてたら…

おおお。「ムーンライダーズ」がトレンドワードに。ノーヒットだけどトレンドになることもある(笑)!

 

 

最後に、ライブ翌日に思っ(てツイートし)たことも追記しておこう。

 

今振り返ると2000年代はじめのムーンライダーズはあまりライブをやらないバンドで、私の頼りない記録によると07年は2回、08年は1回のみ。その07年が夏秋さんが正式に(緊急代打でサポートした四国モンスターバッシュ除く)ドラムサポートに入った初めてのライブで、そのあとから“ライブバンド・ムーンライダーズ”の大躍進が始まる。燃え尽きたかのような2011年の休止や、2013年のかしぶちさんの死という深い喪失を乗り越えて、ムーンライダーズの今があるのも昨日のような景色が見れるのも、やっぱり夏秋さんの存在無しには叶わなかったと思えて、全ライダーズファンが夏秋さんに感謝だよなー…と、超絶カッコイイドラムを聴きながらしみじみ思った昨晩だった。

 

(だいぶ時間が開いてしまったけど、この記事は【あとからメモ】として記録しました。2024年2月)