月夜のドライブ

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ヨーロッパ企画『切り裂かないけど攫いはするジャック』 @ 本多劇場

毎回ではないけど行けるときにはなるべく観に行くヨーロッパ企画。ヨロ企初心者だけど、だいたいの役者さんは顔見たら名前が思い浮かぶようになってきた。9/29(金)の夜、本多劇場へ。ヨーロッパ企画のお客さんは男性が多いなーって思うけど、今回も多かった。周辺では男性6:女性4ぐらい(自席ブロックの私の列とその前列調べ)。

 

ヨーロッパ企画第42回公演『切り裂かないけど攫いはするジャック』
東京公演 本多劇場 9/20(水)~10/8(日)
作・演出=上田誠
音楽=青木慶則
出演=石田剛太 酒井善史 角田貴志 諏訪雅 土佐和成 中川晴樹 永野宗典 藤谷理子 /
金丸慎太郎 早織 藤松祥子 内田倭史 岡嶋秀昭

 

館内に流れる開演前諸注意から、役者のやりとりで「ジャック」の世界が始まっていた、手が込んでる。推理劇、とのことだったけど、想像以上に「推理」が主役でビックリした。なんていうのか、推理劇という言葉で想像する最大限の推理を、さらに突き抜けて推理だった。こんなにも推理だった物語、古今東西にいまだかつてなかったのでは?とさえ。今回の出色はやはり永野宗典さんかなあ、ある意味永野さんを味わうお芝居。推理を敬愛し推理に身も心も捧げている警部が、暴走する推理に振り回され吹き飛びそうになりながらも必死で食らいつく様(さま)に笑いっぱなしだった。ちょっとした大仰なセリフまわしがいちいちうまいんだよなあ、永野さん。また、庶民役の面々(諏訪さんや石田さん)がめちゃめちゃよかった。大衆のいい加減さ、無責任さを爽快なぐらいぶん回してて。もう何度も「勝手だなあこいつら!」と永野さん演じる警部のような嘆かわしい気持ちに(笑)。金丸さんがやってた下水道工事屋の若者もツボだった、めっちゃ笑った!「陰謀論だ」「印象操作だ」と言いつのる熱い口ぶりのうっとうしさ最高。おおむね大衆というのは、現代の日本でも19世紀ロンドンでも変わらないんだなーと思わされる。それから没落した貴族役の酒井さんもさすがのひとこと。(たくさん観てるわけじゃないけど)いつどんな芝居でも出てしまう酒井さんのあの感じ。華麗に強がるけどまったくもって頼りなく、結果全員に邪険にされてしまってしゅんとする愛らしい存在感、ブレなくてすごい…。しかし何より、藤谷理子さんのうまさに唸りまくったー!「推理を少々たしなんでおります(キリッ)」という推理婦人の世間知らずでとりつくしまのない面白さが爆発してた!あのセリフ量を滔々と繰り出す技術も凄い…というのはあとから思うことで、観ているあいだはひったすらおもしろい!

 

後半タガが外れたようにドタバタになっていくのは、ああいうのが上田さんは好きなんだろうなーと思えて興味深い。(「出てこようとしてるトロンプルイユ」も「九十九龍城」もそんな感じだった。)小粋にキレイにスタイリッシュにまとめようとすればまとめちゃえそうだけど、それを許さないドタバタ愛があるんだろうなって。そういうサガもよき。

 

言葉が全然追いつかないけど、おもしろかったなあ。(それとあまり気づかせずに)恐ろしいほど達者である役者たちにしかできないコメディ。アタマから終わりまでずーっと右往左往して落ち着かない「真実」(2時間あったら普通は芝居の半ばのどこかで「真実」なんて落ち着いちゃうのにいっこうに落ち着かないのが凄い)を緻密に組み立てる上田さんの頭の中がいちばんミステリーかも。やーオモシロスゴイ芝居だった。こんなに堪能したことないってぐらいに「推理」を堪能した!