月夜のドライブ

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映画『モンタレー・ポップ』を観てきた

立川シネマシティで『モンタレー・ポップ』4Kレストア版の上映が、しかもSUGIZOさん×立川直樹さんのトーク付きであるというので、これは!と思い行ってきた。予約でどセン前方取れてしまい、うわわわ生のSUGIZOさんが至近距離に!もうこんなこと一生涯ないだろうなー。(しかも前トークのあとSUGIZOさんと立川さんはそのまま1列目でご鑑賞に。近!そのあとアフタートークもあるという贅沢な上映だった。)映画おもしろかったので、駆け足でメモ。

 

 

モンタレーポップフェスティバルのことは知っていたけど映画を観るのは私は初めて。フェスは67年の6月に行われ、映画は68年に発表。フェスのドキュメンタリーだけど、演者のインタビューなどはなく、アーティストのステージを、ひたすら近い距離で追う。パンフを読むと、それがペネベイカー監督の当初からの意図だったらしい。ステージの全景さえめったに映らず、演者のドアップの映像が長~く続くので、SUGIZOさんがアフタートークで「近い、そして長い、のが印象的だった。自分たちの最近の映像はカットを割りすぎだなと思いました」(大意)と半分冗談、半分本気な感じで言ってたぐらい。

 

順番はこのままじゃないような気もするけど出てくるミュージシャンは(公式サイトより)

ジャニス・ジョプリン ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
「コンビネーション・オブ・ザ・トゥー」
●スコット・マッケンジー
「*花のサンフランシスコ」
●ママス&パパス
「*クリーク・アレイ」「夢のカリフォルニア
●キャンド・ヒート
「ローリン・アンド・タンブリン」
●サイモン&ガーファンクル
「59番街橋の歌」
ヒュー・マセケラ
「バジャブラ・ボンケ」
●ジェファーソン・エアプレイン
「ハイ・フライング・バード」「トゥデイ」
ジャニス・ジョプリン ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
「ボール・アンド・チェイン」
●エリック・バードン&ジ・アニマルズ
「黒くぬれ!」
ザ・フー
「マイ・ジェネレーション」
●カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ
「セクション43」
オーティス・レディング
「シェイク」「愛しすぎて」
ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
「ワイルド・シング」
●ママス&パパス
「感じるね」
ラヴィ・シャンカール
「ドゥン」

 

洋楽に疎い私なので、ミュージシャンの名前は知ってても曲聴いたり映像見たりは初めての人もたくさん。ジョン・フィリップスがフェスを立ち上げたということでママス&パパスの映像が多いんだけど、ぽっちゃりキャス・エリオットかわいかったなあ。キャンド・ヒートも名前しか知らなくてほぼ初めて見たけど、オタクっぽい集団!と思ったら元々そういう研究体質なバンドなのだね。ザ・フーもカッコイイ映像、キース・ムーンの叩きっぷり!最後ピート・タウンゼントが思いきりギターぶっ壊してた。ギターだけならともかくアンプに叩きつけてアンプまで壊しかけてたからすごい。スタッフが慌ててマイクスタンド片付けてるのが映ってた。ジミ・ヘンドリックスも私あまりに無知すぎて左利きだということも初めて知ったぐらいだったけど、エロくてかっこいいね~。背中弾きしてたし、でんぐり返りもしてたし、すごい身体能力。ジミヘンもアルコールぶっかけてギター燃やして、最後には破壊したギターの破片をオーディエンスに投げてたけど、アフタートークの立川さん曰く「ジミ・ヘンドリックスはインディアンの血が入っているでしょう、火をつけることには魂を迎えるような宗教的な意味合いもあって、ただ単に暴力的というだけでもないんだよね」SUGIZOさん「なるほど。ザ・フーのはただ暴力的なだけですね」笑。ジャニス・ジョプリンのパフォーマンスが客席を圧倒する様子もヴィヴィッドに映されている、ジャニスのパートはほんとにひたすらアップでド迫力。時折足元が映って、かかと無しのミュール履いてるんだけどあの動きしててよく脱げてすっ飛ばないなあとそんなこと思いながら見てた。オーティス・レディングも圧巻のステージ。今の時代に生きる私はオーティスのことも他の出演者と同様にフラットに見てしまうけど、立川さんもトークで触れていたように、この頃黒人ミュージシャンがこういうステージに白人と一緒に上がることにはまだ抵抗があった時代だと。そう考えると(しかもこの頃弱冠25歳ぐらいで)、アウェイかもしれない場で堂々たるパフォーマンスを披露し最終的にお客をあんなにも巻き込んでいける才能は驚くべき。でもこの半年後には飛行機事故で亡くなってしまうのだよね…。おおむね激しいステージが多い中で、アコースティックな歌をしっとり聴かせるサイモン&ガーファンクルの説得力もすごいなあと思った。やはりエヴァリー直系のデュオよね、ハーモニーがしみじみよい。

 

映画はステージの準備の場面から始まるのだけど(ジョン・フィリップスが各方面と電話しまくってたり)、設営されつつあるステージで「音、最高だね」みたいなこと言ってる人に何か既視感が…(洋楽オンチの既視感なので当てにならないが)と思ってたら、パンフによるとそれを言ってたのはデヴィッド・クロスビーらしい。え、そうなの!次観るときにはもっと注目しとこう。でも映画本編にクロスビーのステージは出てこないのだけれどね。モンタレー・ポップ・フェスティバル自体は3日間にわたってもっと多くの出演者が名を連ねていて、映画で取り上げてるのはごく一部なのだね。(バーズもグレイトフル・デッドもアソシエイションもスティーヴ・ミラー・バンドも出てるらしい、それも観たい!)これは想像だけど、やはりステージの衝撃度で選んだのかなあ、無名に近かったジャニスとか、黒人ミュージシャンのオーティスだとか、ザ・フーやジミのステージ。あとはグレイス・スリックのいるジェファーソン・エアプレインなど女性アーティストの活躍にもフォーカス当たってる気がした。

 

ステージ以外のオーディエンスを映してる時間がかなり長くて(半々か、もしかしたらそれ以上)、当時のカルチャーを肌で感じるのにも格好の映画。ジョン・フィリップスが作ったフェスのテーマ曲、スコット・マッケンジーの「花のサンフランシスコ」さながらに花を髪につけたり、みんなが思い思いの格好でフェスティバルに集まる様子がとても興味深い。サイケデリックの祭典だけれど、ヒッピースタイルど真ん中の人はそう多くもなくて、ワンピースだったり、男性はジャケットにバンダナだったり、革ジャンのヘルズエンジェルスのメンバーも出入りしてたり、あとはカッチリめのモードな人も多くて、観客のファッション見てるだけでもまったく飽きない。彼ら彼女らがステージを見つめる様子からも、当時のサイケデリックカルチャーの息吹というか、今まさに大きなムーブメントが起きているんだという緊迫感みたいなものを感じたりもした。イエーイと楽しむような感じというよりも、観客がステージに対して真剣勝負な感じなんだよね、「この瞬間を見逃すまい」と。

 

事前情報で読んでいて、始まる前にSUGIZOさんも言ってた「ストーンズの初代ギタリストのブライアン・ジョーンズが、出演はしていないけど派手な格好で歩いてるのが出てくる」というのに注目してたんだけど、いたいた!おしゃれした人が多い中でもひときわ目立つラメのコートで。(そんなのがあって映画観た昨日、寝る間際にブライアン・ジョーンズwiki読んでたらすっかりしんみりしてしまった、せつねぇ…。)映画は、シタールラヴィ・シャンカールのステージを長々とフィーチュアして終わるんだけど、これ、今の感覚で観てもすごかった。満場のスタンディングオベーション。これが映画のラストということ自体、当時の聴き手が受けた衝撃を物語る。立川さんもSUGIZOさんも「最後はラヴィ・シャンカールが全部持っていきましたね」と。

 

SUGIZOさんと立川さんのアフタートークもかなり長く、充実の特別上映。SUGIZOさんはやはりギタリストなので、大好きなジミ・ヘンドリックスのこんなに素晴らしいパフォーマンスが映像で残っていることがすごい、生で観ることはかなわないけど生に近いものを観れた感じがすると(これに対して立川さんが「自分も生のジミヘンは観れていないんだけど、ピーター・バラカンは観てるんですよ、あと亀淵昭信さんも。悔しいよね(笑)」と)。そしてSUGIZOさん「この頃のミュージシャンはリミッターかけてないですよね。ジャニスもジミ・ヘンドリックスも実際このあとすぐに死んでしまうし。今のミュージシャンは僕も含めてどこかで『明日もあるし』とリミッターをかけてしまう気がするんですが、リミッターをかける必要がなかった時代の凄いパフォーマンスだと思います」(←超大意、うろおぼえ)というようなことを言っていた。他にもたっぷりトークあって(書ききれないけど)おトク感ハンパなかったー。

 

ちなみに(映画と関係ないけど)至近で拝見したSUGIZOさん、超スタイリッシュでカッコよかった!黒一色のいでたちで、映画を鑑賞の際にはジャケットを脱いでマネージャーさんに預けてたけど、再びアフタートークで壇上に上がるときはジャケットはおってピシッとキメキメで。69年生まれ(ウッドストックの年)と言っていた、カッコイイ50代だー。

 

私のようなヘタレリスナーにとっても、リクツ抜きでエキサイティングで面白い映画だったなー。立川さんが、こういう音楽映画はシネマシティのような音響のよい映画館で観るべき!と力説されていた。チャンスがあればまた観に行きたい。

 

パンフとポストカードも購入~。

 

【2024/03/16記】