月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

2021年に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作を観て思ったこと

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立川シネマシティで年始に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作の一挙上映というお年玉企画があり、ギリギリの1月7日に観てきた。パート3だけは1/7以降も上映があるのでほんとはこの日は1と2だけにしようと思ってたんだけど、そこまで観たら3も続きで観たくなってしまって。結局12時半から20時まで映画館に滞在してしまった(笑)。いやーもう今さらオブ今さらだけど、BTTFよくできてるなー!と。名作といわれる続き物の映画を大スクリーンで一度に観るって最高のお正月らしい娯楽よね。

 

映画に詳しくない私がわざわざ書くようなこともないんだけど、2021年の今観て思ったことがあったので、それだけちょこっとメモ。

 

バック・トゥ・ザ・フューチャー』は85年、パート2は89年、パート3は90年公開の映画。私はリアルタイムよりほんの少し後追いで、それこそVHSの時代にレンタルで見たのが最初で最後のような気がする。今でも金ローなんかでちょくちょく放映はしてると思うけど(35周年だった去年もたしか)、個人的に家のテレビで映画あまり見ないので…。30年ぶりぐらいにあらためてちゃんと観たら、思ったより1と2はカーチェイス、3は馬でのチェイスと汽車上のアクションが多くて、記憶の中にあった“SF”の印象以上に、意外にカラダ使ったオーソドックスな冒険物だったんだなあと気づいた。(たぶん、今の映画だったらCGを使いそうなシーンも「体を張って」演じているから、余計にそう感じるのかもしれない)。

 

1985年の「今」を中心に、過去の1955年と、未来の2015年と、もっと過去の1885年が3部作の中で描かれる。そのどれもが2021年の今となっては「過去」なので、映画の中でタイムマシーンが時を超えるのと同じような感覚を、さらにもうひとめぐり複雑にして味わうような感じの不思議さがある。85年のマーティが55年に感じるのと同じぐらいの時間的距離が、私から見る85年にもあるわけなので。マーティのGジャンやコンパクトなヘッドフォンも、ジェニファーのメイクやファッションも、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの音楽も。

 

いちばんハッとしたのが、パート2でマーティが迷い込む「もうひとつの1985年」の描写。2015年の未来でマーティが持ち帰ろうとしたスポーツ年鑑をビフ老人がタイムマシーンを悪用して1955年の自分に渡したせいで生じた、ビフ・タネンがカジノの帝王としてヒル・ヴァレーを牛耳る邪悪な1985年なのだけど、ネオンサインがギラギラ光る悪趣味な街の中をならず者たちが我が物顔でのし歩く、その暴力的で野蛮な世界が、まさに映画を観に来たその日(米時間で2021年1月6日)に米国で起きたトランプ支持者による米議会襲撃の光景とぴったり重なって見えて震撼としてしまったのだ。映画公開の85~90年代当時の観客は、高層カジノで品のないビフ一味が威張り散らす様子を、大げさに描かれた架空の「最悪な1985年」としてポップコーン片手に大笑いしていたはずだけれど、2021年の私たちはこの悪夢のようなシーンを現実のできごととして真顔で受け取らなきゃいけない、そのことにびっくりしてしまった。35年かけてアメリカと世界は、絵空事だった最悪の選択肢を、現実にしてきてしまったのだな…と。

 

そんな2021年を知っている私は、映画の中の、まさにアメリカを体現しているようなナイスガイのマーティとそのまわりのほがらかな世界を見て、ロックンロールとジーンズとスニーカーとスケートボードの、この明るくて正しい(…少なくとも正しさを“目指していた”)、良きアメリカを思い出してくれよ、正気に戻ってくれよ、と、今朝見たニュースの中のアメリカに懇願するような気持にもなってしまったのだ。

 

でも、だから、パート3のラストでマーティに一目会うために1885年から1985年にやってきたドクが、マーティとジェニファーに言う「未来は白紙だ、未来は自分で作るんだ」というセリフは当時よりもずっと重く響く気がした。

 

このドクのセリフは、ラストシーンで、ジェニファーが未来から持ち帰ったFAXにあった(マーティの将来を示す)「解雇」の文字が、マーティが成長を遂げたことによって運命が変わって「消えた」ことに呼応して、放たれる。未来は白紙だ、自分の手で作り出すものだ、と。ドクのこの言葉は、映画公開当時はひとつの理想論として、のんびりと寓話的に受けとめられていただろうなと思う。

 

しかし2021年の私にとってこの言葉は、喉元に突きつけられるような切実さがあった。ギラギラした悪夢のようなヒル・ヴァレーとは違う未来を描くのも、あなた次第なのだと。今のあなたの選択によるのだと。ちょうどアメリカの大統領選があり、アメリカ国民が4年間のめちゃくちゃなトランプ政権を自分たちの手できっちり終わらせたのを目の当たりにしたから(そして振り返ってわが国はその勇気も決断力もないまま駄目になる一方の政権を8年も続けさせている現状があるから)だと思う。マーティがタイムマシーンで仕掛けたように、「過去が現在に」直接的に作用し、「現在が未来を」本当に作るのだと、SFではない現実世界でこんなにも実感するとは思ってもみなかった。

 

気軽に観に出かけた30年以上前のエンタメ作品だけど、思った以上に現実に差し込んでくる感想が発動して、すぐれた映画ってすごいな…とあらためて思ってしまった。

 

 

 

今さらだけどほんとうに隅から隅までおもしろくよくできていて、登場人物の魅力から舞台のすばらしさ、タイムスリップの各所に満載の小ネタまで、書きたいことはいくらでも出てくる『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だけど、その辺はまた機会があればあらためて!

 

 

(シネマシティNEWS 2020年12月27日より)
【急きょ決定】1/1(金)-1/7(木)お年玉企画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』aスタ【極爆】3部作連続上映決定

 暗い気分を吹き飛ばす「映画史上最高に面白い3部作」の字幕版を、1週間限定でお正月から急きょ、3本連続上映します。
 もちろん「ヘルムホルツ共鳴器」で、さらにクリスタルクリアなサウンドにヴァージョンアップしたaスタジオで。
 鳴り響くぜ、あの心たかぶるテーマ曲!

 映画ファンにシネマシティから贈る、お年玉企画。
 ぜひ、ご家族で。未来へこの作品をつないでいくために。

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日時■2021年1月1日(金) – 7日(木) 1週間限定3本連続上映
会場■シネマ・ツー/aスタジオ
料金■通常料金 ※各種割引適用
チケット■通常スケジュールでWeb予約、ツー窓口販売

※当初の予定では『2』のみの上映期間でしたが、合わせて『1』と『3』を上映します。『3』は予定通り、1/8(金) – 14(木)で上映します。