月夜のドライブ

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“ストレートを投げても魔球” ムーンライダーズ『Tokyo7』感想メモ・前編

画像ムーンライダーズ『Tokyo7』。購入以来、空前のリピート率です。ここ1週間これしか聴いてない。しかも、曲を飛ばさずに頭っから終わりまで、それを何度くり返してもオーケーなのがこのアルバムのすぐれて特徴的なところ。慶一さん言うところの「3分の曲を作ろうぜ」という方向性が効いてるんだろうと思う。アルバム1枚が、ロケットのようにスピード感あふれる軌道を描いてびゅんと駆け抜けていく。前作『MOON OVER the ROSEBUD』が、通しで何度もはリピートできないタイプのアルバムだったことを思うと、そのちがいに驚く。もちろん、どちらがいい悪い、という話でもなくてね。

 

心臓のド真ん中を撃ち抜いてくるのは、やはり、この圧倒的な「バンド」感!前作のときすでに、メンバー全員50過ぎのこの集団がまさかの「バンドサウンド回帰」のアスペクトを見せていることに、驚いたし痛快な思いを抱いたけれど、『Tokyo7』では、制作プロセスの面でも音の面でも、6人が「バンドであること」にさらにアグレッシヴになっているように思う。たとえばこのアルバム、楽器を演奏しているのが、メンバー6人とサポートドラマーの夏秋文尚さんだけ。女声コーラスも入らなければ、旧知のミュージシャンの友情出演もない。ライダーズのアルバムではかなり珍しいことかもしれない。話は、もちろんそれ自体がいい悪いということじゃない。ただ、シンプルにメンバー同士のスキルとパッションをぶつけ合って生まれた音が、このみずみずしさをほとばしらせていることに、息をのむ。

 

思えば、たった4年前の『P.W Babies Paperback』(05)のときは、「宅録だけどバンドサウンド」(by慶一さん)の言葉のとおり、あくまで個人作業をネット上でやりとりしたうえでの「バンドの音」だったはず。(ま、このアルバムも私は大好きなんだけどね。)そこから『Tokyo7』へ、たった4年でのこの変化。ムーンライダーズってバンドはほんとうに止まってない。バンドの空気もそのときどきの音も、いつもいつまでも動いていて、有機的で、転がってる。

 

「3分の曲を作ろう」というアルバム全体のディレクションに「俺はそんなに賛成はしなかったんだけど(笑)」という慶一さんが、アルバムが完成した今もそう思っているかは不明だけれど、「東京」という対外的に明快なコンセプト、パンチのあるタイトル、長くても5分を越えないトラック、そしてここ最近のライブの勢いをそのまま反映した緊密で機動力のあるバンドサウンド、それらを携えた『Tokyo7』が、ムーンライダーズ史上まれに見る「聴きやすいアルバム」になったのは事実だと思う。

 

でもね、このわかりやすいアルバムの中で、最後にはからずも浮き彫りになるのは、じつは、ムーンライダーズというバンドの「わからなさ」、それに尽きると思うんだよね。

 

ムーンライダーズは、結成以来つねに「実験的」「先鋭的」「時代の一歩先」といったワードをまとい、ひねくれた音でメインストリームから少し離れた場所に身を置くことをアイデンティティとしてきたバンドだ。バンド自身も、そしてそれ以上にファンも、かたくなにそう思ってきたようなふしもある。それは、もしかすると、かたくなすぎるぐらいにね。

 

ところが『Tokyo7』という、この“わかりやすい”アルバムの中の彼ら、どうよ? けっきょくムーンライダーズって、笑っちゃうぐらい、ぜんぜんわかりやすくなんかないじゃん!「I hate you and I love you」みたいな初期衝動のカタマリのような音を鳴らしても、「笑門来福?」なんていうアッパーなロックチューンを鳴らしても、どうしようもなく存在するこの複雑さ、この深遠。

 

そうか、ムーンライダーズって、ストレートを投げても魔球になっちゃうんだ!!それはまさに、メンバーとは別の「7人め」の魔物が、宿命的に潜んでいるかのように。

 

そう思ったら、もう恐いものなんて何もないよね。ストレートを投げても魔球、なら。私が第一印象の文章で書いた「シーンのど真ん中にいるような感じ」「今の彼ら、恐いものは何もないんじゃないかな」は、そういうこと。「わかりやすくあれ」という外からの要請はとっくに無視して久しいバンドだと思うけど、逆にバンドの内側にいくらかの「先駆であらねば」「複雑であらねば」という呪縛がもしこれまであったのだとしたら、もう、そんなものからもすっかり自由になっていいんだ、と思う。『Tokyo7』というアルバムのあざやかさが、それを告げている。

 

もう、誰のことも、何のことも、恐がらずに、このまま思ったようにどんどん進んじゃえよムーンライダーズ!と強く強く思うのだ。ほらね、だから言ったじゃん、今のムーンライダーズ、特別なことせずともそのままそこにいるだけで最強にカッコイイんだって!『Tokyo7』の、このジャケ写みたいにさ。

 

ダラダラ文章は引き続き、後編「全曲感想文」に突入する予定!(って、長げーな!) …書けるかなあ?

 

Tokyo7
スリーディーシステム
moonriders

ユーザレビュー:
I hate you ...
これは、傑作だ!!! ...
快作!とにかくメロデ ...

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