月夜のドライブ

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博文さんのブログとメトロトロン

画像もういろんなところで話が出ているけれど、鈴木博文さんのブログが「はてなダイアリー」で始まった。

wangan-noteron

http://d.hatena.ne.jp/hirobumisuzuki/

博文さんの書いた文章が、今にも手の届きそうな場所にあるという贅沢。それは、世の中をそっと確実に歪ませるという意味で貴重だし、私にとってはもちろん、何よりも特別なものと言うしかない。彼の言葉は、放たれた先から「詩」になるしかない運命だから。たとえどんなくだらない馬鹿話でも、例えばそう、広告の裏に書き留められた買い物メモだったとしても、ね。…なんてこと、本気で思ってる私はイカレてるかな。でも仕方ない、ムーンライダーズに惹かれ、中でもとりわけ博文さんの詞に惹かれた10代の時点で、もうイカレた人生は決まってたんだ。

 

同時に、私のような「湾岸バカ」をドキドキさせるニュースも。そのブログにも書かれているのだけど、長いこと休止状態だったメトロトロン・レコードが、「新生メトロトロン」として再始動するとのこと。

 

メトロトロン、そのちいさなレーベルから送り出された音源たちが、どんなに私の人生を揺るがしてきたかってことは、これまでもさんざん書いてきたのだけれど。例えば、CD番号「compactron-3」のカーネーション『Young Wise Men』(これは前年にLPで出ていてそれは「megalo-2」)、「compactron-4」のグランドファーザーズ『Western Charnande』、とりあえずこの2枚に出合わせてくれたということだけをとっても、私は百篇くり返し生まれてきたって、湾岸に足を向けて寝ることなんてできない。

 

そして、メトロトロン発の最初のCDである「compactron-1」が、この博文さんの『First compact disc』(88年)。前年に出たソロ作『Wan-Gan King』に、シングル盤収録曲とライブ音源を足した、全17曲というボリュームの一枚。今、昔のメモを見返していて気付いたのだけれど、88年の暮れに手に入れたこれは、どうも私の「初めて買ったCD」だったみたい。まさに私にとってのファースト・コンパクト・ディスクだったんだね。(ちなみに気になる「compactron-2」は、慶一さんの『火の玉ボーイ』再発盤なんだけど、これは買ってないなー。)

 

このCDデザインの素っ気なさ、今見ても衝撃的だね。メトロトロンの盤はその後もこういうデザインが多いのだけど、この『First compact disc』はそれがジャケまで徹底していて、ただ帯シールが貼ってある(アップした画像の私のCDでは、それをケースに貼ってあります)以外は、歌詞カードもなければジャケもない、ディスクに番号さえ書いてない。曲名もわからないから、私は手書きの曲順メモを作って入れてある。あと、その当時、何の雑誌だったか(たぶん「POP IND'S」かな…)に、この『First compact disc』用っていうジャケットが提供されていたので、普段は、黒セーターの博文さんが頬杖付いている写真(のコピー)が挟んであるのだ。

画像

 

このCDでしか聴けない、ライブ音源の3曲「くれない埠頭」「Motel」「さよならは夜明けの夢に」は、この過去記事のコメント欄でnakamura8cmさんが言ってくれてるように(しかし師匠…どこまでフォローしてるんだ!スゴすぎ…)、カーネーションがバックをやっているんだよね。「くれない埠頭」の、もー棚谷さんらしいとしか言えないアコーディオン、矢部さんらしいとしか言えないドラム、それだけで泣ける。そして、「Motel」の棚谷さん+直枝さんのコーラスの蒼さにドキドキし、矢部さんのドラムの男っぽさにしびれ、なにより、大大大好きな坂東さんのギターに気が狂いそうになる…。もう、号泣です。と、書きながら、このテイクの正式なクレジットってどこにあるのかなあ?とふと思う私。そもそも、いつのライブの録音なんだっけ、それ、どこに書いてあるんだっけ…。はて…。

 

私の人生を大きく変えちゃった(いい方にか悪い方にかはわからないけど…)メトロトロンが、再始動して、今度はどんな音源を出してくれるんだろう。博文さんのソロアルバムも、そろそろ切実に聴きたいしな。…と、周りがどんなに勝手に期待を寄せてみても、きっと湾岸主人は足元に愛犬をはべらせたまま煙草をふかすだけに違いなく、誰かの期待に沿って何かをしたことなんかないよって、はぐらかし方はいつものごとくで、その、どうなのってぐらいの変わらなさかげんが、何よりもメトロトロンをメトロトロンらしくしてるんだろうな。

 

*『First compact disc鈴木博文