月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

『MY FOOT』the pillows

画像ピロウズってたぶんかなりキャリアの長いバンドだと思うんだけど、私は今まで一度も聴いたことなかった。何というか、私がいつも聴いてるような音からするとちょっとハードすぎるのかなって遠巻きな印象があって。何の裏付けもない、ただのイメージに過ぎないんだけど。

 

チューインガム・ウィークエンド(夏秋文尚さんがいたバンド)のベーシストだった鈴木淳さんが、ここのところずっとこのピロウズのサポートをしてる、なんて針の穴みたいな興味からこのバンドが今頃気になっていて、今月出た新譜をHMVのサイトで試聴したら、メロディにずいぶんつつかれちゃったので、買ったのだ。『MY FOOT』。こんなたどり着きかたする人間が、中にはいてもいいよね。

 

ストレートでソリッド。そして、メロディがとってもいいんだー。ビートでただ押しまくるだけのバンドには、さすがにこの歳になると、シンパシーが持てない以上にまず身体がついていけないのだけれど(笑)、ビートの奥でこういうメロディが鳴っている場所には、意外なほどすーっと私の心は惹かれていっちゃうな。

 

アルバムのオープニングを飾る「MY FOOT」のイントロ、ドラムとベースが刻むリズムに導かれて、空に開かれていくようなギターの響きは、永遠のもの。こういう、なんてことないんだけど、文句なしにイカシてて、文句なしに切ないギターフレーズを、どんだけのロックバンドが奏でたがってることだろう。

 

キャッチーでアドレッセントなメロディが素晴らしい「空中レジスター」、粗いサウンドをバックに声を振り絞る山中さわおさんの歌に心をかき乱されてしまう「サードアイ」…。「ノンフィクション」も大好きだ、くすっと笑っちゃうようなファンキーな音に図々しいボーカル、でも、どっか壊れそうなデリケートな感じがいつも見え隠れしてて、そこにたまらなくキュンとしてしまう。その、図太さと繊細さの同居は、すべての曲にいつも感じる魅力。インストの曲「MARCH OF THE GOD」のシンプルな疾走感がまたとんでもなくカッコイイ!

 

本当にね、驚くほど、あきれるほど、ギターとベースとドラムの音しか聞こえてこないんだ。クレジットを見ても、メンバー3人のギター&ドラムとサポートのベース、それ以外の楽器の名前は記されていないから、要素はこれだけなんだと思う。下手すると8割方つまらなさに転ぶでしょう、殊にアルバム一枚となれば。ところがそれが、こんなにも曲ごとにワクワクする、めくるめく冒険をしているような楽しさを感じさせるっていうのはいったいどんなバンドの力量なんだろうって思う。たった3種類の楽器と歌、そんなシンプルな手立てで、有無を言わせず、聴く人間をこれほど色あざやかで痛切な思いに巻き込んでしまうなんて。歌の力。音の力。メロディの力。ああ、これだから音楽聴くのやめられないよ。

 

今までだったら、聴こうとは思わなかったタイプのバンドの音に、これだけ気持ちよくばっさりと斬られる自分がおもしろいな、とも思う。それがすべてではないけれど、「シンプルであること」への、「ロックであること」への、切実さが自分の中で増してる感じはするんだ。この歳になって、なぜか。シンプルなロックって、たぶん、若さの特権じゃない。それは、このピロウズのボーカリストであり、詞曲を書いてる山中さわおさんが、私とそんなに変わらない年齢だってこと考えても、そうなんだと思う。

 

ああ、何だか、音楽大好きだよ。やっぱ愛してる。

 

*『MY FOOT』the pillows プロデューサーは吉田仁さん。