月夜のドライブ

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ムーンライダーズの数名による二、三の事柄「新譜と、日比谷野音3.13 LIVE を語ろう!」 @ ニュー風知空知

ムーンライダーズ昨年末のライブから、次の野音までが2か月ちょっとしかなくてただでさえスパンの短さに驚いていたのに、その合間にさらにこんなイベントを入れてくるとはなんて精力的な!と、発表のあった時はかなりびっくりした。コロナ禍での開催のため会場観覧は限定10名という狭き門。そして当選のメールを受け取って震える私…(当たったものの観客数縮小であぶれた前々回分を弔えた~)。

 

2月23日(水・祝)
ムーンライダーズの数名による二、三の事柄
「新譜と、日比谷野音3.13 LIVE を語ろう!」
@ ニュー風知空知
出演:白井良明鈴木博文武川雅寛
ゲスト:石原真、松本篤彦
開場17時20分/開演17時30分
料金4,800円+1DRINK600円

 

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出演予定だった夏秋文尚さんは、わりと身近にコロナ陽性者が出ているということで、ご自身は濃厚接触者ではないものの念のため自主的にお休み。「老齢バンドは健康最優先なので、とても残念ですが、用心の為今回はライヴ辞退させて頂きます」と。健康最優先、御意。(その後、夏秋さんは体調は通常通りのようだったのでよかった!)

 

さて当日。開場時間に風知空知のらせん階段を上がっていくも人影無く…あれ? この日はそこじゃなく一階のエレベーター前に並ぶのだったらしい。バタバタ。(よく見たらライブハウスからのメールに下線付きで書いてあった!舞い上がってて見落とし…。)神から選ばれし(大げさ)10名であるうえに、整理番号も早い超超超ラッキー者だったので、遠慮なく(実際は『いいのかな…』と多少キョドりながら)前方に座らせていただく。

 

開場から開演まで15分しかなかったので、すぐ!3名様登場~。ひゅーひゅー。たった10名あまりの観客の拍手を、手振りでボリューム大きくしたり小さくしたりする良明さん、早くも楽しそう(笑)。ていうか、病明けだけれどお元気そうだ!よかった!!!!

 

向かって左から、博文さんアコースティックギター、良明さんエレキギター、くじらさんヴァイオリン、で音出しからゆるっとイントロへ。これはっ…「銅線の男」(『P.W Babies Paperback』)だー!意外すぎる選曲にいきなりクラクラする。それにしてもオープニングの数十秒でもう、3人のふくよかな音に全身が包まれる感じがすごくて、現地観覧の贅沢に深く深く感謝せずにいられない。次も滅多にやらない曲、と言って…んんんこれは~?「ウルフはウルフ」だ!博文曲(しかも私の大好きな!)2連スペシャルじゃないかー!

 

この日、例外なくどの曲も今までに聴いたことのないアレンジで。旋律のもやの向こうから手を振る人がかすかに見えてきてんーこれは誰だ~?と目を細めたりいぶかしがったりしていると、意外な曲が姿をあらわしてあなたでしたか!とびっくり、というようなイントロの連続。ムーンライダーズというバンドが基本改変好きだけど、この、良明さん・博文さん・くじらさんというありそうで意外にない組み合わせが生む新しさなのかなとも思った。何しろこの3人、自由だ!!!!でも、博文さんのギターやベースも良明さんのギターもくじらさんのヴァイオリンやマンドリンも3人の歌も、芯にピンッと揺るがない「ムーンライダーズの楽曲」があるからこそ、その上で大きく飛んだり跳ねたり自由に遊べるんだな~。と、自在な演奏をまじまじと見ながら感じたりもした。

 

テーマ「新譜と、日比谷野音3.13 LIVE を語ろう!」ということで、バンドの最近のブレーンとなっている石原真さんと松本篤彦さんが拍手の中登場して、トークの進行を。このおふたりがいらっしゃることの大いなる安・心・感!

 

まずは良明さんのご快癒報告など。病気で緊急入院、だけでなくギックリ腰にもなられていたとか!それも治ったそうでよかった…!アルバム発売の遅れのことをしきりに謝っていらしたけど、まさに「健康最優先」なので。ちゃんと治って元気に復活されたことが何よりでっす!そして、すでに最終段階に入っているアルバム制作の話題。最初はデモを50曲ぐらい集めて全員で聴く会をするところから始めた、という話の流れで、良明さんやら博文さんやらが「ぼくのあの曲はどうして外れたのかな~?」「俺のあの曲は~?」と、選曲に携わった石原さん松本さんに聞き始める展開に(笑)。おい弟たちッ!気持ちは分かるがそういうコーナーじゃない(笑)!

 

みんなで出し合ったアルバムタイトル案、いろいろあった中、良明さん発案の去年からのキーワード「老齢ロックの夜明け」も候補だったと(最終的にはそれにはならなかったそうだけど)。良明さん「もう職場が老齢化してるから。最先端のレコーディングですよ」って(笑)。作業を切り上げる時間も早くて昔みたいにてっぺん越えることないしと。石原さんが「例えば今回特徴的だったのは、録音スタジオは全部、(現在骨折からのリハビリ中の)岡田さんが車椅子で入れる、バリアフリーのところでやりました」と教えてくれた。そんな話聞いて、私めちゃめちゃ感動に襲われてしまった。ほんとに最先端だよなムーンライダーズ!と思って。音楽で最先端追求するだけじゃないんだよ、長くやってきてこうしてバンドごと老齢化に突入して、この身体でどう音楽作る?どう続ける?という実践までもを先駆として体験してる。いつでもいっちばん新しい、誰も行き着いていない場所を戦闘の地に選ぶんだよなこのバンドは…。はーーー泣けちゃう(勝手に)。

 

この日ライブに不参加の慶一さんと夏秋さんが自宅で配信を見てるということで、急遽、スマホ経由のテレビ電話も。だけど、通信の時差がすごくて会話があんまりうまくいかないのも何かこのバンドらしく微笑ましくてよかった(笑)。慶一さんと夏秋さんは、配信のチャットにもリアルタイムで書き込んでくれていたそう。楽しい~。

 

自由すぎるこの3人がしゃべってると話しちゃいけないことまでどんどんしゃべっちゃいそう…という石原さんと松本さん(とマネ様)のハラハラを観客全員が感じつつ(笑)、またライブコーナーへ。これまたびっくりアレンジの「くれない埠頭」。曲のあとに石原さんも言及されていた、良明さんがその場でつくるループがすんごくカッコよくて。あとこの曲を良明さんが歌うのもレアだった気がする。くじらさんが大きなハーモニカで汽笛のような音を出していたのが素敵だったのだけど、ベースハーモニカ(?)というらしく、くじらさんは「先日とある女性アーティスト(この時は名前を明かしていなかったけれど野宮真貴さんかしら?)のレコーディングで初めてこれ吹いたんです」と言っていた。“アルバムのレコーディングのたびにくじらは何か新しい楽器を弾かされる”と慶一さんが前に言ってた記憶があるけれど、70歳を過ぎてこんなにキャリアがあってもまだ「初めての楽器」に手を伸ばすって、ほんとカッコイイ。

 

そのあとのくじら曲「俺はそんなに馬鹿じゃない」もシビレた~!最近のライダーズのライブでは聴いた記憶がない…。味わいがある曲だなあ、こうしてナマで演奏されるとあらためて曲の魅力に気づかされる。いやー『Dire Morons TRIBUNE』名盤よやっぱ!さっきの「銅線の男」が入ってる『P.W Babies Paperback』も!2000年代のムーンライダーズたまらん!!!!ちなみに曲前MCでくじらさんは「この曲が入ってる“モロンズランド”」と言ってて、博文さん良明さんに「そんな名前のアルバムはない」とツッコまれてた(笑)(「Morons Land」は曲名ね!)

 

野音に向けてのお話もいろいろ。そもそもこの野音はアルバム発売記念ライブになるはずだったけれど発売が延びたので、セットリストはイチから考えるとのこと。(ここで延期のことを「ごめんね~」とまた謝る良明さんと、「野音に(良明さんをかたどった)ビンタ人形を置こう」と言う毒針弟…笑。)最近のライブの選曲も担う石原さんが「野外だし、春だし、というようなことも考えあわせて練っている」と明かしてくれた。ここでまた思っちゃった、アルバム発売延びたら延びたでセトリの考え方も全とっかえだし、それをフレキシブルに受けて立つだけの豊富な楽曲も経験もある。もーこの辺も、ムーンライダーズ最先端だよ、老齢ロックの夜明けだよ!カッコイイーーー

 

ライブ演奏、今度は良明曲コーナー。「静岡」大好き~!がしかし静岡で八十八夜で新茶だけど、今日のこの曲はまるでカフェ・アプレミディのコンピに入ってるようなアレンジになってた!わーわー。「トンピクレンッ子」も、イントロだけでは霧の向こうのどなたですか状態の、まるで昼下がりのまどろむ夢のようなまったりトンピ。こんなトンピ初めて聴いた、ワホホ!ラストは「本人がいないのにこれを歌うのもおもしろいね」と始まった「ヴィデオ・ボーイ」、不協和音だらけの超攻めたアレンジ!博文→良明とボーカルを回すのだけど、良明さんが慶一さんのしゃくりあげ唱法を過剰にマネしてて笑った笑った。かと思えば、サビでフッとシャッフル調のリズムになるのもめちゃめちゃカッコよくて。しかし、演る曲演る曲おしなべてなんちゅー実験体質なのか。70歳に手が届く人たちのやるライブじゃない!

 

というわけで本日のセトリ。

 

銅線の男
ウルフはウルフ
くれない埠頭
俺はそんなに馬鹿じゃない
静岡
トンピクレンッ子
ヴィデオ・ボーイ

 

いっやー凄かったなー、意外な選曲に驚かされたし、おなじみの曲も含め、ひとつとして今までと同じアレンジの演奏がなかった!たぶん、新譜レコーディングでついた加速度のまま、バンドもメンバーの気持ちもビュンビュン走ってるんだと思う。

 

ライブ後のTwitterに「ライダーズ凄いし驚くし今までの何百万倍もまた好きになってしまった」と書いたのだけど、何百万倍、は大げさじゃなくて実感。若い頃から実験的なこと新しいことさんざんやって、もう新しいものなんて出ないんじゃないかと思われたってその時代時代に新譜を出し続けて、今また「老齢ロックの夜明け」って言って「スタジオの選び方からして今までと違う(=車椅子で入れる所)」と!常に新しい場所で闘うムーンライダーズかっけぇ!

 

 

超ラッキーな10人の1人として貴重なライブに参加させていただきありがとうございました!的確にしてムーンライダーズ愛にあふれる進行をしてくださった石原真さん、松本篤彦さん、コロナ禍でのライブ開催&配信に尽力してくださったマネ様はじめスタッフのみなさんもありがとうございました!

 

ムーンライダーズ野音ライブも新譜も、楽しみだーーー!!!!!!!

 

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長くなりすぎるので本文に入れなかったことも、せっかくだから置いておこうっと。

 

本筋と全然関係ないんだけどメンバーの話を聞いて思ったこと。ひとつは、野音の思い出の中で20周年ライブ(A-1グランプリやった)について語ってたとき、良明さんが「あのコンサートのとき1曲も間違えなかったんだよね。それは自信ある」ときっぱり言ってたのがすごく印象的だった。当たり前なんだけど、ファンがそうであるようにメンバーにもその時々のライブやアルバムへの個人的な(「ムーンライダーズの」ではない「白井良明の」)思い入れや思い出があって、独自の縦糸となっているんだよなって。当たり前すぎることなんだけどあまりちゃんと考えたことなかったので、ちょっとハッとしてしまった。

 

もうひとつは、博文さんとくじらさんで「くじらくんが野音に来なかった」という思い出話をしていて、それがいつだっけ?となり、くじら「ライダーズだっけ?はちみつぱい…ではないか」博文「(ライダーズで)白井さん加入前だね」ってやりとりがあったんだけど、「はちみつぱいじゃなかったっけ?」と考えるくじらさんの様子が数年前の記憶を掘り起こすぐらいのライトな感じだったから、時間軸すごいな!と思って笑っちゃった。