月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

マーシーホテル @ 吉祥寺MANDA-LA2

やっぱり桁違いのバンドサウンドだった。西村哲也さんとマーシーホテルの音。軽くメモ。

 

2011/09/10 Sat.
MARCY'S HOTEL
@吉祥寺MANDA-LA2
開場 18:30 / 開演 19:30
前売 2500円 / 当日 2800円(ドリンク別)

MARCY'S HOTEL
are
Vo.&EG 西村哲也
Bass 大田譲(From CARNATION)
Drums 夏秋文尚(From ジャック達)
Keyboards 伊藤隆
Violin 美尾洋乃(From Mio Fou

GUEST:鈴木博文

 

いろいろな事情があって、もう長いこと、ライブに行けない人になっちゃっていて我ながらとってもふがいないんだけど、目の前で音が鳴り始めたらそんなことはとりあえずどこかへ吹き飛ばされていった、かな…。続けて見ていないと受け取れないものがたくさんあることもすごく感じてるけど、ね。

 

セッティングは、前列真ん中に西村さん、右に美尾さん。後方真ん中に夏秋さん、右に伊藤たかたか、左に大田さん。前列左の空いてるマイクスタンドがたぶん博文さん。

 

1曲め、聴き覚えがあるんだけどどうしてもそのときはタイトルが思い出せなかったポップな曲、「薔薇と戦闘機」。『WATERMELON & SUNDOWN』の曲かぁ、あとで聞いたらバンドでやるのは初めてだったそうで、うーん西村さん隠れた名曲多すぎ!そして2曲めでいきなりあのメロウなコード、えぇっもうそれやっちゃうの!?の「GHOST」。でもイントロの入りはいつもの西村さんのギターじゃなくたかたかのエレピで、これがまた(よい意味で)場末のせつなさにあふれててよかったー。さらに3曲めで「HEY HEY」って、早くもバンド燃えつきモード?って心配になっちゃうぐらいの飛ばしっぷり。twitterにも書いたけど、この曲のあのメチャカッコイイブレイクが撃ち放たれる瞬間に、マーシーホテルのメンバーの「哲ちゃん愛してる!」という途方もない量の愛情がほとばしるのが目に見えて、もー西村さんに妬けて妬けて(笑)。女性の美尾さんだけでなく、夏秋さんもたかたかも大田さんも、とことん西村さんに惚れ抜いちゃってるんだものー、もう嫉妬するー!!これだけの実力あるミュージシャンの愛と才能を一身に受けてる西村さんのバンドサウンド、そりゃとんでもなくなるはずだわ…。

 

前半の白眉はこれ。なんと「アルバム録音中のグランドファーザーズの新曲を、ひとつ披露しようと思います」って!一色さん作詞・西村さん作曲・大田さんボーカルの「恋の元素記号」。曲前のMCで「この詞は哲ちゃんからは出てこない詞だね」との大田さん発言、えーどんなの?…と、演奏されたら、もうこれがいい曲でいい曲で、はーマイッた…。詞の全貌がわかったわけじゃないんだけど、一色さんのちょっとした言葉遣いはやっぱり私をダメにする…。西村さんの、日曜の昼下がりのようなメロウな曲もせつなすぎて涙。大田さんのボーカルを西村さん、美尾さん(青山さん役)のコーラスが追いかけていくサビがまたすごくうつくしくて。はー、早くグランドファーザーズで聴きたいなあ。(24日演るかな?)

 

「失われた日曜日」の陶然とするようなうつくしさ。5つの楽器の音があわさって、見えてくるここにない風景。もやにおおわれた少しひんやりした空気、毛布のようなやわらかな光、ちいさく囁かれる秘密の会話。西村さんとマーシーホテルの音楽は、音楽じゃない何かにまでなって心を満たし、身体を包む。

 

休憩を挟んで、ゲストの博文さんコーナー!といっても、なんだろう、このメンバーの既視感というか安心感というかしっくり感というか(笑)。GREAT SKIFFLE AUTREY的な、ミオフー的な、Concave-Convex Band(『凹凸』レコ発)的な、要するにどこをどう切ってもメトロトロン、だ!この5人をバックに従える博文さん、とてものびのびと自由に見えて、すごくよかった。「凹凸」での博文さんのエレクトリックギター。私にとっては2大「すさんだギター」の弾き手のひとり(もうひとりは一色さん)だから。弱いんだ、この音色に…。「ライブでやったことない曲」と紹介して演ってくれた「三日月の翼」はどうしても何に入ってるのか思い出せなかったんだけど、そっか、2009年の配信限定曲。そして…♪フフフーフフフーフフフーフフフーフフー♪ああっ…「KUCHA-KUCHA」をこのメンバーで演られちゃったら、気が遠くなるしかなかった…。87年、博文さんの初ソロアルバム『Wan-Gan King』ばかり聴いてた日々がプレイバックする。80年代後半、私の心の通りは、博文さんとか西村さんとか大田さんとか青山さんとか夏秋さんとか直枝さんとか矢部さんとか棚谷さんとか坂東さんとか、そんな人たちしか歩いてなかったんだ…。(ま、今もそれに近いけど…。)このメンバーなら「馬鹿どもの夜」なんてやっちゃってほしいなとも思ったけど、さすがに10分超トラックは無理な望みかー。「櫂のないボート」で博文さんコーナーはおしまい。

 

マーシーホテルに戻って、美尾さんがいったんはけて、4人で演奏したロイ・ブキャナンのカバー「FIVE STRING BLUES」が、物凄かったなあ…。だいたい、日本に今あるバンドでロイ・ブキャナンなんかカバーしてる人、他にいるのかなあ。西村さんの(曲後のMCで「僕のギターがどれだけロイ・ブキャナンのパクリかってわかったと思います(笑)」と言うほどの)ギターも凄かったけど、途中のたかたかの生ピアノがまたヤバかったー。たかたかのピアノは、ウェットなところがないのにえらく色っぽいのが不思議。そして夏秋さんのドラムは、こういう自由な平野を好き勝手に駆け回るの大好きだよね、野生のシカのように、強靭にしなやかに、誰も追いつけない高みまで走っていく。4人の演奏はどんどん熱を帯びて、それぞれにすごいことになっちゃって、もー何なのこれ…!

 

そのあとも、珠玉のメロディが惜しみなく、すばらしい演奏で次々放たれていく。5人のとんでもない才覚が濃く詰まった音楽は受けとめきれないほどの総量で、もう、なんだかもったいないぐらい。マーシーホテルのライブではいつもそう思うけど、ひとつの楽器に集中して、同じ時間を5回くり返したい…。ひさしぶりな気がする「砂のコリン」に、苦しいぐらいの甘美のタメイキ。この曲の夏秋さんのリムショットは、必殺すぎてダメなんだってば…。たかたかのピアノもエロすぎ。そして淡々と内側で秘め続けていた熱が、いつしか限界を超えてあふれだすように、奔流となってうねる、ピアノ、ドラム、バイオリンの音のカタマリ。その激しい流れを縫って進むギターとベース。ぶつかりあって、うつくしい音符のしぶきをはじけさせて。はーーーー……。さらに「暴君物語」「ROCK'N OLD MAN」「エレクトリック・ラバー」とラストまで、息もつかせずたたみかけるように、ひたすら駆け上がっていく。

 

ラストの「エレクトリック・ラバー」の曲途中でメンバー紹介があったのだけれど、各自のところでいったん演奏が完全に止まっちゃうという、いつもながらのお茶目な演出(笑)。でもこのときの、メンバーごとにピシッと止まってはまたトタン!とバンドを始動させていく夏秋さんのドラムに、この日はなぜかグラッときちゃったんだよね…。ドラムって、バンド全体の音をやめさせちゃうことも始めさせることもできる唯一の楽器なんだなー、ってあらためて思ったりして。その強引さを奥底に秘めつつ、いつでも表向きはさらっとドラム叩いちゃう夏秋さんのギャップにね。

 

観客席のアンコールの拍手に、西村さんと博文さんが出てきてくれて、ふたりきりで何をやるのかな?と思ったら、このイントロのメロディ…「工場と微笑」!エレクトリックギターたった2本で演奏されたこの曲は、夕暮れ時の工場地帯の忘れかけられた歯車がひとつふたつ軋む音みたいで、せつなくて寂しくて、すごく強くて男っぽくて。意外な曲の意外な演奏だったけど、とてもよかった。

 

西村さんは「なかなかこのメンバーは集まるのが難しくて1年に1回ぐらいしかライブができないんですけど」と恐縮するように言っていたけど、こんなにも西村さんと西村さんの音楽を愛してるメンバーだもん、西村さんのためならどんな状況でも万難排して集まってくれると思うなー。だから、1年後といわずなるべく短いスパンで、ぜひ次をお願いします!

 

 

*セットリスト

01 薔薇と機関銃
02 GHOST
03 HEY HEY
04 カエル
05 恋の元素記号(大田さんVo)
06 悲しみのキトュン
07 失われた日曜日
08 夜の光

鈴木博文さんコーナー)
凹凸
三日月の翼
KUCHA-KUCHA
櫂のないボート

09 FIVE STRING BLUES(ロイ・ブキャナンのカバー)
10 WATER GUN
11 ひまわり
12 砂のコリン
13 暴君物語
14 ROCK'N OLD MAN
15 エレクトリック・ラバー

encore(鈴木博文さんと二人で)
16 工場と微笑

 

(書いたのを読んでみたら、いつものことだけど偏った感想文…(苦笑)。西村さんのギターにも、それはもう弾かれるフレーズひとつごとにぶわっと感じることがたくさんあったのだけど、とても書ききれなかったー…ゴメンなさい!)

 

画像