月夜のドライブ

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メトロトロン20周年記念ライブ“Music from AUTREY”@渋谷CLUB QUATTRO

METROTRON RECORDS 20th anniversary
“Music from AUTREY”
2007/10/26 Fri.
渋谷CLUB QUATTRO
Open: 18:00 / Start: 19:00

 

なんとか開場前にすべりこんだ久しぶりのクアトロ。それこそ80年代の終わりから90年代始めごろに、POP IND'Sのイベントなんかで、カーネーショングランドファーザーズをよく観たこのハコで、20年経ったAUTREYからの風を受ける。何が変わって、何が変わっていないんだろう。メトロトロンの今の音を聴きに行くことは、今の自分を確かめるような感じもあって。

 

会場に入ってすぐに、ステージにドラムセットが3台あることに驚く。すっげー、気合入ってる!いちばん右にセッティングされてるのが夏秋さんのSONORだ~。また今日もあのドラムのナマ音を聴けるんだ…、とひっそりうれしくなる。真ん中のシンバル低いセッティングのが矢部さんだね。客入れ時にずっと流れていたのはなぜかトニー谷(笑)。今日のライブ、誰が何をどんなふうに演ってどう入れ替わるのか想像もつかなかったのだけれど、開演時間を迎えてまずステージに入ってきたのは、予想外のこの人たちだった。

 

政風会

鈴木博文(vo,g)、直枝政広(vo,g)、青山陽一(g)、青木孝明(b)、夏秋文尚(ds)

何しろ最初に青山さんと夏秋さんが入ってきたのが不意打ちすぎて、ドキュン!と撃ち抜かれてたら、続けて、直枝さん、博文さん…ええっ、政風会!!ちょちょちょちょっと待って、青山・夏秋・直枝・博文・青木なんて、刺激強すぎる~…いきなりダメだってば…(泣)!!政風会で夏秋さんが叩くなんてことも青山さん青木さんが入るなんてことも想定外だったので、いきなりのこの並びに倒れそうになる。プログレッシヴで不穏な空気に満ちたインプロ的イントロから「残月」。アルバム『政風会』の世界そのままのアシッドで荒くれた世界、そして生の彼らの演奏はさらに緊迫感が増していて、うう、なんていう迫力なんだろう。また「Starsailer」の直枝さんのボーカルの危険な色っぽさったら。直枝、青山、博文、青木、のギターとベースが絡む壮絶な間奏に吹っ飛ばされそうになり、夏秋さんの張り詰めたドラムの音に圧倒され…。次は?と思っていたら、「また冬にね」って、2曲で政風会は終わり。こんどのツアーの、強力なトレイラーみたいだったな。

 

The SUZUKI

鈴木博文(vo,b)、鈴木慶一(vo,ag)、青山陽一(g)、青木孝明(g)、武川雅寛(mand,vln他)、川口義之(sax他)、夏秋文尚(ds)

この日はずっとそうだったのだけど、MC殆どなしのステージングとスタッフの機敏なセッティング替えで、さくさくと潔い進行。次の登場は、これもこんなに早く出てくるとは思わなかったThe SUZUKI。「史上最強、史上最大人数」のThe SUZUKI SPECIALで。全員がなんとなく黒ジャケットに黒帽子の風来坊コンセプトな衣装で揃えてたんだけど、右端に位置取る青山さんと夏秋さんのそれが、どうにも七五三みたいなとってつけたかわいさでひそかにウケる(笑)。この2人は一生こうなんだろうなあ…(笑)。1曲めは武川さんの美しいマンドリンの旋律に、目をつぶってても夏秋さんだ!とわかるあの独特のドラムの響きが入ってきて「A Blue Colored Woman」。この曲の博文さんのボーカル大好き。慶一さんとハモるフレーズを聴きながら、鈴木兄弟のバンドなのにThe SUZUKIってムーンライダーズとまったくちがうのがおもしろいなあ、としみじみ思う。湾岸に出自を持ちながらも、圧倒的に自由な精神のせいで、ラディカルなほど根無し草になってる音楽。無骨なギター、ベース、ドラムの魅力、そして武川さんや川口さんの国籍不詳な音がこんなに似合う音楽もないだろうなと思う。あいだで「せっかくなので青木くんにも1曲歌ってもらいます」と、青木孝明さんの「GRASSHARP & JERICHO」を。わ~、このプレイリストにも入れた、マイ・フェイヴァリット!もーどこまで私向きのライブなんだろう…と勝手に感激しながら聴く。青木さんの歌とギターは、のびやかで大らかで本当に素敵。そして「Romeo~」「高架線上の魔人達」と、慶一曲と博文曲をちょうど半々演奏して、この上なく贅沢で絶妙な無頼派バンド、The SUZUKI SPECIALは終了。The SUZUKI、そろそろ新作聴きたいな。そしてこのメンツでライブやってくれたら最高。

 

グランドファーザーズ

青山陽一(vo,g)、西村哲也(vo,g)、大田譲(b)、夏秋文尚(ds)

ハイ、前記事で書いたとおり、派手に壊れましたもう…。元通りになんないくらい…。青山陽一西村哲也、別々に出てくるものだとばかり思ってたのに、まさか最初っからグランドファーザーズで現れるなんて(泣)。ましてドラムに夏秋さん(泣)。目の前にこの4人が並んでる図ーーー。ああ、もう、シアワセの限界超えすぎて死ぬ…。最初はソロアーティスト・西村哲也のナンバーで、「GOOD BYE」。3バンド続けての登場だった夏秋さんのドラムが、それまでに比べると飛躍的にリラックスしてるのがわかる。たぶん夏秋さんにとって西村さんのソロ曲で叩くのは、ごはん食べたり歯をみがいたりするのと同じぐらい自然でカラダになじんだ行為なんだろうな。格好もすっかり普段どおりのTシャツ姿に戻ってたしね(笑)。西村さんの歌とギター、熱かったなー。もういきなり出るわ出るわクレイジーソロ!そしてそれに呼応するようにとんがっていく青山さんのソロ!もう何万回も言ってるけど、ほんと私にとってこの2人のギターの絡む音は特別特殊なのだ…。次にしっとりと「キッチン・ミュージック」。西村さんのスライド、素晴らしかった。さらに青山さんが「次は私が…」というので、こんどは青山さんのソロ曲なのかと思ったら、なんとグラファンナンバー「異常な夜、貴重な月」!!!!わーーーーん(興奮)。もうテンション上がりまくる。これはアルバム『BBB』('91)の中でも夏秋さんがドラム叩いてるえらいカッコイイ曲で、私の中では今でもふつうにヘヴィーローテーションなので(というかグラファンの曲全部がそう)懐かしいとかいう感情、一切なし。カカカカッコイイーーー!あーこの変なメロディに変な歌詞に青山さんの高音ボーカル、西村さんのブチ切れたギターと足腰の異常に強いリズム隊。こんなサウンド、やっぱりグラファン以外に鳴らせないよなー。とか思ってたらいきなり入ってきたイントロ!!!!うっわーーーー「僕は火の車」だーーーー(泣泣泣)!!!!ああ、まさかこの曲をふたたびナマで聴くことがあるなんて…!この間奏!そう、このギターの音、ベースの音、私、なんどもなんどもラ・ママで聴いてたんだ。あのときとまちがいなく同じ音色が、ここで、目の前で鳴ってる…ああ、信じられない(泣)。崩壊。決壊。全壊。戻らないよー…どうしよう…。ああ、本当にカッコよかったグランドファーザーズ

 

それにしても、青山さん自身がその後の日記で書いていたけれど、グランドファーザーズ、じつにじつに不思議なバンドだなと思う。もう15年以上も前に解散したくせに、青山、西村、大田、というこの3人が集まると、いつでもその瞬間からバンドとしてトップギアで走れるんだよね。ほんとにおそろしい現役感。こんなバンドってちょっと珍しいんじゃないかな。この日、グランドファーザーズがクアトロのオーディエンスに大歓声で迎えられていたのも印象的だった。15年も前に解散した(しかも売れてない…)バンドのことなんて、ふつうなら名前だってロクに覚えられてないだろうと思うのに、ね。そのことにもすごく感動しちゃった。やっぱりいいバンドだよね、グランドファーザーズ。こんなバンドどこにもいない。大好きだ。

 

加藤千晶

加藤千晶(vo,pf)、鳥羽修(g)、高橋結子(ds)、河瀬英樹(b)、川口義之(sax他)

じつは私、加藤さんって、チッチとクック(久住昌之さんとのブルースユニット)でちらっと見たことしかなくて、アルバムもまったく聴いたことなくて、ホントに初めてだったんだけど、やーブッ飛んだ!参りました。ほんわかムードの裏になんちゅーおっそろしい技量とミュージシャン魂を湛えてる人なんだ!すっげーなーーー。可愛らしい日本の女の子の皮をかぶったニューオーリンズ人ではないかと思った。ひたすら圧倒される。カッコイイ…というか、おそろしい!左端のドラムは結ちゃん(高橋結子さん)だったことがここで判明。鳥羽さんのギターはもちろん変態で最高。

 

Mio Fou

美尾洋乃(vo,vln,pf)、鈴木博文(vo,ag)

7月のミオフーレコ発のときが美尾さん初体験だったというのに、その後ジャック達レコ発、そして今日と、美尾さんをよく見る。近づきがたいほどの美人なのに、じつは性格はすごくラフな感じであるらしいことまでなんとなくわかってきて、ますます惚れる一方。ミオフーレコ発のときは深窓の令嬢っぽく、ジャックレコ発のときは銀座のOLのようであった美尾さん、今日はガラッと雰囲気が変わって、遊牧の民のような衣装。そして、ミオフーの「フー」であるところの博文さんも不思議な衣装着てた、博文さんがこんなの着てるとこ初めて見た~。ご本人、なんとなくビミョウに気恥ずかしそうに見えなくもなかったけど(笑)、ステキでした。で、最初はインスト「ゴッホの糸杉」そして「Pierrot le Fou」。さらに新譜から「ghost-blue-sky」「UNICORN」「銀の蜂」。それぞれまったくちがった方向に浮世離れした美尾さんの音と博文さんの音が、弧を描いて空間を泳ぎ、無数の点の中のただひとつを選んで結び合い「Mio Fou」という音楽に結晶するさまは、なんともドラマチックだ。

 

カーネーション

直枝政広(vo,g)、大田譲(b)、矢部浩志(ds)、西池崇(g)

錚々たる出演者のトリを堂々つとめるのは、待ってましたカーネーション!私はここのところさっぱり彼らを観れていなくて、じつに昨年12月「ROCK LOVE」以来の生カーネーション。ここにきてやっと主を迎えた真ん中のドラムセットから、いっきなり爆風のようなスゴイ音が出る!矢部さんすげーーー。西池さんの絶妙なサポートを得て自由に突っ走る3人の演奏は、どこまでも骨太でド迫力で文句のつけいる隙なんてない!まさに最強のロックバンド。そんなカーネーションを、そして直枝さんを観ながら、カーネーション、わけのわからない場所までさらにどんどん突っ走ってほしいな!って強く思った。私たちみたいなやわなリスナーなんかがとても追いつけないような遠くまで、もっともっと、加速度つけてクレイジーに!って。なぜだかわからないけど、すごくそう思った。カーネーションって、いつでもそういうバンドだった。もう、リスナーなんかぜんぜん追いつけないんだよ、いやんなっちゃうぐらいに。直枝さんが何を目指してるのかなんて、クレイジーすぎてまったく理解できないんだ。でも、それこそがカーネーションで、私はカーネーションのそんなとこがとびっきり好き。

 

何曲か演ったところで、カーネーションが、博文さんを迎え入れる。この両者のあいだに流れる空気、それだけで泣ける。濃い時間を共有したもの同士だけが持つ空気。ついこのあいだの博文さんのライブ盤の、カーネーションがバッキングをつとめた87年のトラックを思い出す。あれから20年経って相変わらず彼らはあのころと同じように、敬意と、焦燥にも似たはやる心と、ちょっぴりの照れを併せ持ったまなざしでお互いを見つめてるんだな。始まったイントロのフレーズ、うわ…「Fence」だ…!このシチュエーションで、こんな名曲…、ヤバすぎる…。

 

■アンコール

全員

ほんとに全員出てきたもん…。すげー…。もうとにかく、笑っちゃうぐらいのギタリストフェスティバル!ギタリスト、いすぎ(笑)!しかも私の好きな人ばっかり。えーと、このあいだのタマコウォルズ×西村哲也ライブのときに、青山、西村、鳥羽、西池、の並びを体験して、これが好きなギタリスト濃度としては最高値だろうと思ったんだけど、さらにここに直枝、博文、慶一、青木、と加わりあっさり更新(笑)。しかも後方3つのドラムセットがすべて鳴るというおそろしい状況。個人的にはやっぱり特に、夏秋さんと矢部さんは2大思い入れドラマーなので、その2人が同時に叩いてるというシーンが貴重すぎてシアワセすぎて気が遠くなる…。(ちなみに夏秋さんと矢部さんがツインで叩いたことって、今まであるのかな? 青山さんの怪隣でカーネーションがゲストだったときのセッションでは、夏秋さんドラムで矢部さんはラップスティールだったような覚えがあるけど。) で、そんなありえない布陣で、博文さんの「馬鹿どもの夜」。元々セッション的な味わいのある長尺のだけど、やー遠慮なく弾く弾く、ギタリストたち(笑)!そしてこんなギタリスト人口の中でも回す回す、ギターソロ(笑)!全員に回りきったのかやや不明だけど(笑)、それぞれにどこまでもその人らしいフレーズ、悶えたーーー。ミュージシャンのあいだを縫いながら音楽そっちのけで携帯ムービーを撮りまくる慶一さんのゴキゲンな様子も微笑ましく。そして何より、途中で自分のグレッチを鳥羽さんに譲って(引き継いだ瞬間、鳥羽さんがそれをメタメタに弾きまくってたのもおかしかったけど)、ハンドマイクになった博文さんが後ろを振り返り、このレーベルに集ったミュージシャンたちを眺めるなんともシアワセそうな視線。これに、この日いちばんじーんとしたな…。20年、「ギョーカイ」のメインストリームとは離れたところで、ただ良い音楽を生み出そうとだけしてきたメトロトロンレーベル。20年間、ミリオンヒットなんてひとつも生み出していないけれど、大きな自社ビルも建っていないけれど、これだけの素晴らしく有能なミュージシャンを輩出して、人の心の深くに永遠に刻まれるカタログをいくつも残してきた。その足跡のたしかさと実りのゆたかさは、今、博文さんがどんなに味わいつくしてもいいものだと思う。

 

アンコールの拍手を受けてステージに現れたのは、その、社主である博文さんひとり。20年の時間を、ただ淡々と次への覚悟につなげるように、ギター一本とハープだけで歌う「影法師」。

 

平凡に死ぬよりも 狂って生きることを
選んだそのときから 爪の中に青い空

 

ありがとう、メトロトロン。おめでとう、20周年。このレーベルと音楽がなかったら、今ここにいるような私はいなかった。どれだけたくさんの目に見えるもの、目に見えないものを受け取っただろう。そしてこれからも、たくさんのかけがえのないものを届けてもらおうかなって思ってる。だから、これからもずっと、よろしくね。

画像

 

*あいまいセットリスト
(※加藤千晶さんのところはわからないのだ~、ゴメンナサイ)

政風会
残月
Starsailer

The SUZUKI
A Blue Colored Woman
燃えつきた家
GRASSHARP & JERICHO(青木孝明vo)
Romeo, Juliet & Frankenstein I
高架線上の魔人達

グランドファーザーズ
GOOD BYE(西村哲也vo)
キッチン・ミュージック(西村哲也vo)
異常な夜、貴重な月
僕は火の車

加藤千晶

Mio Fou
ゴッホの糸杉
Pierrot le Fou
ghost-blue-sky
UNICORN
銀の蜂

カーネーション
Young Wise Men
Superman
獣たち
たのんだぜベイビー
Fence(鈴木博文vo)

■アンコール1(全員)
馬鹿どもの夜

■アンコール2(鈴木博文
影法師