月夜のドライブ

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ジャック達、cero @ 吉祥寺MANDA-LA2

画像宙GGPキハラさんのギターは、「巧い」とか「素晴らしい」とか言うよりも「衝撃」っていうひとことがぴったりで、その衝撃っていうのは、頭にガツンと金だらいでも落ちてくるような物理的なものに、受け手には思える。だって、場合によっては、ほんとうに席から立てなくなっちゃうから。たとえば私がはじめてジャック達のライブを見たときがそうだった。それからニューベリーでの初ワンマンライブではじめて「キャンセル」を聴いたときも。…なんてことを思い返さずにはいられないほど、この日、キハラさんのギターはプリミティヴに「衝撃」だった。衝撃的じゃなくて、衝撃ね。比喩ではなく、そのもの。

 

「2010 NEW YEAR ROCK JAMBOREE vol.1」
2010年1月16日(土)
@吉祥寺MANDA-LA2

出演
「ジャック達」
一色進/宙GGPキハラ/夏秋文尚+大田譲(CARNATION)
cero
高城 晶平/荒内 佑/柳 智之/橋本 翼

開場/開演:18時30分/19時
前売り/当日:2,000円/2,500円(1オーダー別)

 

cero

鈴木慶一さんがプロデュースした若いバンド、というのでずいぶん前に名前を知って、ことあるごとに「いい」という声を聞くからずっと気になっていたバンド・ceroを、やっと観る機会に恵まれたのだけど、これが、想像してるのとぜんぜんちがい、想像してた以上によかった!g&vo、g、b、dr、という編成だからオーソドックスなバンドサウンドかと思いきや、飛び道具みたいなサポートメンバー加え、メンバー自身もいろいろな楽器操り、オルタナティヴなビーチボーイズといおうか、1DKパンクといおうか…。ともかく「今世の中にない音」を目指してるにちがいないその志の高さにしびれた。若くて新しいバンドやアーティストの「なりたい自分」があまりにも内向きに、手近なもので用立てられてるとすごく寂しく思うので、その点cero、やたら無謀な感じがよかったです。皮肉じゃなくて、表現を志すって、そういうことだと思うから。あとふつうに、ギターとドラムの人がカッコよかった。(ってそこか!)

 

■ジャック達

さてジャック達。マン2のステージに並ぶ4人は今日もあいかわらずボソッとしていて、とりたてていつもとちがう気合を感じるわけでもなかったのに、出てきた音はスゴかった。いきなり「月光」で(前回これを聴いたときは、イントロのベースのフレーズにピートさんのことを思い出さずにいられずドキッとしたけど今回はそんなことがなかった、バンドもリスナーも時間を消化してるんだな…)、その意外な選曲より先に、キハラさんのギターに釘づけにさせられる。この日のキハラさんのギターの音を表現できる言葉なんて、世の中にないな。 ほんとうにいい音してた。ロックとはこういうこと!とリスナーに突きつけるような音。

 

続けて「スーパーソニック・トースター」「乙女座ダンディライオン」って、なにそれ!もう、私が考える「ジャック・オブ・ジャック達」2連発。この2曲をこう演れる、世界でただひとつのバンドがジャック達で、それゆえ私はジャック達にこんなにも恋してると言っても過言じゃない。あーもう、ほんと、ジャック達すぎる!さらに「謎の帽子屋」、そうたたみかけられると…。去年からの潜行するテーマソングなので。私的なことだけど。

 

「潮流」は9月のニューベリー聴いて以来。あのときもそう感じたけど、ライブで聴くこの曲はすさまじくプログレッシヴ。配信バージョンを聴いたあとの今回、やっぱりそう思った。孤高ですさんでて、すごくいい。一色さんと交差する夏秋さんのボーカルがしなやかで力強くてどきっとする。

 

次に新曲、これまた変化球を2拍ずらして後ろ向きから投げるような、ストレンジでポップな曲だった!しかしタイトル「ニセモノ」って…(笑)。さらに、『ORANGE』を配信し、満を持して(…か、一回ぐらいやんなきゃしょーがねーなと仕方なく、か)、ライブで初披露の「ア・イ・ノ・チ・カ・ラ」!これ、ものすごくよかったよ!大田さんブラボー、は無論のことで、演奏するメンバーみんな楽しそうだったなあ。夏秋→キハラのVoリレーもナマだととてもキュートで萌えました…。

 

それまでもずっとズブズブバリバリした音を思うがままあふれさせていたキハラさんのギターで、「禁断のチョコレート・エンジェル」だもん、すごくないわけない。この曲に限らずこの日ずっとだけど、音を聴くというより「放電を感じてる」ようだったな。キハラさんの抱えるチェリーサンバーストの板から、暴力的なほどの電気の泉があとからあとからあふれ出して止まらない。ギターってあんな音すんだな、すげえなと、何度も見つめてしまうようだった。そこにあるのはどう考えても、誰もが持っているのと同じあの楽器なんだけど、出るのは、ほかではどうやっても聴けない音だった。祥子さんの言葉を借りるなら、まさに「極悪な」音。極悪さがあふれ出して止まらず、暴走しまくってる。キハラ宙というギタリストがそれを鳴らしているし、一色進のメロディが、夏秋文尚のドラムが、大田譲のベースが、それを鳴らさせている。どれが欠けても、あの音にはならないんだろうと思った。

 

ここから、たとえば「キャンセル」とか「水溜り画廊」にいくのかと思ったら、予想は見事に外れて、「Strange Move」「恋はこりごり」って、うわーあまりにも意外な続けワザ!特に「恋はこりごり」は大田さん入りでは聴いた記憶ないよね…!? 耳に入る音、過去何度も聴いてきた曲と、まるで別物みたい。これでもかってぐらい気持ちよさそうに疾走するジャック達。ああ、そうか、バンドの地力が圧倒的に上がってる今、手足や身体を好きなだけ伸ばして、思うまま飛んだり走ったりして、身体能力(=バンドの能力)をすみずみまで味わい尽くすのって、まずはメンバー自身がとんでもなく楽しいだろうね!あとで明かされたのだけど、この日のセットリストは夏秋さんセレクトだったらしい。なるほど~。今後、ライブをメンバー持ち回りでプロデュースするとかしないとか。「じゃ、次は大田くんね」って、ニヤニヤ一色さん、確信犯だもん、悪いんだー(笑)。

 

アンコールは「東京一悲しい男」、そして「ロッカバラッド・クロック」。「ロッカバラッド・クロック」ヤバいでしょ…、私が言うところの“裏道に誘い込んでボコボコ”系だよ、こんなのR指定だよ…。キハラさんのギターと夏秋さんのドラムと大田さんのベースと一色さんのメロディ、すべてが溶けあって、重く、甘く、激しく、渦を巻いて、とんでもない熱量のままぶちまけられる。客席の私たちは全身にチョコレートかかった動物みたいに、倒れてうっとり沈んで、果てる。

 

 

もう何度も言うけど、この日はキハラさんのギターに尽きた。笑っちゃうぐらいの「キハラ宙スペシャル」。私がはじめて見たときからこのバンドはずっとそう、「ヒロムしょうがねえな」って苦笑まじりにまわりに言わせながら、リードギタリスト・キハラ宙が思う存分暴れてるときが、ジャック達はいちばん輝いてる。いい大人がしょーがねーなってあきれるほどの、重く激しく甘く爆音のジャック達。ホント大人げない。最高。

 

 

*セットリスト(ジャック達BBSより)

01 月光
02 スーパーソニック・トースター
03 乙女座ダンディライオン
04 謎の帽子屋
05 潮流
06 ニセモノ
07 ア・イ・ノ・チ・カ・ラ
08 禁断のチョコレート・エンジェル
09 ストレンジ・ムーヴ
10 恋はこりごり

E1 東京一悲しい男
E2 ロッカバラッド・クロック