月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

“下世話だけれど かつてないhard lucky blues”

画像アルバム『HILAND』のときにバンブル金野さんがたしかジャック達のことを「試聴機不向き」とバッサリ称していて、なんて的確なホメ言葉だろうと感心したものだったけれど、ココ最近の(『JACKFRUIT SINGLES』をリリースし始めてからの)ジャック達は、もう「わかりにくい」とかいうレベルを超えて、なんというか…「ありえない」というのに近い。しかもそのありえなさが、回を追うごとに増し増してる。配信シングル第4弾『MELON』、これ、まじありえないって!!

 

だって…一色進イキナリ「アトゥーーーーッ!」とか叫んじゃってるし!平気で「子猫ちゃん」とか歌ってるし!!あげくのはてには間奏に“語り”入っちゃってるし!!!歌も詞もメロディもギターの音もドラムの音もベースの音もアレンジもミックスも、いちいち「大丈夫かよこの人たち…」って心配になるほどすげぇ。

 

それでもA面(だから面はないのだが)の「禁断のチョコレートエンジェル」は、“ありえなさ・王道篇”かな(なんだよそれ)。まだ、こう、2009年のロックであり得てるというか、そこに存在することを信じられるというか、「カッコイイよね?」と衆人に問うて賛同を得る可能性があるというか(まあ一色進が「アトゥーーーーッ!」と叫んじゃってはいるのだが)、とにかく現世型のロック、と言っていいと思う。まあ、ふだんジャック達とかタイツとかムーンライダーズとかしか聴いてない私が言うことだから、あてにならないけど。

 

圧巻はB面の「Unhappy Birthday To You Song」。これはもう、“ありえなさ・覇道篇”でしょ!この曲のことを一色さんは、「マンスリーライブで書いた6曲の中で一番の傑作だと思ってる」とも、「このころ書いた曲はすべてアタマがおかしくなってる」とも語ってたと思うけれど、その意味がよくわかったよ…。ヤッバイもん、この曲。「カッコイイ」という意味でも「アタマおかしい」という意味でも。

 

私の手持ちの貧弱な語彙で何とか表現するなら、この曲、「バブルガム・プログレッシヴ・ポップ・ロック」と言いたい感じ。バブルガムなのにプログレッシヴ。そして“裏道に誘い込んでボコボコ”系だね。かわいらしい曲だと思ってついていくととんでもない目にあう。(私曰く「ロッカ・バラッド・クロック」とかがこのジャンルです。)

 

この「Unhappy Birthday To You Song」、何がすごいって、ナノレベルまで徹底して等分にポップでありロックであること!しかもポップとロックが歩み寄って混じりあってるんじゃなくて、それぞれが反対方向にすさまじく振り切った場所で、天秤の針が「等分」を指してる。どんなに考えても、ふつうそんな音楽ないんだって。孤高のロックと究極のポップスが1曲の中でぎりぎり手綱を引き合ってるなんてことはさ…。

 

このありえない音楽を存在させ得てるのは、なんといっても、夏秋文尚、宙GGPキハラ、大田譲(from カーネーション)、というミュージシャンの技量に尽きる。私の想像だけれど、たぶん、一色進が書いたこの楽譜を通り一遍のミュージシャンがそのまま演奏しても、からまった毛糸玉かよくてできそこないのオムレツぐらいにしかならないんじゃないかな。この3人、涼しい顔して相当な大立ち回りを演じてるはず。このバンドメンバー(と、ここは大田さんも入れといちゃいますが)の演奏の凄さを思い知るなら、まずは、バブルガムがプログレッシヴに急転する2′45″あたりからの展開でしょ!「Tomorrow Never Knows」みたいなクソカッコイイエフェクトの一瞬からサイケなコーラスがぶわっとあふれ出し、ハチロクのリズムの左奥で鳴るオルガンに耳を引き寄せられたと思った瞬間、右をかすめるドラマティックなギターの音、そして暴風雨のようなドラムを力ずくで乗り越えてくるベースのフレーズ…。ままままじっすか…。

 

それともう一発、間奏の3′56″あたりからの10秒間にギュッと閉じ込められた音を聴くと、私はこのバンドの技量と個性にしみじみノックアウトされてしまう。このストレートすぎるぐらい派手にキマるギターのフレーズ、そのすぐあとのスネアの柔らかくすいつくようなもっちりした音、ギュンと気持ちよくうねるベース。ああ、好きすぎる!!!!この10秒余りを聴いただけで、ジャック達がどんなにいいバンドか、わかる人にはストンとわかると思う。

 

はー。いつまでも書き終わらないのでいい加減切り上げますが…。ホントやばいよジャック達。2カ月にいちどの頻度でこんなぶっ飛んだ曲出し続けるって、ありえるんだろうか?たぶん、リスナーよりも、ロックミュージックというものをよく知っているメンバーたちがいちばん、この事態のありえなさに震えてると思うけど…。

 

“下世話だけれど かつてないhard lucky blues” (「Unhappy Birthday To You Song」)

いいフレーズだなあ。歌詞はココに。