月夜のドライブ

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映画『PASSION MANIACS マニアの受難』を見てきたよ!

画像昨年12月から公開中の、ムーンライダーズを追ったドキュメンタリー映画。新宿でのレイトショーには行けないままだったのだけど、年が明けてから渋谷のミニシアターで昼の時間にもかかることになり、やっと足を運べた。普通の勤め人には出かけにくい平日の午後2時なんて上映時間が、主婦にはありがたいです…。(以下、盛大にネタバレてます!)

 

100分の物語。ものすごくおもしろく、ものすごくエキサイティングで、ものすごく考えさせられ、ものすごく疲労した。なんというか、放たれる矢があまりに多くてね、受けとめきれない。使えるシナプス全開放で臨んだけど、それでも。どの10秒を切り出しても、私にとって意味のありすぎる情報があまりにも多層に重なり合っているんだもん。そこにある音、映像、言葉。そして、空気、歴史、意味、思い。感想なら、ホント原稿用紙100枚でも200枚でも書けちゃいそう。バンド30年の軌跡への感慨から、野音坂田学さんあらためてめっちゃカッコイイーーー(惚)!ってレベルまで、いくらでもね(笑)。

 

その中でも、ひときわ心に激しくぶちこまれたのは、(たぶん意図的にも強く描かれている)ムーンライダーズの、今に至る「闘い」の数々。70年代の「日本語のロック」との格闘、80年代のコンピューター・テクノロジーとの取っ組み合い、そして90年代の「ヒット」をめぐる鞘当て。そのひとつとして、終わったもの、決着がついたものなんてない。映画の中で「答えは出ていない」というキーワードがくり返し語られていたけど、まさに、どれもが現在進行形の闘いであり続けてる、それこそがムーンライダーズなんだな…。慶一さんがよく言う「上がり、になったらおしまいだよね」っていう、それこそが。

 

いやしかし、どこまでめんどくせーオトコたちなんだろう、と(笑)。つくづく思うねー、この6人。ほんと手に負えないよ。めんどくさい、っていうのは、つまり民主主義が生きてるってこと。これはまたあらためて別に書こうと思うけど、ムーンライダーズって究極の民主主義バンドだよね。で、ほんとに民主主義を貫こうと思ったら、その現場って相当ラディカルで壮絶なものにならざるを得ないはずで、ちっとも平和な感じなんてないと思うんだ。それにへこたれず倦みもせず30年やってる稀有なバンドがムーンライダーズで、そういう意味でものすごいタフ。民主主義をあきらめないって、とんでもないタフネスだよ。映画見ててもそれをひしひしと感じたなあ。なんという強靭な…というよりはやっぱり、なんて難しくてうるさくてめんどくせー(笑)6人なんだろう、と。それが、慶一さんの言っていた「オーガニック(有機的)」ってことにもつながるんだよね、たぶん。

 

「日本語とロック」ということもね。もう、いろいろいろいろ考えた。ムーンライダーズというバンドが、前身のはちみつぱいの時代からやってきたこと。そして今も続いてること。「日本語のロック」が根付いたはずの今、つまらない音と安っぽい言葉ばかりが大量に垂れ流されてるって現実。映画中のインタビューで細野晴臣さんが、日本語とロックってことについて「まだ解決していない」とふと言っていた台詞は、まるで分水嶺みたい。そこに意識的かそうじゃないかは、今のミュージシャンを目に見えない部分でじつは大きく隔てている。そして、あの野音のステージに、サエキさんが、直枝さんが、青山さんが、曽我部くんが、立っていたことの意味。ムーンライダーズが命賭けてきた「日本語とロック」って命題を、引き継いで闘ってる人たちが、少ないかもしれないけれどたしかにいるってこと。その闘いの困難さと希望。もう、勝手に、泣けてしょうがない。

 

その、4月の野音ライブの映像が映画の中心を貫いているのだけれど、曲ひとつひとつがはらむ「物語」の壮大さにもクラクラしたな。「ボクハナク」にも、「赤色エレジー」にも、「くれない埠頭」にも、「スカンピン」にも、「塀の上で」にも、「大寒町」にも、いちいち思いや時間やデキゴトや人間が絡んでくる。あのときはちょっと意外に思った幸宏さんの「9月の海はクラゲの海」も、なるほどそういうことだったのか、と気付かされたりして。この、音楽がはらむ物語性もまた、ムーンライダーズなんだろうな。それも、バンドの歴史の長さに苔むす物語というよりは、楽曲が生まれた瞬間に発生するヴィヴィッドな物語。一瞬にして運命を抱えこんでしまうほど楽曲のクオリティが高いってことなんだ。ああ、ムーンライダーズすぎる…。

 

4月中旬の新宿ロフトと4月末の日比谷野音、挿入される2つのライブ映像を映画のストーリーの中で見て、あらためて、あの場に立ち合えたことに震えるような気持ちをおぼえたよ。大げさでなく、歴史的な現場の目撃者だったんだなって。あのライブをナマの体験としてカラダに刻めたのは、とんでもない幸福だったんだなって。

 

この映画、30回見てもそのたび新たな発見や感動があるだろうな。DVDになったらもちろん買うけど、こうして映画館で見たことも意味がある、と今回思えた。なんというか、映画館で上映するってそれだけで「公」のできごとだから。何かしらリアルタイムで世の中に投げかけるものがある。そして実際この映画は、ただの1バンドのドキュメントって以上に、世の中や音楽界に関与していく内容だ、って思った。ムーンライダーズファン以外の人はなかなか見ようと思わないだろうけど、音楽好きならかなり楽しめる映画なんじゃないかなー。

 

あ、ミーハーレベルの見どころは、枚挙にいとまなし(笑)!野音のときあまり見えなかったサポートドラムの坂田さんのカッコよさにはそりゃもークラクラするし、やはり当日心拍数上がりまくった青山さんの姿(映画では一瞬だけど)にも激しくドキドキする。ギター弾きシーンで慶一さん良明さんと視線かわすときの青山さんのイタズラっぽい表情がステキなんだよねー…(惚)。「ボクハナク」直枝さんの男っぽさと色気にも、今さらながらうっとり。当たり前だけど、ステージで演奏するライダーズ6人はめっちゃカッコイイ。そんな中でも特筆すべきは、かしぶちさんのカッコよさでしょうか。なんかね、いいシーンことごとくかっさらってるんだよね~(笑)。私は基本的には特別なかしぶちさんファンではないんだけど…、あの胸元開きぎみの白シャツ姿には、婦女子なら陥落しちゃうよね?(←ね?じゃない!) やー困ったなー。危険すぎるよね、まったく…(と、よくわからない感慨…)。

 

まったく書ききれてないので、それはまた書くつもり。もう1回ぐらい、スクリーンで見たくなっちゃうな。そういえば2/2にはトークショーもあるんだよねー。たぶん行けないけど…。