月夜のドライブ

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ムーンライダーズ『moonriders LIVE 2022』 @ 日比谷野外音楽堂

昨年12月恵比寿ガーデンホールのライブにて、新譜発売とともにアナウンスされた日比谷野外音楽堂でのライブ。年明けに良明さんが体調を崩して入院されてアルバム発売は少し後ろ倒しになったけれど、野音ライブは予定通り決行。ファンのあいだでは「春の野音を侮るな」とばかりにさまざまな防寒対策アイデアがやりとりされていたけれど、当日は降水確率0%最高気温18℃予報と、これ以上ないライブびよりに。メンバーやファンの普段の行いがよかったのだろうか!? 

 

moonriders LIVE 2022
日比谷野外大音楽堂
2022/03/13 Sun.
16:30 open 17:30 start
スペシャルムーンシート(お土産付き)13,200円
指定席 8,800円

 

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開場前の先行物販が15~16時、開場が16時半。開場後の物販もびっくりするぐらい長~い列。ムーンライダーズ、人気あるなー!物販列に並びながら、野音のすり鉢状の会場を後方から眺める。なんともいえない趣があってやっぱりいい。私がここに来るのは、それこそ2006年、ムーンライダーズの30周年ライブ以来。

 

今回は恵比寿のときと同じ、ムーンライダーズ6人+澤部渡さん+佐藤優介さん、という布陣に加え、ホーン隊3人、東涼太さん(Sax)、湯浅佳代子さん(Tb)、織田祐亮さん(Tp)の参加も事前に発表されていた。ステージのセッティングは前列下手から岡田さん、くじらさん、慶一さん、良明さん、博文さん。後列は、下手から優介さん、澤部さん、ド真ん中一段高くに夏秋さんのドラムセットがそびえ、そしてホーン隊。真ん中の丸い段のまわりには「moonriders」の幕がぐるりと巡らせてあったので、まるでお誕生日ケーキの上にドラムセットが乗っかってるみたいだった!

 

だんだん会場が夕闇にのまれてきて開演時間。メンバーが肩に手をかけて電車ごっこみたいに連なって出てきた!仲良し(笑)!がぜん盛り上がる客席。それぞれがポジションにつき良明さんのギターのストロークで始まったのは「いとこ同士」!いきなりかっけーーー!1曲目にコレって、20周年の時の「いとこ同士暴走事件」へのオマージュの意味もあったんだね(笑)、私は件のライブに行ってなくて気づかなかったけど瞬時にピンときたファンもたくさんいたみたい。1曲終えて慶一さんが高らかに「We are moonriders!」と。そうだ!ここにムーンライダーズあり!

 

くじらさんのフィドル(とここは呼びたい)がうなる「We are Funkees」、混沌と諧謔の極み!優介さんのキーボードがめちゃ跳ねまくって攻めに攻めてた!どんどんテンポ上がってってギュンギュン行った突き当たりでフッ…と、「モダーン・ラヴァーズ」のイントロへ。はーーーすでにめちゃめちゃカッコイイムーンライダーズ…!慶一ボーカルも博文ボーカルも冴えわたる、最近ほんとに歌がよすぎる。ドドドドッと「I hate you and I love you」、疾走する演奏、蒼くてフレッシュで野音っぽい!

 

たしかここでホーン隊がIN。「夕方ですね。日比谷公園です」のMCで演奏し始めたのは(これは演るだろうなと思ってた)「ゆうがたフレンド」。ひっさしぶりに聴くといいメロディだなあ…ホーンとヴァイオリンの音色がしみる。でもただしみじみで終わんないのがムーンライダーズ、“金はない~”の歌詞に合わせ、「金がない人ー!」「金がある人ー!」と挙手を募る(笑)。ちなみに客席、金がない人がほとんどだった(笑)、あるとレコード買っちゃう人ばっかだからないよね!

 

イントロではそれとわからなかった「檸檬の季節」、良明さん弓みたいのでギター弾いてた?ドスドス突き進むドラム、自在にうねるヴァイオリン、無頼な響きのアコーディオン、アグレッシヴにこぼれるピアノ、ひんやりしたユニゾンボーカル!ド重いアレンジかっこよ!なんちゅーアバンギャルドな!

 

慶一さんが「ビルが見えるね」と言って始まったのが、「BLDG」。前半の私的ハイライト。都会のビルの谷間に響く、慶一さんの訥々とした歌と澤部&博文のコーラス、しみたなあ…。さまざまな音が複雑に交錯するこの曲を、コーラスまで含めてナマで、目の前で、人力で、やってしまうの驚愕だった。とりわけ、夏秋さんのドラムパッドや優介さんのシンセの音や澤部さんのコーラス、録音物に閉じ込められた「BLDG」をふたたび果敢に構築していく彼らを見ていて、彼らがここにいるのは、ただ演奏がうまいからとかいう表面的なことだけじゃなく、ムーンライダーズのあくなき実験体質とやまない抒情とが血肉化しているミュージシャンだからなのだなーと思えて、グッときてしまった…。

 

ここで新曲を2曲!ひゃっほー!最初はくじらさん・夏秋さん・優介さんの共作曲の「S・A・D」。あっ、これ、新譜の告知動画で流れていた曲かな!?ヴァイオリンの旋律もあざやかに、無国籍というかノマドというかごった煮というか、そんな粗野で猥雑なパワーにあふれた曲。カッコイイなーーー!次の博文さん詞曲の「Smile」、これも告知動画で流れていたかな?こちらも博文さんらしい凄みにあふれたナンバー。間奏のギターがグレイトフルデッドみたい!はーーーかっけえ!しかしこんなエネルギッシュな曲がまだばんばん出てくるのか~、ギラギラしまくりじゃん老齢ロック!新譜に期待しかない!!!!

 

続くオリエンタルなイントロ…慶一さんの謎の踊り…「イスタンブールマンボ」!新曲から一気に時をさかのぼってるんだけど、このなんとも妖しい異国な感じ、ムーンライダーズって変わんないしやっぱり唯一無二。後ろの澤部さんも慶一さんと一緒に謎ダンスしてるのかわいかった。いとこ同士とかこの曲とか、優介さんの出すスティールパンっぽい音がたまらない良さだった。

 

次はちょっと記憶の奥の奥だった「ディスコ・ボーイ」!良明さんがムーンライダーズで初めて書いた曲なのだと。セトリすごいな!でも聴いてると、良明さんは当たり前だけどやっぱり最初から良明さんなんだな~って。このヘンテコでポップでちょっとせつなさ混じる感じ。そしてまたタイムマシンは急旋回、良明さんの最新曲、「駄々こね桜、覚醒。」もうこのタイトルだけでワクワクする!まず良明さんの手拍子指南が入る、「(ん)チャチャ!(ん)チャチャ!(ん)チャチャ!(ん)チャッ!(←ここの4つ目を厳しく指導された・笑)」。で、会場全体で手拍子して、良明さん50周年グッズの桜色の扇子も振って!ゴキゲンなアッパーチューーーン!サイコー!いやしかしホント、新曲たちのこの勢いこのみずみずしさ、いったい新譜どうなっちゃってんの!?

 

気づけばもうこの頃には会場はとっぷりと闇の中に。慶一さんが「今日は月は出てる?」と会場に聞くのでパッと上を見上げると、そこには半円より少し膨らんだ月が。するとすべり込んできたあのヴァイオリンの旋律、「月夜のドライブ」。うわーーーこれは…泣く…!!!!“ぽっかり月が出たらスポーツカーで出かけましょ”…なんだか、野音ごと、ムーンライダーズの演奏に揺られてドライブに連れ出してもらったみたいだったなあ…。そして、日比谷野外音楽堂という、昔からくり返し数えきれないほどの日本のロックミュージックが鳴ってきた場所で聴くはちみつぱいのこの曲は、過去ここに居て今はもう居ないミュージシャンたちの魂をしずかに弔う歌のようにも聴こえて、胸がいっぱいになってしまった。ぽっかり浮かぶ月を見ながら聴いたこの曲のこと、今日の夢のような時間のこと、きっとずっと忘れない。

 

じっとり汗ばむような、衣服が肌に貼りつくような、いつになくエロい「G.o.a.P」、ホーン隊の音が効いてたなあ(『Le Cafe de la Plage』バージョンだったんだね)。ホーンが入ると一段ギアが上がるムーンライダーズのこの感じもまたイイ。インプロで始まった次のナンバー、どろろんイントロからしだいに音が集まって、立ちあがってきたのは「Flags」。今!この時代に!Flags!ムーンライダーズの静かな闘志を感じて震える。戦いに傾く時代に巻き込まれないための、煽る声に同調しないための、個でいるための、闘志。

 

高らかなトランペットの音。「スカーレットの誓い」。前半のMCでくじらさんが「声は出せないけど舞台監督さんに聞いたら立つのはいいって」と言ってくれてたので(優しい)、ここで立つ人多数。会場中がヤーヤーヤーと思いのままに旗や扇子やバラやペンライトを振る!薔薇がなくちゃ生きていけない我等、楽しいことのためにしか旗は振らないのさ!!!!続いて「シリコンボーイ」アイ!アアイ!と(心の声で)合の手を入れる!ムーンライダーズもファンも、まったくもって楽しそうでイイぞ!さらに「ヤッホーヤッホーナンマイダ」と来た日にはテンションMAX!今、Flagsにたたみかけてヤッホーを演るムーンライダーズのカッコよさ。ファンキーな音楽にのせて戦争ヤメロー戦争ヤメローアホダラアホダラと唱える慶一さん、大人げなくて最高だ!

 

盛り上がりに盛り上がって、あっというまに終幕。ラスト曲は「黒いシェパード」だった。最近あまり演奏されることのなかったとても意外な曲だったけれど、強い意志を感じる大きな詞と曲、今日のライブをつらぬく何かを感じて心動かされてしまった…。原曲ではネーネーズの古謝さんが歌っている高音パートを、澤部さんが担当していて圧巻!曲のラストではひと巡りメンバー紹介、岡田さんが「約束通り野音に戻ってきました!」と言ってくれて涙涙…。もっと元気になれるようリハビリ頑張ります、とも約束してくれたので、次、さらに元気な岡田さんに会いにいかなきゃ。めちゃクールだったホーン隊や、バンドにありったけ尽くしていた優介さん・澤部さんにも惜しみない拍手の嵐(音楽だけじゃなく、本編ラストとアンコール時に自分の脚で入退場した岡田さんに、その気持ちを汲んだ優介さんがぴったり寄り添って支えていたことにも、みんなが心から感謝していたと思う…!)。そして恵比寿のときのように今日も、一番最後に慶一さんが名前を呼んだのは夏秋さんで、その重みも何度も噛みしめてじーんとしてしまう。

 

アンコール!「ジャブ・アップ・ファミリー」とはまた意外な!ほんとのジャグバンドみたい、客席もノリノリ!それにしても(何度も言うけど)どの曲もカッコいいなー!今日のセトリ、いつにもましていろんな時代のいろんなアルバムからピックアップされているけれど、今のムーンライダーズの(技術的にも精神的にも)自由な演奏にかかるともう時代なんて関係なくなって、はちみつぱいの曲も新譜の曲も、70年代も80年代も90年代も00年代も、まったく並列に聴こえてくる。ラストは「くれない埠頭」…だけどこれも普通には演らず、先日の『ムーンライダーズの数名による二、三の事柄』ライブで博文、良明、くじらの3人で披露したような、良明さんのループ(山本精一さんにもホメられたという!笑)を駆使した攻めのアレンジ。人数増えたら整理されるどころかさらに攻めが加速してて笑っちゃう。ほんと揃いも揃ってあなたたちって人は…すげーよムーンライダーズ!みんなが手を振って舞台を去る、客席も思いっきり手を振る。きっとまたすぐ会えるって思えるから寂しくない。またね!

 

野音は公共の会場なので時間に厳しくてぴったり20時までしか音は出せない、と石原真さんが件のイベントで言っていたけれど、ほんとに20時前ギリギリだったのじゃないかしら。メンバーが舞台を下りるとすぐに係の方が出て帰りの誘導をしていた。

 

 

ペンラも旗も振れたし、コロナ禍で声は出せないけれど、すっごく楽しかったーーー!そして振り返ると、夕刻の「ゆうがたフレンド」日が落ちる頃にビルを見つめて「BLDG」月を見上げながら「月夜のドライブ」、そんな楽しみ方をさせてくれたなんて、神セトリだったなって。

 

心に残ったのは、あいかわらずのムーンライダーズというバンドの前傾っぷり。野音なんて屋内の会場に比べて格段に音も作りにくいと思うのに、“演奏は手堅く今まで通りで”とはならず(そもそもライダーズの辞書に「手堅い」って無いかも)、むしろ聴いたことないようなアレンジの曲また曲、なんという攻めの姿勢なのかと!「Flags」や「ヤッホーヤッホーナンマイダ」といったナンバーを涼しい顔で気負いなく、しかしきっぱりと「今」演奏する態度にも、めちゃめちゃムーンライダーズの闘争モードを感じた。

 

そして、新曲がどれもすごくよかったことに何よりも興奮してる。老齢ロックの夜明け、というけれど、ここにきてまだムーンライダーズは進化をやめないんだな…。この底知れなさ、何てことだろう。追いかけるこっちも真剣勝負、まだまだいくよ!

 

 

お天気に恵まれて、自分たちもだけど、演奏してる人たち手かじかまないかなとか寒さがこたえないかなとか心配せずに済んだこと、ほんとうによかった。年が明けてからひたすら増加していくコロナ感染者数のグラフと野音までの日数を見比べて、関係者の皆様、日々どれだけ神経すり減らしただろうかと思う。コロナ禍の中、「老齢バンド」×「野外ライブ」という難トライアルを無事遂行して、物販のグッズもたくさん準備して私たちファンを楽しませてくださったこと、本当に感謝です。ありがとうございました!

 

 

ああもう新譜がめちゃめちゃ楽しみだし、記憶に間違いがなければ慶一さんがMCで「また近いうち」的なこと言ってくれてたからきっと新譜発売後にもライブある気がするし(あればいいな)、とにかく生き延びる!老齢ロックの夜明けを追いかけなければ!

 

 

*セットリスト(ライブ後石原真さんがあげてくださった画像より)

moonriders LIVE 2022

M01 いとこ同士
M02 We are Funkees
M03 モダーン・ラヴァーズ
M04 I hate you and I love you
<MC>
M05 ゆうがたフレンド
M06 檸檬の季節
<MC>
M07 BLDG
<MC>
M08 S・A・D
M09 Smile
M10 イスタンブールマンボ
<MC>
M11 ディスコ・ボーイ
M12 駄々こね桜、覚醒。
M13 月夜のドライブ
M14 G.o.a.P
<MC>
M15 Flags
M16 スカーレットの誓い
M17 シリコンボーイ
M18 ヤッホーヤッホーナンマイダ
<MC> メンバー紹介
M19黒いシェパード

encore
En-1 ジャブ・アップ・ファミリー
En-2 くれない埠頭

 

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ファン有志によるバラの花のスタンド。

 

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パンフあると思わなかったからウレシ。夏秋さんポラもGET。出がけに即席で作って持参したミニ旗。そして活躍してくれたバラ型ペンラ。(お友達のおかげで手に入れられました、ありがとう!)