月夜のドライブ

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『metrotr-on-line 2006 august』Mio Fou

画像何日か前に郵便受けに届いた一枚。新生メトロトロンから、7月より12月まで毎月(!)出る予定のミニアルバムシリーズ『metrotr-on-line』、鈴木博文さん曰く「月盤湾岸」。7月の博文さんの音源に続き、8月の今回はミオ・フーで、このCDが、すごくいい。ヴェルベットのカバーをかけられたまま居間の隅で埃をかぶっていた古いピアノが突然鳴り出して、その音のあまりの鮮やかさに驚かされるような感じ。そして、この音は、このピアノでしか鳴らせないんだってことにも、同時に気付く。ミオ・フーの音は、ミオ・フーがいなければ、どこにも生まれないんだってことに。

 

ミオ・フーは、言わずと知れた(…かどうかわからないけど)、鈴木博文さんと美尾洋乃さんのユニット。84年に水族館レーベルからアルバム『Mio Fou』を出してる。実は私はこのアルバムはリアルタイムでは触れていなくて、ミオ・フーといえば、『陽気な若き水族館員たち』(83年)収録の「ゴッホの糸杉」「Pierrot le Fou」を(それも後追いで)聴いていたぐらいだから、偉そうなことはひとつも言えないのだけど。

 

つまりは、実に20年ぶりの音、ということになるのかな。でも、時計の針が刻む数字とは関係なく、ミオ・フーはミオ・フーだけの時間の中にいるようで、時の経過は驚くほど感じない。84年のミオ・フーがたぶん特別84年らしくもなかったように、06年のミオ・フーもとりたてて06年らしくなんかなく、ただ、ミオ・フーらしいだけ。

 

あのね、とっつきにくいんだよね。人で言えば、すごく付き合いにくそうな印象の人。高踏的、といってもいいかもしれない。でもね、そこがすごくいいんだ。最近、見るともなしにテレビの音楽番組なんか視界の端に引っかけていると、出てくる音楽出てくる音楽、どれもが「わかりやすく」て「優しく」て「心地よく」て「いい人」なことにびっくりしてしまって(それは発信側以上に受け手側による問題だと思うけど)、気分悪くなる一歩手前でなんとか自分を支えるわけなんだけど、その点ミオ・フーは、きっぱり、とっつきにくい。だって、彼らの視線はたぶん「消費者のニーズ」なんて見てないから。音楽って、そもそも、そういうものじゃない?音楽って、便利グッズじゃないもん。私は、回転台付き多機能座椅子や、なんでも収納できるリモコンラックが欲しいわけじゃない。

 

そんなミオ・フーの、美尾さんが歌う「Happy Lucky Life」に、すごく勇気付けられる。しゃきっと前を見て、自分自身を前に進めていこうとだけしている人の歌。そう、基本は「help yourself(『以心伝信』YMO)」で、そのことでしか結局、世界は回っていかないんだと私は思ってる。

 

2曲がインストゥルメンタル、2曲が美尾さんボーカル、1曲が博文さんボーカル、という構成の全5曲。ヴァイオリンもピアノもシンセ類もうれしくなるぐらい独特な音をしているのだけれど、とりわけ、博文さんのギターが…。「Unicorn」の音、凄まじい。博文さんにしろ、一色さんにしろ、私を底からひっくり返すほどの詩を書く人って、どうしてこういうギター弾くのかな…。

 

今のところは、通販とライブ会場での販売のみの盤です。詳しくは、博文さんのブログにインフォメーションが。

 

*『metrotr-on-line 2006 august』Mio Fou