月夜のドライブ

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ジャック達、斉藤哲夫、和久井光司 ライブ@渋谷クロコダイル

画像ものすごく簡単にしか書けないかもだけど、昨日のライブのこと、ちょっとキロク。

和久井光司 デビュー25周年記念ライヴ vol.4
2006年8月27日(日)
和久井光司セルロイド・ヒーローズ
和久井光司 (vo,g)、宮崎裕二 (g, cho)
渋谷有希子 (b, cho)、清水“DENKA”浩一 (ds)
平岡公和 (t-sax)、富山渡 (tp)、須田千江子 (s-sax, cho)
★ジャック達
一色進 (vo,g)、宙キハラ (g)、福島幹夫 (b)、夏秋文尚 (ds)
斉藤哲夫

私にとっては去年の青山さんの『なんちゃってブルースセッション』以来のクロコダイル。ジャック達はこれまでも何回かこのハコでライブやっているはずだけれど、私がここで見るのは初めて。開演時間になり、まず主催の和久井光司さんがステージに現れ、出演者の紹介などして、スタート。

 

斉藤哲夫

もうもう、名前はそりゃ知らないわけがない斉藤哲夫さん。でも、ナマで拝見するのは初めてでした。アコギ一本抱えて登場、「最近は歳とってこの時間になると眠くなっちゃうんですよ」などと語る姿は、気さくなおじさんって感じ。なのに、いったんギターかき鳴らしながら歌い始めると、その「歌」の存在感がものすごい。私は斉藤哲夫さんの作品に殆んど接したことがなくて、かろうじて知っているといったらはちみつぱいの再結成ライブ(89年)での姿(VHSが出てる)ぐらいなのだけど、それ見てても思ったんだよね、快活で飄々としたキャラクターの、その奥底から出てくる存在感がけた違いだって。ただ情緒的な歌を歌っているというだけでそう呼ばれる「フォークシンガー」とは明らかにちがう、(ちなみにその「フォークの概念の誤読」ということは昨年鈴木慶一さんが言及していて、深く納得したのだけど、)ギター一本抱えて日本の歌の最前線を生身で闘ってきた生き方が、そのままそのたたずまいに現れているのかな…って、そんな気がした。曲名がまったくわからなくてゴメンナサイなのだけれど、高田渡さんの曲やシバさんの曲、吉田拓郎さんの曲、そしてご自分のオリジナルなど取り混ぜながら、30分ほど弾き語って、斉藤さんアコースティックコーナーは終了。

 

■ジャック達

ふー。前記事にも書いたけど、昨日のジャック達、すごかったな…。私が言うといつもの感傷的なセリフにしか聞こえないだろうと思うんだけど、事実として、とんでもないことになってるよこのバンド。まずセットリスト書いちゃう。

 

PICNIC FAMILY
EASTEND JUKEBOX
オンボロ
キッチンでデート
MY BEAUTIFUL GIRL
スーパーソニックトースター
キャンセル
WHAT'S NEW LOVE SONG

 

演奏聴きながら「あれ、今日って…」と思っていたのだけれど、こうやって書き出してみたらやっぱりそうだった。やった曲のうち、半分がセカンド(に入るであろう曲)からなの。ジャック達、もうこんなところまで来ちゃってるんだな…って感慨深かった。あのとんでもない名盤『MY BEAUTIFUL GIRL』をも超えてしまう作品を、今まさに作り上げようとしてるバンドの、おっそろしいほどのポテンシャルと前傾姿勢を見るようなすさまじい演奏だった。バンドって、こんなことにまでなっちゃうんだね…。本当に、びっくりした。

 

セカンドを録音中、というバンドの熱量は、過去の曲もここまで鍛え上げてしまうのか、と。たとえば「EASTEND JUKEBOX」も「MY BEAUTIFUL GIRL」も「WHAT'S NEW LOVE SONG」も、いやというほど演奏されてきた記憶をみずから軽々蹴飛ばして、まったく新しい迫力と響きを持って、こっちに向かってきた。「EASTEND JUKEBOX」の間奏の凄さったら…。たった4つの楽器が、ここまでの緊迫感を生み出す事実。まったく、どうなってんだろう。

 

それから、先月のライブで驚いたばっかりの「オンボロ」が、もう、またしてもものすごいことになってた。ファニーな曲が間奏で一気にとんでもないクレイジーさに翻るこの演奏のカッコよさ、言葉じゃ説明できないよ。ギターの裏でふっと駆け出す夏秋さんのドラムのすっ飛ばしぶりが尋常じゃない。こんな演奏、やろうといってできるもんだろうか…。「キッチンでデート」も、今まで聴いたことない状態にまでさらに登りつめてた。「スーパーソニックトースター」は、もうとにかく、早く全世界の人に聴いてブッ飛んでほしい!“カッコイイ”って言葉は、こんな曲のこんな演奏のために存在してるんだろう。最近のアレンジで加わった(んだと思う)間奏の夏秋さんのドラムも最後のキハラさんのギターのフレーズも、まるで魔法みたい、たった何秒かの響きが曲の景色をここまで広げるなんて。

 

そしてジャック達のおそるべき新開拓地である「キャンセル」。この間奏でバンドが至る、背筋がぞくっとするような音の高み…目を閉じて聴いたら、ここは60年代終わり~70年代始めごろのフィルモア・ウエストかロイヤル・アルバート・ホールかって感じ。ああ、本当に凄いバンドだな…。ま、入ってくる歌はジャック・ブルースロバート・プラントじゃなく一色進なんだけどね(笑)。そこがまたいいんだよ。同じ一色さんのバンドでも、「キャンセル」というこの曲のブルース・ロック的な世界はタイツにはあまりなかったものかもしれないって気がして、そんな意味でも、ジャック達、いよいよ凄いことになってきちゃってるな、と思うんだ。

 

もちろん一色さんの爆笑MCもあったり、キハラさんが「壊しちゃったらまずいんで」(←キハラさんのプレイを観たことのある人はわかるよね・笑)とステージに置いてあった斉藤哲夫さんのアコギを移動したり、途中ピートさんがトイレに行っちゃったり(笑)、ジャック達らしいゆるゆる要素も大いにあったんだけど、とにかく演奏が凄すぎて…。MCで一色さんも「今、セカンドの録音してるんだけど…オレは相変わらずなんですが、もうこの3人の演奏が凄いことになっちゃってて」としみじみ言ってたけど、昨日の音聴いたら、バンマスのその誇らしいタメ息もむべなるかなと思うよ。こんな音鳴らせるバンドも、そんな演奏を要求する楽曲も、そう生まれるもんじゃないってこと、ロック好きならわかる。

 

…と、ジャック達の衝撃があまりに大きかったので、この後の文章が息切れぎみになってしまうのは許して。

 

和久井光司セルロイド・ヒーローズ

名前は「POP IND'S」の昔から(…しかし私も話が古いね!)いやというほど目撃していたけれど、やはりナマを聴くのは初めてだった和久井さん。いやーよくもこうポップ濃度の高い楽曲を、ステージでナマで演奏しようとするなあ。その果敢なトライアルが、やはりとことんポップロック・マニアックスだ、と思う。そして、この日のポイントはやはりワタシ的には、宮崎裕二さんですよ!最初、銀色のハデな髪した人がギター抱えてステージに上がってきたので、「あれ~今日は宮崎さんから別の人に変更になったんだー」とか思ってたら、それが宮崎裕二さんでした(笑)。銀髪のウィッグかぶってた、謎すぎる(笑)!いやしかし、クラクラするプレイだったなー。もう、最初っから最後まで、宮崎さんのギターに釘づけ。(和久井さん、ゴメンナサイ~。)並のギタリストだったら「1」弾くところに、宮崎さんは「5」とか「10」ぐらいのきらめくフレーズ惜しげもなく降らしちゃう。フレットの端から端まで、そのフレットがいちばんよろこぶ弾かれかたを、宮崎さんは熟知してるって感じなんだよね。何ひとつ、無駄なプレイがない。そして、宮崎さんにしか出せないあの「音」!ほんと聴き惚れたー。いいギタリストだなあ。ジャック達の演奏があんなに素晴らしかったにもかかわらず、一色さんがこれ聴くと、一色さんはやっぱり宮崎さんのことジャック達に引き抜きたくなっちゃうのではないかと、ちょっと心配する(笑)。

 

斉藤哲夫(バンドで)

その後、ふたたび斉藤哲夫さんを迎え、和久井バンドがバッキングしての、斉藤哲夫さんパート!これも曲名はちゃんとわからずでゴメンナサイなんだけど、私が聴いたことある曲もたくさん演ってた!「甘いワイン」とか「Good Time Music」とか(…たぶん)、あと、「いまのキミはピカピカに光って」も!!!!厚いバンドサウンドを従えて快活に歌う斉藤さんの歌、素晴らしかったな。こうして聴くと、何十年も前の歌なのに、そのメロディが普遍的で、しかもものすごくポップだってことに驚かされる。そして、斉藤哲夫さんというその人自身が、たぶん日本ロック界でも相当芸歴(という言い方もナンですが…)が長いにもかかわらず、悪しきギョーカイぽさや慣れや手垢にまったくまみれていなくて、本当にみずみずしい存在であることに、いちばんグッときたな…。

 

 

と、たぶん3時間ぐらいはあった、もりだくさんの一夜。…って、簡単どころかものすげー長い文になってるよ(笑)。のちの自分のために、気持ちを波立たせたことはすべて書いておきたいと思っちゃうのが敗因だな…。

 

 

この後、ジャック達はしばらく地下に潜行、だそうです。アルバム製作に邁進するため、年末までライブはやらないって。あれだけの演奏を盤に刻もうとする作業が、どんなにハードな道のりかってことは、私にもわかる。ジャック達のライブがしばらくないという寂しさは想像を絶するんだけど、とにかく、待ってるよ、セカンドの完成を。こっちにも相当体力ないと受けとめきれないほどの傑作になるであろうことは、この日のライブでいやってほどわかったから。

 

はやく、世の中に鳴り響くといいな。ジャック達の「今」の音が。もう、彼ら、本当にとんでもない場所まで行っちゃってる。