月夜のドライブ

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塀の上で

画像カレンダーが赤文字エリアへと突っ込んでからは、否応なしに子どもたちと公園へ動物園へという毎日を過ごしていて、少々ヘトヘト。でも、アタマの中ではぼんやりと、野音ムーンライダーズ30周年記念liveのことを相変わらず思い返したり。もう、1週間経つんだなあ。出演したすべてのゲストについて詳しかったわけではないけれど、思ってきた深さと長さでは、やっぱり私の中では肩を並べるもののないバンドだから、あのライブで演奏されたほとんどの曲(=ムーンライダーズナンバー)には、いちいちいろんな感慨がつきまとう。

 

たとえば、遠藤賢司さんとともに歌われた「塀の上で」。これ、以前に『特別な思い入れのある5曲』にも入れたぐらい好きな曲。ムーンライダーズの、というよりは、はちみつぱいのナンバーだね。

 

どっちがより好きか、なんてことは到底(たぶん一生)言えないけれど、はっぴいえんどと同じくらい、はちみつぱいが好き。はっぴいえんどだって当時はけっしてメジャーな存在ではなかっただろうと思うけれど、ヴァイオリンやペダルスティールを入れた編成で自らのサウンドをよりローカライズしながらも、その場所からロックの「永遠」に届こうとした、はちみつぱい独特の意固地なチャレンジのありように魅かれる。そしてそのかたくなな美意識が実際に手に入れた、『センチメンタル通り』というたった一枚のオリジナル盤の、あまりの美しさと哀しさ。何度聴いても、言葉なくただ打たれる。

 

特に、「塀の上で」と「センチメンタル通り」。もう、ただただ、美しいとしか言えない曲たち。この2曲を生み出したって功績だけで、たとえその後のムーンライダーズの歴史がまったくなかったとしても、鈴木慶一という人はロック史に名前が残っていいと思う。こんな名曲を2つも書いたら、それで十分なぐらいでしょ、ほんとは。そして、もうひとつ好きなのは「月夜のドライブ」。この曲への思い入れについては過去に書いた(→記事)。そういえば、このアルバムの「月夜のドライブ」間奏でのクレイジーサキソフォンは、若き日の坂田明さんなんだっけ、なんてこと思い出して、その息子である坂田学さんが今ライダーズのサポートドラマーをつとめることに、時間がメビウスの輪のごとくねじれてつながるような、不思議な感慨をおぼえてしまう…!

 

イントロの美しさが絶品の「月夜のドライブ」、アウトロから次の「センチメンタル通り」につながる部分も、何度通過してもせつない感じに襲われる。表題曲「センチメンタル通り」も、イントロ、メロディ、慶一さんとかしぶちさんが回しあうボーカル、すべてがたまらなくいい。でも、先述の『特別な思い入れのある5曲』に、「塀の上で」を入れてしまったのは、やっぱり、この詞があるから、なのかな。

『羽田から飛行機でロンドンへ

ぼくの嘆き持ってお嫁に行くんだね』

今の世の中ではリアリティを持つとも思えないこの言葉が、今でもリアルで痛切な思いを胸に投げ込んでくるのはどうしてだろう?そんなこと思いながら、あの日も、慶一さんとエンケンさんがつぶやくこの歌詞を、ひとつひとつ大切に聴いてたんだ。

 

一昨年から去年の始めあたりにかけて、私に、空前の「はちみつぱいブーム」が起きていたことがあって、あれはいったいどういうわけだったのか自分でも不思議なのだけど、たしかそのころ、慶一さんがそういうモードだったのか、ぱい時代のナンバー---「月夜のドライブ」とか「こうもりの飛ぶ頃」とか「たばこ路地」とか---をライダーズやThree Blind Mosesのライブでよく演っていたんだよね。今、はちみつぱいのCDで普通に手に入るのは『センチメンタル通り』とライブ盤の『SECOND ALBUM(in concert)』の2枚だと思うんだけど、熱に浮かされた私のいつもの癖で、そのとき、手に入りそうなはちみつぱいの音源はすべて探して買ったんだった。春一番とか、フォークジャンボリーとか(たとえばこの記事)、再結成ライブのCDとかVHSとかね。その後出た、『ワン・ステップ・フェスティバル』(74年の郡山でのライブを収録した4枚組CD、はちみつぱいが数曲入っている)なんてのは、さすがに買っていないのだけれど…。でも、そんな私を今すごく悩ませてるブツがこれ。『春一番BOX』…。ここに入ってるはちみつぱい4曲のうち、これまでのオムニバスで出てるのはたぶん「塀の上で」だけなので、他の3曲、聴きたいなあ…。ごまのはえも武蔵野たんぽぽ団もフォージョーハーフも、すごーく聴きたい…。がしかし18900円なあ。うーん悩む…。

 

*『センチメンタル通り』はちみつぱい

 

*そうそう、このはちみつぱい記事は、nakamura8cmさんとこの記事のコメント欄で「武川さんソロで『月夜のドライブ』やってましたよ」と教えてもらったことと(知りませんでした!)、モスコさんとこの記事のコメント欄で「はちみつぱいの『月夜のドライブ』聴きましたよ」と話題に出してくれたことが、メチャキッカケになってます(記事は「塀の上で」だけど)。おふたりとも、どうもありがとう!