月夜のドライブ

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堀込高樹『Home Ground』を聴いた

画像やっぱこの人、相当ヘンだよ…。そりゃもう、うれしくなっちゃうぐらい。と、つくづく思わせる、堀込高樹『Home Ground』。高樹さんのソロアルバム、っていったらそれだけでもうとんでもない期待をせざるを得ないんだけど、そんな周りの勝手な視線を軽々くぐり抜けて、この完成度の高い変人ぶり。まったく、かなわないよ…。そうタメイキついてる私たちの顔見て、当たり前だろっていつもの強気ぐあいで、ニヤニヤしてるんだろうな。もう、人が悪いったらありゃしない。

 

1曲めのイントロ数秒で、いきなりはるかな高度まで私たちを引っ張ってく離れワザは、いつものキリンジばり。で、ここで入ってくるボーカルが泰行さんじゃなく高樹さんのものであることが、ものすごく新鮮。であると同時に、意外なほどしっくりきてた!それは、アルバム通してそう。yoikoさんも書いてたけど、高樹さんの歌声って、キリンジではチラッと要所でしか聞かせないから、スパイス的に使われるのがいいんだって先入観があったんだけど、全然そんなことなかった。アルバム一枚を強く美しく泳ぎきる「ボーカリスト堀込高樹」の存在感に、今さらながらドキドキしちゃう。

 

メロディーも、アレンジも、この常に期待を裏切るやり口が、まさに期待通りというか…。もう兄らしくてたまらない。メロディーなんて、言っちゃえばただの音符の羅列に過ぎないのに、明らかに他の誰でもない「高樹印」がついてるものね。この強烈なオリジナリティ、どうなってんだろ。

 

まだそんなに聴き込んでいないんだけど、「クレゾールの魔法」、ヤラレた…。この妖しいメロディ、ゾクゾクする。で、「点滴を受けながら君と喋りたい」だもんね。この倒錯ぶり、どうしろっていうの…。妄想もうつくしいもん、ここまでくると。ヤバイ…。それから「Air Guitar」!なに、なに、これ!インスト聴いて笑っちゃったのなんて、私初めてだよ。青山陽一さんのギターーーーー!かっちょいい!爽快!痛快!でもさ、いつもは高樹さん、青山さんのこと尊敬のまなざしなクセに(いや実際そうだと思うけど)、この曲ではもー好き勝手、「青山さんのギター、こんなふうに料理しちゃおっかなー」ってニヤニヤしてるのが見えるようで、おっかしいったら。ほーんと人が悪い(笑)!で、さんざんはじけた後にこれ…「雪んこ」…このイントロがきちゃうの、禁じ手だよね。ああ。

 

あとはね。やっぱり、堀込高樹という詩人は、松本隆の直系なのだと思わざるを得ない、「冬来たりなば」。「かしわで」、こんな単語を平気な顔でポップミュージックに持ち込む果敢さこそが、どんな技巧をも越える、松本さんの詩の「精神」だと思うから。そんなこと考えてるところに、最後のフレーズで「春よ来い…」と歌われて、涙が出そうになる…。まったく、手に負えない、堀込高樹って人。

 

たった一枚で、ここまで人の気持ちを翻弄するなんて、相当意地悪じゃなきゃできない。ああもう参っちゃうな。思えば6月の青山さんのライブにゲストで出たとき、高樹さん「ソロは秋ぐらいには出るかも」って言ってたけど、あの飄々ぶりで、これだけのクオリティのものが6ヵ月後に出るなんて、正直、想像もしてなかった。

 

本当に、アルバム一枚、息もできないぐらい、いい曲ばかりだ。困っちゃうね。まだまだ書きたいことあるけど、それはまた。たぶん3ヵ月後にも、1年後にも、永遠に新しい魅力を発見しそうなアルバム。

 

*『Home Ground』堀込高樹