月夜のドライブ

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よく聞く、あるいは特別な思い入れのあるキリンジの5曲

祥さん yoikoさんがすでにアップしている「キリンジの5曲」、のんびり悩んだりほっといたりしてるうちにずいぶんタイムラグができちゃいました。でも書いてみよう。と言いながら、いい曲多すぎてこの時点でまだ選曲すげー迷い中。どこへ着陸する、私の5曲?

 

そもそも私はキリンジを知ったのが遅く、「思い入れ」という言葉を使っていいのかなとためらうぐらい。ずっと前から私の周囲のとりりん(←現在会社のPCの壁紙は馬の骨らしい)や夏子といったオンガク目利きたちから、彼らがタダモノではないという話は聞かされていたのだけれど。

 

2002年2月に発売された藤井隆さんの『ロミオ道行』、この名盤が私とキリンジの(正確に言えば作曲家・堀込高樹との)出会いといえば出会いなのだ。松本隆さんがプロデュースと全作詞を手がけたこのアルバムに、2曲を書き下ろしていたのが高樹さんだった。「未確認飛行体」と「代官山エレジー」、このメロディには本当にぶっ倒れた。こんな才能があったのかと。ほどなく、はっぴいえんどのトリビュートライブで初めて生のキリンジを見て「ああ好きだーこのぼっそりした空気~」(←楽曲というより兄弟のたたずまいについての感想だな…)と思い、とりりんと夏子に「CD買おうね」と念押しされ、まず『Fine』を、それからその前の3枚を一気に、買ったのだった。本当にショックを受けたなあ。30代も半ばになって相当錆びつきかけてるはずの自分の感性が、新しく知る才能にこれだけドキドキすることがあるなんて、思ってもいなかったから。

 

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1.「代官山エレジー

というわけで、思い入れあるこのセルフカバーを。「代官山エレジー」を、私は断じて“いい意味で”AORって呼ぶ。今、世の中にない音。どこまでも、せつなく甘く大人っぽく。

2.「グッデイ・グッバイ」

私が考える、すごく「キリンジらしい」曲。明るく爽快な王道ポップ。でも、なんてことないポップな曲をこれだけ堂々と放つことが、実はいちばん難しく、したたかさの要ることなんじゃないかと思うんだ。“歌う号外さ”、ふたりはいつもそんな気持ちで歌ってるのかなと思えてキュンとする。この曲、途中で高樹さんのボーカルに切り替わるところが、ヤバイくらいにステキすぎ…。だいたい私、ひとつの曲を男性ボーカルで回す、ってのにメチャクチャ弱いんだ…。

3.「むすんでひらいて」

泰行さんの曲の中で、たぶんいちばん好き。yoikoさんが記事に書いていることに、ひたすら頷く。ありえないよ、こんな曲書いて歌えるって、どう考えても狂ってるでしょう。(前にもさんざん書いたけど、)ポップさの裏の、その狂気のありように、たまらなく私は倒れちゃうんだ。

4.「メスとコスメ」

高樹さんの詞はどれも、うつくしくて意地悪で色っぽくて、ため息が出る。詞の中にどうにも居心地の悪そうな言葉を並べる高樹さんの、詩人としての果敢さと覚悟にも、目を見張る。高樹さんのつぶやく“きれいだぜ”、その少年ぽくもやさぐれた響きに、勝手にはっぴいえんどを感じちゃう私。

5.「Drifter」

これ、Musical Batonでも入れたし、過去にもさんざん語ってるのでやめようかなと思ったんだけど、やっぱり入れちゃった…。 “みんな愛の歌に背つかれて/与えるより多く奪ってしまうのだ” ああ、なんて詞なんだろう。もう。ただ、ひたすら。

 

“子どもの泣く声が踊り場に響く夜”(『Drifter』) “暗いニュースが日の出とともに町に降る前に”(『エイリアンズ』) 人の寂しさやつらさや不安がどんな場所にあるかを、このふたりほどよく知っている人はいないんじゃないかな。そんな、目の前の心細げなたった「ひとり」を、キリンジの歌は抱きしめる。でも、たった「ひとり」のための歌だからこそ、同時にキリンジは果てしなく世界に開かれているんだと思う。強くも立派でもない男の、なんてことないつぶやきが、その奥底の祈りの気高さゆえに、世界と結びついている。ちっぽけで取るに足らない存在の「個」が、それでも大きな何かにつながっていくそのありかたに、私はいつも励まされてるんだと思う。

 

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あー。これ入れよう、と思うとあれがはみ出しちゃって、あれを入れようと決心すると今度はこっちが押し出されちゃって。私の下手な弁当作りかよ!弁当箱大きくしろよ!って感じ…。5曲というハコはほとほと難しい。最後の最後、「メスとコスメ」と「君の胸に抱かれたい」のどっちを入れるかで、胃が痛くなるぐらい悩んだ…。でも結局並べてみたら、今までさんざん語ってきた曲ばかりであんまり意外性がなかったね。なんだよ、苦労したのに(笑)。いやほんとキリンジは名曲多すぎ。つくづくそれを思い知った。

 

*選んだ5曲は「3」「Fine」「Omnibus」からですが「Archives」ジャケも足してみました