月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

全曲語り倒しちゃえ!『DEADLINES』青山陽一

画像昨日あんな記事書いて、寝る前にも散々『DEADLINES』聴きまくってから寝たら、いろんなメロディが頭の中巡り続けて(特に「Cherry Blossomは今」と「March For March」)、すっかり目が冴えて眠れなくなったうえ、やっと眠りにつけたと思ったら青山さんの夢なんか見てしまった私です。もう、スッゴイいい夢だったなー(はあと)…!!ってスミマセン、大バカで…。というわけで、この勢いで(どの勢いだよ!)青山陽一さん『DEADLINES』の全曲感想、書いちゃうぜ!

 

01. ジャガーの爪

ディスクをプレイヤーに入れて、どんなサウンドが出てきちゃうんだろう…とドキドキしてるところに、いきなりの重量級サウンド!伊藤さんが叩く(まさに叩いてる!)鍵盤の音で、一気にテンション上がりまくり!で、ガッツンガッツンいくと見せといて♪肩口に傷を負っている~♪のところでふわっとコードが展開して柔らかな触感に身を翻すとこ、もうたまんない、ホンット青山さんだーーー!これやられると絶対さからえない。どうにでもしてって気分になる。青山さん、いきなりキケンすぎです…。

 

02. 休符を数えて生きるのは

またしても伊藤さんの転がるピアノフレーズが気持ちよすぎるイントロ。ミュージシャンとしての奇っ怪さでは青山さんとタメを張る(と思われる)キリンジ堀込高樹さんの詞が、また絶妙にユーモラス。ちょっと話はズレるけど、今回、アルバム中2つの歌詞を青山さん以外の人が書いているのだけど、このことに、私はひそかに感銘を受けてたりする。20年来、自分の作詞作曲が当たり前でやってきたシンガーソングライターが他人に詞を書いてもらうって、すごく勇気が要ることだと思うし、音楽への曇りのない愛情がないとできないことだと思うから。(昨年暮れに出たベスト盤でも堂島くんが歌詞を書いているけど共作だし、今回は純粋なオリジナルアルバムだから余計そう思う。)しかも、その2人が高樹さんと慶一さんだものね、その人選には唸るしかない。ちょっと前に「日本のロック詞は直枝政広と一色進と鈴木博文ですべてだろう」という暴論を吐いた私だけど(笑)、それを5指、にするなら、あとは鈴木慶一堀込高樹だと思うからね。このもの言いでもまだちょっと乱暴か(笑)。

 

03. Blow Wind Blow

この曲がまた、クセものだよね(笑)。大好きなんだけど。始まりこそアコギの響きが爽やかで軽やかで、♪トゥルットゥットゥットゥットゥットゥ~♪なんて、まあ高尾山にでもハイキングに行こうよってな感じ。ところがホイホイとついてってみたらいつのまにか大変なことに!風吹きすさび雷鳴ってるここはどこよ!うわ、チョモランマですかい!っていう(笑)。後ろも前もない、おっそろしい場所に連れてかれちゃってる私たち…。もー覚悟を決めてBM’sの嵐のような演奏(とりわけ中原さんの爆風ドラム!)を浴びるしかありません…いやはや…。この曲、間奏の青山さんのアコギがまたさりげに凄い。リードとリズムを同時に弾いてるようなこの手のフレーズ、ナマで目の前で観ても魔法みたいで、「どうしてこれを独りで弾けるのか?」といつも謎は深まるばかり…。あと、この「Blow Wind Blow」は言葉が音に乗っかっていく感じがたまらなくキモチイイ。これは青山さん、グランドファーザーズのころからの名人芸だなー。

 

04. March For March

このイントロを聴いた瞬間にカラダを走り抜ける感覚が、「どこかで覚えがある…」と考えていたんだけど、そう、何かね、Trafficの『Mr.Fantasy』を聴いたときの感覚に似てるの(←この体験は、私の場合割と最近のハナシですが)。どの曲、っていうわけじゃないんだけど(強いて言うなら「House for Everyone」かな、でも今聴いたらあんまり似ていない)、全体に漂う不穏な感じとか、奇妙な緊迫感に、共通するものを感じるのかも。インストものにおおむね反応が薄い私の細胞を、青山さんのインスト曲がいつでもエキサイトさせるのは、やっぱり彼のメロディラインの素晴らしさなんだろう。インストゥルメンタルでも、そこに歌心があるんだと思う。

 

05. 夏らしい

青山さん自身がどう考えているかはわからないけれど、これはやっぱり私には、はっぴいえんどの系譜で聴こえてくる。アメリカやイギリスの音楽から多くを受け取りつつ、やっぱり自分が日本人以外の何者でもないことを知っていて、「日本のロック」の末裔であることにしっかり落とし前をつけていこうとしてる人の歌だと。このメロディも、このコードも、このスライドの響きも、このコーラスワークも、「夏らしい」なんて言葉も、そういう覚悟がある人の中からしか生まれないんじゃないかな。

 

06. 20 Minute

と、散々「日本」だのと言ったその後に、こんなおそろしくファンクな曲がきちゃうところが青山さんだよね(笑)。この「20 Minute」は、詞がおっかしくて最高。クソ重たいリズムに中年の悲哀と可笑しみを乗せて疾走しちゃうこの独特な世界、『ODREL』のころからまたさらに磨きがかかってる。こんなヘンテコな音楽やってる日本人、どこ探しても青山さんだけだろうなあ。

 

07. 吉祥寺デイズ

イントロの中原さんのドラムかっけー!また千ヶ崎さんのベースの粘り具合と伊藤さんのハモンドの響きが最強。青山さんのギターもいつになくシツコイ感じでいい(笑)。ほーんと、4リズムでこの濃密さ、どうなってんだろう。中味の薄さがバレるのが恐くてどうでもいい音をドンドン詰めこんでっちゃう、そこらの強度偽装音楽のみなさんには、この音聴いて猛省していただきたい。たった4つの楽器でこれだけの濃い音鳴らせるんだぜ!

 

08. Cherry Blossomは今

これはもう…前記事でも書いたけど、ここでも書くけど、そしてこの先何度も書くだろうけど、聴くたびヤバイです…。何か、この世のものと思えない美しさがある、この曲。桜と嵐と。若さと老いと。男と女と。生と性と死と。それでも、転がりながらでも、生きていくことの困難さとせつなさ。繋がりたいって思い。ああ、わけもなく泣ける。こんな曲をちゃんと聴ける大人でよかったと思う。こんな音楽が響く世界に生きててよかったと思う。大げさじゃなく、そう思っちゃう。いやほんと、ヤバイ…。演奏のこと言うと、全編に流れる伊藤さんのハモンドがたまらない美しさだし、ためきれない涙が暴発するように最後に姿を現す千ヶ崎さんのベースの音、グッときすぎる。それとね、この曲の青山さんのボーカル、これまでで最高のものじゃないかな。詞と、メロディと、歌と、演奏が、こんな高みで結晶しているのを見たら、この後どうすればいいんだろう。うう…。

 

09. Blind Touch

と、じーんとしてるそばから遠慮なしにドカドカとうるせーこの曲(笑)!これは、6月の「怪隣」のときに披露してくれたのを聴いていたのだけど、こんな詞だったんだ!このバックの伊藤さんのハモンド(今回のアルバム、ホント伊藤さんの音に反応しまくり)、スティーヴ・ミラー・バンドのライブ盤みたいな音してる!めっちゃカッコイイ!間奏の中原さんのドラムも惚れる~!

 

10. Jamparica

『ODREL』の怪作「Tarantula」の世界を引き継ぐ、ジャムっぽいノリの怪しげな変拍子インスト。もうこの奇妙ヘンテコ変態ぶりには誰も何も言わない(言えない…笑)から、このままどんどん突っ走っちゃってー、青山さん!

 

11. Seven Deadlines

これもつくづく奇妙な音楽だねー。曲としては、このアルバムの中でもいちばんオーソドックスな気もするけど、鳥羽さんのアイデアで生まれたという「レス・ポール氏」ふうの倍速ギターフレーズが、変でキモチわるくていいなあ。

 

12. 月曜のバラッド(4 pieces version)

『Broken Words And Music』に“early version”として入っていた曲を、バンドで再録した1曲。個人的には今のとこ、「Cherry Blossomは今」と争うこのアルバムのベストテイク。もともとの楽曲が秀逸なので、アコースティックバージョンも文句なしだったけど、このバンドバージョンは、さらに世界がぐーっと拡がる感じで霧の中で夢を見ているみたい。何より、田村玄一さんのペダルスティールが素晴らしすぎます。前作で言えば「Los Angels」とか「Free Bird」とか、この「月曜のバラッド」とか、派手なとこはひとつもないミドルテンポのこういう曲で、誰にも出せない深みを出せる青山陽一という人の資質に、私は結局のところ魅かれているんだと思うなー…。

 

…って、気付いたらかなり書き倒しちゃったかも…。すげー時間かかってんですけど…こんなことやってていいのか、私(笑)。っていうかそれ以上に、文章長げーよ(笑)!こんなの誰が読むのか…。でも本当に素晴らしいな、この『DEADLINES』というアルバム、そして、青山陽一というミュージシャン。というわけで、その素晴らしさに免じてもらって(笑)、宇宙の藻屑のひとつとして、記事アップだ!こんなアルバムを届けてくれた青山さんとBM’sに感謝しつつ、ね。

 

*『DEADLINES』青山陽一