月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

「個」と「孤」

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さらにキリンジ話は続く。完全参ってます。

 

もう去年のことだけれど夏嬢のBLOG(crazzzy*ing blog)で「Drifter」の話になったことがあった。このタイトルが単数形であることを彼女は「相手を巻き込まないということかな」と。至言。ああーそうかも、と殴られたように私は思い「孤独を引き受けない限り複数形なんて始まらないんだ」と呟いた。

 

甘いハーモニーと美しいメロディ、ポップなグルーヴと完成度の高いアレンジ。それだけでも人が追いつけやしないとてつもない場所なのだけれど。私がたまらなく魅かれるのは、その甘さの裏にちらりと見える、彼らの孤独と狂気だ。「Drifter」もそうだし、私の大好きな、泰行さんの「むすんでひらいて」や高樹さんの「切り花」。誰の言うこともきかない強情さと、ふとしたことで崩れそうな脆さ。雨の中で傘もささずに佇んでる男の背中に声をかけられないように、私は彼らに、ふれられないぐらいのひりひりした孤独と狂気を感じる。

 

きみと私のあいだには距離がある。どんなに好きだと思っても、どんなに近づきたいと思っても、その距離をなくすことは絶対に不可能。その、どうしようもなく寂しい事実を引き受けるところからしか、きみと私っていう複数形も始まれないんだ。絶対に越えられないはずの距離を、すり傷つくってでも求め合い抱き合わずにいられないから、いとおしい。自分の手では守りきれないきみのことを、それでも守りたいと思い、祈るから、貴い。

 

夏嬢が言った。「キリンジを近くに置いて、いままで選んできた音楽を遠景にした孤独系図。『個』と『孤』だね、やっぱ。」と。ほんと。ほんとにそう。好きな音楽は、みんなそうなんだ。激しく引用させてもらっちまいました。と事後承諾。>夏

 

*「3」キリンジ ああこれも名盤。「むすんでひらいて」収録。