月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

今日の私に雑感が降り積もる

洗濯機を2回まわして干して、夕食用の鶏肉と大根の煮ものを作り、米を研いでザルに上げてから、打ち合わせにとある会社に出かける。今日もハナウタはコレクターズの「時間を止めて」とカーネーションの「ダイナマイト・ボイン」だ。仕事に行くのに♪そっと口づけかわして~♪そして♪あきれるほどのきみの胸~♪のエンドレスリピートじゃ不具合な気もするがしょうがない。

 

電車に乗ると、今や別に珍しいことではないけれど、化粧中の女性がいた。前髪をピンで留めてイブサンローランの大きなパレットを覗き込み、アイシャドウにアイライナーにマスカラ、チーク、口紅と、私が結婚式でもしないようなフルメイクだ。私などたぶんどこかの無振動の実験室を用意してもらってもアイライナーなんかうまく引けないというのに、時速100キロの車内でそれをこなす彼女の技術は驚嘆に値する。人間やる気を感じる分野でこそ力が伸びるのだな。

 

目的の駅に降り立ち、噂の電飾動物を何匹もやり過ごす。まだ首をねじ曲げられたりはしていないようだったけれど、真昼のトナカイや白熊はあまり生気がなかった。電気が通わないと、動物としての総体よりも、骨組みや電球というディテールに目がいっちゃうせいだ、きっと。人間は、どうだろう。私は総体として人の目に映ってるんだろうか。そこのところは、かなり怪しい。

 

会社に着いて、パリッとした服装でパリッと話す人々から、仕事の説明を受ける。今回私が携わるのは、かいつまんで言えば「論理的な文章力がつく」製品らしい。「子どもたちは今作文を書く時間が激減していて、高学年になっても論理的な文章がまったく書けないんです」。そそそうなのか。その強迫的な響きにハハのひとりである私は簡単にあわてふためいてしまう。さて「論理的な文章が書ける力」はどんな場面で活躍するだろう。買ったばかりのビデオデッキが故障したときに、メーカー宛のクレームの手紙を書く場合かな。口づけかわしたりきみの胸にクラクラするような詩を書くときには、役立ちそうもない。まあともかく、私はこの論理的な製品の宣伝文を速やかにかつ論理的に書かねばならない。

 

キオスクで買ったチョコレートを口に放り込みながら、帰りの電車の中、吊り広告を眺める。『昨日を捨てて運を掴む』。ハヤリの女性誌の見出しは、論理的な製品の売り文句よりよほど強迫的だ。そうか、昨日を捨てないと運を掴めないのか。生まれてから昨日までのくだらないことや馬鹿馬鹿しいことの集積でしかない私には、到底ムリだな。