月夜のドライブ

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トラペ座 2nd Album「灯地下」リリース記念ライブ @ 公園通りクラシックス

初めて、トラペ座観てきました。セカンドアルバム『灯地下』発売日当日のリリース記念ライブ。私は1stアルバムも未聴だったのでまったくのお初。多田葉子さん(クラリネット、サックス)はこまっちゃクレズマで知っているけれど、大野慎矢さん(アコーディオン、ガイダ)、菅原雄大さん(チェロ)、という組み合わせで奏でられる音楽がどんなものなのか想像もつかないまま、渋谷公園通りクラシックスへ。

 

公園通りクラシックス.jpg

トラペ座 presents マンスリー企画
【 灯地下 т●чка vol.7 】
~ 2nd Album「灯地下」リリース記念 ~
公園通りクラシックス
2020-12-15(Tue)
open 19:00 start 19:30
予約・当日共 ¥3,000+オーダー

<出演>
◆ トラペ座
多田 葉子 Clarinet, Soprano Sax. Bass Clarinet
大野 慎矢 Accordion, Gajda, Vocal
菅原 雄大 Violoncello
◆ guest
夏秋 文尚 Percussion

 

本当はこの日、ゲストに夏秋文尚さんと共にロケットマツさんも登場の予定だったのだけれど、体調不良ということで残念ながらお休みでした(でもその後快復されたとのこと、よかった)。フロアの向かって左からぎゃらこさん、大野さん、少し奥まって夏秋さん(エレクトリックパーカッションのようでした)、菅原さん、というセッティング。とても寒い日だったので私は温かいジンジャーレモンをいただきつつ。

 

未知のトラペ座。普段聴いてる音楽の幅が狭い私に、受けとめる耳があるだろうか…とドキドキしつつ待ってたのだけど、1曲目からもうぐいっと引きこまれた。ぎゃらこさんのクラリネットと大野さんのアコーディオンと菅原さんのチェロが溶け合って、公園通りクラシックスという箱の中で得も言われぬあたたかな空気となり、聴く人を包み込む。ぎゃらこさんの息遣い、大野さんの手元のタッチの音、菅原さんの弾いたり爪弾いたりこすったり叩いたりの音、生音のふくよかさ、音像の豊かさ。曲ごとに、あるいはひとつの曲の中でも、ふわっと飛び出してくる楽器の音が入れ替わり立ち替わりしてさまざまにうねり、耳が離せない。3つの楽器は、バラバラに駆けだしたかと思うと一気に集まってひとかたまりになりまた自由奔放にばらけていく、放牧中の羊の群れを見ているようだった。

 

途中で、それまでアコーディオンを抱えていた大野さんが、楽器を替えますねと、フシギな白い袋状のものをよいしょと肩にかけてぷーっと空気入れて膨らませた!これが噂の!ガイダ(バグパイプの一種)ってやつ!予想外の見た目にびっくり。これ、音、すーーーごくよかったなーーー。大野さんがこれを吹いている姿もなかなかフシギで…(空気を吹き込むタイミングと、リード?から音が出るタイミングが違うのが、素人には興味深かった)。トラペ座のことも大野さんのことも何も知らないけど、どんな道を辿ると人はこんな楽器を手にしてこんな音楽を奏でるようになるんだろ、と感動しながら独特の音聴いてた。(もっと言うと、ものすごく特異な音楽やってるのに見た目は普通で、でもしゃべり始めるとやっぱりちょっと変わってる大野さんの、人となりにも興味津々だった…笑) 大野さんが吹きながら解説してくれた話によると、ブルガリアではリズムがないこういう曲で乾杯して、リズムが出てくると踊り出すんです、って。次の曲ではもうひとまわり小さいガイダでも演奏。なんて魅力的な音なんだろう…うっとり。

 

かと思えば、インストゥルメンタルなグループだとばっかり思っていた(何も知らなくてスミマセン)トラペ座の、ボーカル曲がまたとってもよくって。大野さんがソロで歌う歌も引きつけられたし、3人で歌う「ひるのゆめのあわい」(かな)とか、たまらないよさだった。楽器にあんなに長けているのに、歌もこんなに素晴らしいなんて!

 

パーカッションでゲスト参加の夏秋さんと、『灯地下』録音のときの話なども。2枚組(にすることは大野さんが心の中で決めていてメンバーに明かしたときええっと言われたけど押し切ったと 笑)に入っている全19曲を、ここ公園通りクラシックスを借り切って3日間で録音したのだそう。普通は1日3曲も録音したらへとへとになっちゃう感じなのを3日で19曲だから、夏秋さんいわく、とにかく曲が多くて大変だった、ミックスもやってもやっても終わらなかったと(笑)。でもお店のかたも、普通は止めない製氷機(音が鳴る)まで止めて録音に協力してくれたのだそう。ジャケットもクラシックスの入り口のあのスロープで撮った写真。私もこの日この『灯地下』を手に入れたのだけど(そしてまだひと回ししただけだけど)、装丁や録音や楽曲、細部にいたるひとつひとつまでが丁寧で素敵なつくりの素晴らしいアルバム。ステッカーにあった惹句の通り、この冬の私の「テーブルミュージック」になりそう。

 

小さな部屋に招き入れられて暖炉の前で温まらせてもらうような曲も、見渡す限りの大草原に勢いよく連れ出されて草まじりの風に吹かれるような曲も、リズムと共に踊り出したくなる祝祭のような曲も。トラペ座、すごくよかったなー。ライブ観られてよかった。素晴らしい時間をありがとうございました!

 

 

気温の低い日で、しかも外に出てから気づいたけど、自粛要請が出ているせいで渋谷だというのに22時過ぎの街はお店も軒並み閉まっていて暗く、人もまばら。大野さんがMCで『灯地下(точка)』というアルバムタイトルに込めたさまざまな意味を説明してくれていたけれど、まだしばらく籠った生活をしなくてはならないかもしれない今、このアルバムは、トーチカに潜む私の心のそばにあって、ふつふつと気持ちを沸き立たせ、温め続けてくれる存在になるかもしれないなって思う。

 

セットリスト(トラペ座公式さんがあげてくれたセトリ写真から拾い書き)
<1部>
1.Tamara Bar
2.Tzivaeri わたしの宝もの
3.かぎろひ
4.砂人
5.ロドピの民謡
6.Gajda Solo
7.ラマリア
8.おどけしのはな
<2部>
1.トーチカ
2.イリーニャ・イリーニャ
3.歓喜の市
4.ひるのゆめのあわい
5.野辺のうたげ
6.トロッコに乗って
enc.
Hama Yaranam
泥の海

 

トラペ座CDとチラシ.jpg

 

 

トラペ座セカンドレコ発チラシ.jpg