月夜のドライブ

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バンドサウンドは遠い平野へ駆け出す(西村さんライブの記憶にまだ溺れる記)

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西村哲也さんのソロライブ@下北沢440からもう5日経つのだけれど、どっぷりあの夜の記憶に浸かったままのこの私をどうしよう。私なんかの言葉があの音の存在感に追いつくはずもないから、いくら書き続けても永遠に書き足りないんだけど。今でもちょっと信じられないんだ、あのメンバーでのライブを観られたってこと。だってね、そもそも私にとってはランプの魔人ジーニーに「どんな望みをかなえましょうか?」と聞かれたら、すぐさま3つしかない望みのうち1つを使ってお願いしちゃいそうなバンドなんだもん、「ライブが見たい、ギターに西村哲也さんと青山陽一さん、ベースに大田譲さん、ドラムに夏秋文尚さん、キーボードに伊藤隆博さんで!」ときっちりメンバー指定で。それがあちらから、鴨がネギを…じゃない、ミュージシャンがギターをしょって、来てくれちゃったような鴨ネギナイト。望み叶いすぎて怖い…。

 

あー、夏秋さんのドラム、かっこよかったなあああーーーーっ。(←またですか…。)ッドコスコズコ!って、夏秋さんのドラムってどうしてあんな気持ちいい音するんだろう…。このちいさい「ッ」が、私をとてつもなくクラクラさせやがる…くそー。夏秋さん、マジ、ドラムの音だけでオンナ口説けるね。(ドラムじゃ口説かないか…。)しかも赤Tシャツ+水玉シャツだよ。そんでアンコールで、シャツ脱いで赤いTシャツだけで出てきちゃうんだよ。もー反則、ヤバすぎ、どうしようかと思った…。って全然ドラムの話から外れてるし。夏秋さん、ご本人の寡黙そうでぼそっとした感じ(あくまで印象)に反して、妙に遠慮なくジャンジャン鳴るあのシンバルの音も、シビレる~、大好き~!…とまた祭りか…、いや、ドラマーばっかり見てたわけじゃないのですよ、というかむしろドラムは私から見えにくい位置だったから、刺激強すぎなくてちょうどよかったかも…。

 

青山さんがたびたび西村さんに視線を送りながら、ギター弾いてた姿も、忘れられない。なんかね、ともに闘ってきた友人の晴れ舞台を心からよろこぶような、そのためにはいくらでもサポートしまっせー!っていうような、温かい気持ちが終始にじむような演奏で。それは、大田さんもね。ホント、それだけでも泣けた。堂々と全体を引っ張っていく、西村さんのボーカル、そこに青山さんのコーラスが絡むという妙を味わえたのもゼイタクな体験。「オー!ベイビィ」、CDではこじまいづみさんがかわいらしい声で付けているコーラスを、この日は青山さんが。あのえもいわれぬ高音で「Oh,baby~」って入っちゃうんだよ、ね、参るでしょー。

 

と、ついドラマーとギタリストの話ばっかしてる一方で、伊藤さんのピアノとキーボードもひそかにとんでもないことになってるわけで。この伊藤さんという人も、見た目すごーく奥ゆかしそうで、プレイもわりと淡々としてるのに、気付くといつもはるか彼方で破壊的なことになってる印象。毎曲、うわいつのまにそんなとこにいっちゃってるの伊藤さん!って感じなんだよね。(どういう感じだ。)なんだかもう、そのギャップにしびれてしまう~。だいたい私、こういうタイプにめちゃ弱いですね、知的で静謐で穏やかな人が、いったん楽器持つとどっか狂気感じさせるっていうの…。西村さんも青山さんも夏秋さんもそう。くーダメだ…。

 

5日経って、経っても全然冷静になんかならなくて、いまだ興奮のさ中なんだけど、ま少し時を経て思うのは、このもの凄いバンドサウンド、やっぱり西村さんの曲あってのことなんだよなーってこと。(これ、ジャック達のライブのときも一色進さんの曲について同じように感じたのだけど。)西村さんの曲は、日本の多くの音楽に見えていないような遠い場所まで、見ているような気がする。メロディラインも、詞も、サウンドも、ものすごく高いところに届こう届こうとしてる作品のように思う。西村さんの思い描いてる音の完成型は、とてつもなく遠くにあって、そういう意味ではいつもチャレンジング。その、理想の音楽を求める果てない果敢さに、バンドサウンドはほだされるんだって気がするんだ。曲自体が遠い平野を目指しているから、バンドはそれに付き合って遠くに行かざるを得ない。そして、この夜のバンドメンバーは全員が、果敢な旅を楽しむ余裕と足腰の強さを持っていて、「よっしゃ、行ってやろうじゃないの、アンタの言ってるその場所まで!」って言って、西村さんの曲とともに、とんでもない遠くまで駆け出した。私たちを、見たこともないような場所まで連れてってくれた。西村さんの意気に、音が応えると、こんなスゴイことになっちゃうんだ!

 

ああ、バンドっていいなあ。バンドサウンドっていいなあ。西村さんはソロアーティストだけれど、音は間違いなくバンドのものだ。このメンバーがひとつの場所に集まる機会は、そう作れるものじゃないと思うけれど(だからこそ今回のライブが貴重だったわけだけど)、こんな音が日本のここにあるってこと、私はせめてドームを埋める人数分ぐらいには知らしめたい!と切実に思ったよ。こんな素晴らしい音を生み出すミュージシャンが、ここにいるってことを。

 

今回のメンバーでのライブをまたすぐ見たい、というのは無理な願いとしても、せめて1曲でも、形にして出して欲しいなあ。できれば今回やった「スノーバード」みたいなの。デッドみたいな気味悪い(←ホメ言葉ね)インプロからダラダラッと始まって、恍惚まで15分、そんな悶えちゃいそうなヤツ、このメンバーでぜひ~~~!!

 

 

ああほんと、私、このライブのこと一生忘れない。忘れられない。

 

 

*『ヘンリーの憂鬱』西村哲也