月夜のドライブ

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タマコウォルズ、西村哲也@赤坂グラフィティ

画像もう10日も経っちゃった…。遅きに失してるけど、メモだけはしておこうね。赤坂の地盤が崩壊するかと思ったあの夜のライブ。

 

2007年9月15日(土)@赤坂グラフィティ
『第3次マダラ紛争』
出演:
タマコウォルズ(西池崇 EG,Vo、鳥羽修 EG、河野薫 Bass、中原由貴 Dr、高橋結子 Per、佐藤友亮 Keyboards)
西村哲也バンド(Bass 大田譲(From CARNATION)、Drums 夏秋文尚、Keyboards 伊藤隆博)

 

メンツを見れば見るほどタメイキ。この2バンドが対バンすると聞いたときある程度は予想してたけど、その予想をはるかに超えた、およそ体験したこともないような壮絶な音の現場だった。ライブの途中でタマコ西池さんが「今日は日本屈指のミュージシャンがここに集まってますよね…オレ以外は(笑)」みたいなこと言ってたのだけれど、もちろん西池さんも含め、これだけのミュージシャンが集結すると、こんなおそろしいことになっちゃうのか…と。

 

西村哲也バンド

最初に断わっておきますが、スミマセン、私ドラムの夏秋さんばっか観てたかも…。いや、8割夏秋さんで、6割西村さん、4割大田さん、4割伊藤さん、ぐらいの感じかな…。って足して10にならないけど…。とにかく、持てるリスナー力総動員で喰らいつく。このバンド、ひとりひとりの演奏がそれぞれ独自におそろしいことになってるから、どっからも一瞬も目を離せなくてほんと困る。最初は「キッチン・ミュージック」、わりとゆるりとした感じで。…と、イントロあたりでは思うのだけど、それがまったくゆるりとしたまま終わんないのがこのバンドの特徴で、ふと気づくと、おそろしくテンション高い演奏に突っ込んでる。みんな平静な顔して、プレイすごすぎ。

 

なんて思いながら聴いてたら、2曲めで「砂のコリン」!ヤバイ…。前回も相当ヤバイ思いしたけど、また。カウントから夏秋さんのとろけそうに色っぽいリムショットが響いて、大田さんの太く重いベースが体を沿わせ、そこに伊藤さんの夢のように繊細なピアノの旋律が降ってきて、西村さんの深くて甘いギターのフレーズが絡んでくる…、このイントロの展開の色っぽさ、とても言葉じゃ説明できない…。そして、ヴェルヴェットのようにそっとやわらかに始まるこの曲が、あの壮絶な間奏に突入するなんて!熱っぽくぶちまけられるような伊藤さんの鍵盤の音、ヒートアップしていく大田さんのベース、ひそやかさの底に限りない狂おしさを見せる夏秋さんのドラム、そして、西村さんの白熱のギターソロ!もうこの時点で、完璧に崩壊…まだ2曲めなのに。この曲でつくづく、このバンドのおそろしさ感じたな…。4人が4人とも好き勝手に弾いたり叩いたりしているように見えるのに、そのそれぞれにとんでもなくセンスのいいフレーズが、彼らの手から離れた途端、空中で有機的に絡んでいく感じ。それはまったく、ふつうには起こりえない奇跡、のよう。客席にいた青山陽一さんが日記で「ちょっと特別なテレパシー使ってるような演奏だった」とこのバンドについて感想をもらしていたのは、まさにこのことなんだと思う。ふう…信じられない…。

 

あとはもう心臓バクバク、駆け足のまま突っ走る。「ひまわり」の西村さんのリズムギター、本当にいい音してた。それから今や恒例となった大田さんボーカル曲では、ナント、タマコ鳥羽さんが呼び入れられて、カーネーションナンバー「蜘蛛のブルーズ」を。鳥羽さんのギターがトロ~ンと鳴っただけで、鳥肌。これはヤバすぎた…。まさにカーネーションの音、なんだもの。でもその後ろで控えめに鳴る西村さんのギターもすっごくよくて、後半の西村×鳥羽のギターのかけ合いは贅沢すぎて身悶えした。それから、この日の西村さんバンドでうれしかったのはライブでは初披露の「モンキー・ラブズ・イット」が聴けたこと!太くうねるこの曲、ツワモノミュージシャンたちの腕前と息の合いっぷりが心ゆくまで楽しめた。最後の「エレクトリック・ラバー」での、前回パターンを踏襲したメンバー紹介もおかしかったな、ピタッと演奏中断してひとりひとりお辞儀しちゃうやつ。このアンチ・ミュージシャンっぽさ、西村さんバンドらしいよね。

 

というわけで西村さんバンド、全10曲、だったかな。ワンマンと比べるとちょっぴり物足りなさを感じてしまうのはしょうがないよね~、ほんとは「HEY HEY」も「スノーバード」も聴きたかったんだけど!それにしても、京都から単身やってきて、前日リハと当日リハの2回きりで(しかも西村さんの後日談では前日リハは伊藤さん不在だったらしい)、この圧倒的なバンドサウンドを構築できる西村バンド、つくづく信じ難い。もしこの4人が、たとえば2カ月にいちどでもパーマネントなライブをやるバンドだったら、どんな恐ろしい域に行っちゃうんだろう…、と妄想したり。

 

タマコウォルズ

2年前にいちど観ているけれど、そのときは高橋結子さんパーカッションじゃなかったし、キーボードの佐藤友亮さんも加入してなかったし、だったので、今回はもう別物バンドのつもりで観始めた…んだけど、別物どころか、日本の音楽シーンで気軽に「バンド」なんて呼ぶものをはるかに超越した別格ぶりに度肝を抜かれる。もう、なんだか、スゴすぎて、おかしくてしょうがなかった。この人たち、どうかしてるんじゃないの?って思ったもん(笑)。だいたい、ホーンが入ってるわけでもないのに6人もいるっていうムダに贅沢な(ホメてるよ)メンバー構成が今どき珍しく、「6人バンドなんてムーンライダーズぐらいしか観たことないなあ」なんて思いながら眺めてたのだけど、6つもある楽器の音が少しも余ってる感じなく、ドスドスとツボに入ってくる。いやそれにしても、鳥羽さんのギター…というか、鳥羽さん…カッコよすぎた。鳥羽さんが弾いてるのをこんなに近くで観たのも初めてだったし、いつもわりと淡々として見える鳥羽さんが完全に“イッちゃった”感じがあって、なんか色っぽくてドキドキしたなあ。西池さんと鳥羽さんなんていう達者なギター×2の絡みに、ギタリスト好きの私が参らないわけもないし、ドラム中原さんとパーカッション高橋さんのオトコマエな叩きっぷりには開いた口がふさがらず。

 

最初のほうのナンバーでは、「こんなド濃くてド重くて、日本人の100人に1人ぐらいにしか口に合わないワインみたいな音楽、よくも堂々と演るよなー」と、もうウレシくてウレシくてニヤニヤしちゃってたんだけど、後半、重量級ノンストップエンジン全開疾走のような演奏にいたっては、あまりのおそろしさに声も出ず。マジ死人が出てもおかしくないと思ったな…。

 

■アンコール

西村さんバンドとタマコウォルズの2連奏があまりに許容量超えた体験だったので、アンコールに何をやって欲しい、とか思う余裕がすでになかったのだけど、タマコの中に西村さんと大田さんが立つ図だけで、好きなミュージシャンだらけ過ぎてうっとり。そしたらあろうことか、そこに青山さんが呼ばれちゃった。前一列、大田、西池、青山、西村、鳥羽…だよ? これまでのライブ観戦史上でも、個人的「ギタリスト祭り」の図は何回かあったわけなんだけど(カーネーション@九段のときとか、シネマ&堂島くん@キネマ倶楽部のときとか)、好きなギタリスト濃度で言えば、今回のがいちばんだったかも…。大田、青山、西村、ってさりげにグランドファーザーズになっちゃってるし。でも、思ったほどそのことにブッ倒れなかったのは、本編ですでに倒れ尽くしていて、倒れる余力がなかったからなのだ。鳥羽、西村、青山…、とつなぐギターソロなんて、贅沢すぎたな~。それぞれが、いかにもその人らしいギターを弾くんだよね。西村さんのブチ切れた弾きっぷり、最高だった。

 

■しみじみ

ライブ帰りの日のため息まじりのメモにもちょっと書いたんだけど、この対バンを実際に観る前までは、「境目がよくわからない」(笑)メンバー同士ということもあって、なんとなく似た雰囲気、似た音、を想像してたのだけど、実際こうして聴いたら、まったくちがってたというのが(当たり前だけど)うれしい発見だった。埃っぽく泥臭いサザンロック直系のタフな音を、緻密さに裏打ちされた高いレベルで問答無用とばかりにぶちかますタマコウォルズ。一方の西村さんにもそういうアメリカ南部的な要素は大いにあるのだけれど、タマコと並べて聴くと、西村哲也バンドのほうはもっとソリッドでサイケデリックで尖鋭的で、シニカルなイギリスの風が吹いてる感じ。ああ、おもしろいなあ。これほどの個性はバンドの相当の力量のもとにしか宿らないし、そんな珠玉のバンドサウンドを立て続けに並べて聴けるなんて、こんな贅沢ない。

 

あともうひとつ、月ドラなのでどうしても、ドラマー夏秋さんを定点観測(笑)してしまうのだけれど、タマコウォルズとの対バンが火を点けたせいもあったのか、この日の演奏はいつにも増して凄みを感じたな…。そしてつくづく、夏秋さんのドラムって独特だな…と思う。なんというか、孤島でものすごく特異な進化をとげてしまった生きもの、のような…。西村さんのときとジャック達のときの夏秋さんは、たぶん他のどこで叩くよりも自由に野放図に叩いていると思うけれど、ここにいたると彼のドラム、もう、他の誰も寄せつけない孤高の地まで駆け上がってしまう。こんな場所が、まったく怖くないんだな…、夏秋さんって。そこに、彼の空恐ろしさというか、穏やかに見える表情の下の本質的な過激さがある気がする。

 

…と、遅きに失してるわりには、ずいぶん長いな(笑)。変なタイミングになっちゃったけど、すばらしいライブを見せてくれたすばらしいミュージシャンたちに最大の敬意と感謝を送りつつ、アップしときます。

 

*西村哲也バンドのみセットリスト

01 キッチン・ミュージック
02 砂のコリン
03 幸せな人生
04 GOOD BYE
05 ひまわり
06 グレートフル・ハウス・リミテッド
07 蜘蛛のブルーズ
08 モンキー・ラブズ・イット
09 なんでもいい
10 エレクトリック・ラバー