月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

色気と文学に撃たれる

幼児持ちの私にとって「ライブに行く」というカードは数に限りのある弾丸のようなもので、時機と条件が揃ったときに「すわ!」と取り出して、狙いすまして使わねばならない、大切にね。一昨日その貴重な弾丸を1発、当日券に換えた。カーネーションの企画ライブ「気楽にやろうぜ その弐」at高田馬場CLUB PHASE、ゲストはザ・コレクターズ~!

 

前回と同じように直枝さんの「硬い」挨拶で始まったライブ(裏でコレクターズが「硬い!」とツッコんでたそう)、最初に迎えるはザ・コレクターズ。コレクターズは過去激しくではないがちょっと好きで、CDも何枚か持ってて今なおヘビロ曲もあるのだけど、ナマで見るのは実に15年ぶりだー。でも加藤ひさしさん、変わってないッ。あの独特の高音の伸びも、ペラペラなたたずまいも。ギターの古市コータローさんの少年ぽさも昔のまんま。そして相変わらずイカしたビートナンバー放ちまくる、カッコイイ~!カーネーションとはキャリアも歳もほぼ同じと言ってたけれど、こういう人タチがこうやってロックし続けてくれてるのは、そしてそれを見られるのはほんとウレシイ。久々に聞く加藤さんの声、やっぱイイなあ。問答無用のポップなビート&メロの掃射、このバンドこのまま67年のロンドンに落っことしてもOK、わたりあってけるだろうな、なんて思う。

 

途中、直枝さんを呼んで「Nick!Nick!Nick!」を一緒に歌うと、その「キャリアも歳も同じ」ふたりの、個性の違いがスゴク鮮やかに見えた。チープな印刷のアメリカのカートゥーンみたいな加藤さんと、どっか岩波の文庫本みたいな直枝さん。どちらがいい悪いというんじゃなくて、他の人と一緒にやっても絶対に混じりあえないぐらいの強烈な個性を持ってるからこそ、ふたりともここまでやってこれてるんだろうな、って。生きてきた時間がそのまま、声にスタイルに音楽に出てる。言うのは簡単だけど、濃く熱くせつなく人生を過ごしてきた人でないと、なかなかそれは出ないもん。カッコイイふたり。

 

来年1月発売のアルバムからの新曲(「愛してるというより気に入ってる」って、すげーいいタイトルだよね)などもまじえつつ、コレクターズは1時間弱演ってセッティング替えへ。この休憩のあいだも、前回と同じようにするするとスクリーンが下りてきて映像を流してた。かなり初期と思えるPVの加藤ひさしさん、カワイかったー。

 

直枝さんに撃たれたくて右前方に移動して、カーネーションに突入~!ああー直枝さんの前髪色っぽーい。いきなり爆音。3人カーネーションになって後ろにもう2人目のギタリストはいない、その崖っぷちみたいな場所で、直枝さんはよく弾きよく歌うなーと涙が出そう。大好きな「Ooh!Baby」次のアルバムに入るというライブタイトルの「気楽にやろうぜ」そして「Angel」、ほんとに美しいメロディばかり。直枝さんと大田さんの会話は、かみ合ってるのか合ってないのか定かでないまま曲と曲のあいだをうろつき、矢部さんはいつもながらにひたすら寡黙。なくせに、ひとたびギターとベースとドラムが音を出し始めると、おっそろしいくらいのカタマリになって直撃してくる。うーたまらない。「ダイナマイト・ボイン」「The End Of Summer」「やるせなく果てしなく」、ああ~そんな曲連続して歌われたら私ヤバい…。ほーんとオトコマエ度ナンバーワンなバンドなんだ、カーネーションって。直枝さんのチャーミングな声と仕草と、その裏にある文学と哲学の匂いに(なんて感じるの私だけか)、もー抗いようもなく倒れちゃう。どうしよう…。

 

アンコールの拍手を受けステージに再登場したカーネーション、「スペードのエース」で私をメロメロにしたあと、さらに加藤ひさしさんを呼ぶ。すげーよ、キラキラ金色スパンコールのシャツに「ペ・ヨンジュンを意識した(本人談)」サングラス、本編よりハデなそんな服どこで買ってくるんだ加藤さん。で何をやるのかと思ったら「愛のさざなみ」~!いやー加藤さんの歌がねっとりとイヤラシクて、この曲に合ってたなあ。イイ意味で歌謡曲的・浜口庫之助的なんだよね。直枝さんのギターも堪能。そして最後はキンクスの「Victoria」でしたッ。

 

拍手は鳴り止まなかったけど退場のBGMも音量が上がった客電もついた、と出口を向きかけたら、なんと楽屋姿でステージに出てきてくれた両方のメンバー。「夜の煙突」をブチかましていきました。15年以上前にこれ聞いてたときは、まさかこんなに長くたくさんの人に愛される曲になるとは思わなかったな。詞も曲も、媚びるようなところはひとつもないんだけれど、どっか人を強く魅きつけるんだよね。鈴木慶一さんも「銭湯に行くときの鼻歌は『夜の煙突』で、鼻歌は私にとって名曲ということ」と書いてたし。

 

思えば、ずっとカーネーションにご無沙汰していた私が、久しぶりにナマの彼らを見てガラガラと崩れ落ちるようにふたたびこのバンドへの恋心をつのらすことになったのは、3月、鈴木博文さんがゲストだったこの「気楽にやろうぜ その壱」のせいだ。カーネーションは、CDで聞くだけでも十分魅力的でマイっちゃうのだけれど、ライブには、別のとんでもない何かがある。音のバランスが、とか楽器のチューニングが、なんていうこと飛び越えて、そこにいる人を強引にどっかにさらっていっちゃうような魅力。それは間違いなく、ロックバンドの仕業だ。できるなら、何度でも撃たれたい。