月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

日本シリーズと「ただいま。」

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この季節になってプロ野球の日本シリーズが始まると、
私は毎年きまって86年の秋と、
アッコちゃんのアルバム「ただいま。」を思い出す。
このアルバムの発売自体は81年なのだけれどね。

私が大学生だった86年の秋、
パ・リーグから日本シリーズに出ていたのは
今年と同じ西武だった。初戦を見ながら、私は母と
「どっちが優勝するかねえ」「西武じゃないの」などと
他愛もなく予想していたものだ。

でも、いろいろなことをいろいろに予想はしていても、
シリーズ初戦を元気に見ていた人が
終戦のときにはこの世にいない、なんてことまでは
なかなか考えつかないものだ。
娘の私も驚いたけど、死んだ母本人も腑に落ちなかったに違いない。
これだけの動脈瘤があれば自覚症状はあったはずだと、
レントゲンを見ながらお医者さんは言うのだけれど。
救急車でICUに入って、一週間だった。

高校3年生だった弟は、おかげで修学旅行に行きそびれた。
葬儀の後に、友だちから奈良と京都のお土産が山のように届いたっけと、
今でも弟と思い出して笑う。

入院、お通夜、そして葬儀まで、
ありとあらゆる親戚と友人がすべてを仕切ってくれて
私と弟は何もすることがなく、
ただありとあらゆる親戚と友人からの
料理や手土産をすすめられるばかりだった。
慰める言葉にも困ったとき、人はとにかく「食べなさい」と言うのだ。
私が逆の立場でもきっとそうするだろう。

葬儀が終わると、ありとあらゆる親戚と友人は去り
家族のひとり減った、非日常の日常が戻ってきた。
父は会社へ行き、弟は学校へ行き、私は授業のない午後
家で洗濯物をたたみながら日本シリーズをテレビで見ていた。
プレイヤーではアッコちゃんのこのアルバムが回っていた。
第一戦を一緒に見ていた人が今ここにいないという不思議と
家事なんかしたことがない自分が今靴下をたたんでいるという不思議と
このアルバム特有のカラッとした不思議な感じが結びついてしまったのは、
勝手なことだけれど、そのときなのだ。

 

*「ただいま。」矢野顕子

思い出と切り離しても、大好き。名盤。湯村さんのジャケ絵のブッ飛び具合は今眺めてもスゴイ。