月夜のドライブ

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サイケデリック、ふたたび

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洋楽にあまり詳しくない私が持っていた「サイケデリック」のイメージって、そりゃもう日本オリエンテッドな、かなり歪んで貧しいものだったんだ、と今になって思う。何というかサイケデリックというと、国分寺か高円寺あたりの古着屋で買ったツイッギーチックな60年代デッドストックワンピースを、ちょっと太めのおネーちゃんがパッツパツに着こんでファントムギフトのライブに行く感じ…。もうこれが全然ダメな世界だったのだ、過去の私。(ファントムギフトに罪はないですよ、念のため。)「全然ダメ~」と思うのが嫌だから「サイケデリック」と名のつくものになるべく近寄らないようにして生きてきた。(コレクターズのライブはちょっと行ったけど。でそこにいる古着ネーちゃん見てやっぱ「全然ダメ~」と思うんだけどさ。)そのイメージが「サイケデリック」の解釈の1パターンに過ぎないということは、最近やっとわかったのだ。

 

過去の私だったら絶対避けて通っただろうこんなアルバムも、だから今の私は買ってみたりする。ジェファーソン・エアプレインの「Surrealistic Pillow」。サイケデリック・ムーヴメントの申し子のように言われる67年の作品だけど、でもこれ、サイケデリックって言葉で語らないほうがいいんじゃないの?って思うぐらい、フツーにいいアルバムだ。全米で大ヒットしたという「Somebody to Love」や「White Rabbit」は確かにサイケデリックといわれればそうかなあと思うけど、これはメインボーカルを女性のグレイス・スリックがとっているからかなとも思う。パンチがあっていい声なんだけど、うーん、ちょっと張りつめすぎてるとこが私にはストライクゾーン外、ごめんなさい。で、アルバム全体聞いてみると、ものすごく良質なフォーク・ロックなのだ。1曲目の「She Has Funny Cars」の、ドラムから始まってギター、ベースが二重三重に絡んできてボーカルが切り込みコーラスが重なり…っていう最初の30秒なんか、ポップスの王道の美しさを堪能できる。そのあとすぐにリズムギターのリフをバックに転調するあたりのひねくれた感じもたまらない。サイケデリックってきっと、過去の私が感じてたような表層的なファッションのことじゃなくって、こういうアイデアをどんどん世に問うていくような、アグレッシブな空気そのもののことだったんだろうね。ムーヴメントになった途端、精神が広くファッションとして消費されていくのも仕方のないことで。

 

甘いメロディとハーモニーの「My Best Friend」や「How Do You Feel」、重く威勢のいいギターロック「3/5 of a Mile in 10 Seconds」、アコースティックギターの音色が倒れそうなぐらい美しいインストゥルメンタルの小品「Embryonic Journey」…聞いていると、サイケデリックという印象よりも、良きアメリカの伝統をしっかり受け継いだウエストコーストロックの良心を感じるんだよなあ。

 

遅すぎた出逢いを嘆くよりも今は、大人になってからふとしたキッカケで食わず嫌いが直る、目からウロコの体験を楽しもう。相変わらずラッキョウ福神漬けは食べられないんだけれども。

 

*「SURREALISTIC PILLOW」Jefferson Airplane