月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

博文さんのライブアルバム

画像

青山さんが歌った「Fence」の話(→記事)なんかをしてからというもの、ずっとこれを聴いてしまっている。鈴木博文さんの2枚組ライブアルバム『HIROBUMI SUZUKI & GREAT SKIFFLE AUTREY』。私が考える「ロック」そのまんまがここにある。他の何にも替えられない、すごく大切なアルバム。

 

まずね、ここに私はブッ倒れるわけです、「GREAT SKIFFLE AUTREY are 青山陽一(g) 西村哲也(g) 青木孝明(b) 伊藤隆博(key) 川口義之(per,sax) 夏秋文尚(drs)」…うはー。何ていう贅沢なバッキングメンバーなんだ…。青山さんと西村さんと青木さんだよ?伊藤さんと川口さんと夏秋さんだよ?(それは見りゃわかるんだが。)インナースリーヴにこの6人の写真が載ってるんだけど、もー鼻血出そうにカッコイイ。これだけのために4,000円出してもいいと思うよ、私は。あ、もちろん主役の博文さんもカッコイイんですが。ちなみに「AUTREY」というのは湾岸スタジオのある「大鳥居」のコトだよね、たしか。

 

2000年5月18日の渋谷クラブクアトロでの博文さんのソロライブを収録したもの。前にも書いたけど、このときこの場所にいた人のことが、私は心底うらやましくてたまらない。私の何か別のプレミアム体験(地元のスーパーで大滝詠一さんを見かけたとか、山下達郎さんにサインをもらったとか、松本隆さんと初めてお目にかかったときニッコリ微笑んでもらったとか…)と分けあいっこしよー。って、関係ない人にはどうでもいい体験ばっかりか…。話がずれた、まあともかく2000年といえば私は二人目がお腹に入っていたから、知っていたとしてもクアトロスタンディングは無理だったかもな。でも、ありがたいことに、こうして何度でも聞けるCDという形で、その場にいなかった私も至福の時間を手のひらに包むことができる。

 

実に22曲を収めたこのアルバムは、まさにその、私の大好きな「フェンス」から始まる。西村さんのマンドリンの旋律に、博文さんのアコースティックギターがかぶってきて、夏秋さんのドラムが入り、そして青山さんのエレクトリックギターがメロディを奏でる…。もう、ダメですよ、これだけで。イントロだけで泣きそう。博文さんとグレート・スキッフル・オートリーの演奏は、人目を引きつけるような派手さはないけれど、無骨で余計な飾りがなくて、これこそロックの真髄だーーーと思う。もーね、ほーんと男っぽくてカッコいいんだ。参っちゃう。「Lonely Man」の演奏なんかこれオールマンだ!と思うよー(つい最近オールマンを知ったばかりの私だが)。ロックのアンサンブルって何、ってことが、このCDの中にどさりと無造作に投げ出されてる。

 

出色は「朝焼けに燃えて」。アルバム『無敵の人』に収録されているオリジナルバージョンでの、坂東次郎さんのギターも、そりゃもう身悶えするほどのクレイジーさなのだけれど、この『HIROBUMI SUZUKI & GREAT SKIFFLE AUTREY』で繰り広げられる、後半5分に及ぼうかというインプロビゼーションったら、発熱しそうな凄さ。西村さんのどっかタガが外れたギターソロと、青山さんの端正でメロディアスなギターソロと。ああ、グランドファーザーズバカだった(いや、現在形かな)私が、これで泣かないわけないじゃん…。昔も今も、私のココロを動かす響きって、変わってないんだ。ミュージシャンたちの魂がこもった音が互いに絡み合って、とんでもない場所にまで上りつめていく演奏。気が遠くなる。

 

あとはね。「Breath」。この曲だけは一転、博文さんが自分のエレクトリックギターで歌うだけ。それが、ものすごくカッコよくってね。博文さんのギターは、いつもながら粗くて、どこかいいかげん。でも、そこが私は大好きなんだ。まあ、白井良明青山陽一西村哲也、坂東次郎、鳥羽修…なんていう錚々たるギタリストが周りにいたら、何も博文さんがギター巧くなることないもんね。ナンテ。博文さんのギターは、博文さんそのままで、高みなんか目指さずに、いつも路地裏をうろうろしてる。世間の足どりと関係なく、動く風の中から、澱む海の中から、つかみ出される言葉。そして、粗っぽいその声の奥底に宿る、ちっぽけな、でも果てしなく貴い真実に触れることが、私のもっとも大切な瞬間なんだ。

 

きみの白い胸は暑苦しくて息ができない
慣れたキッスをぼくは繰り返すハイウェイ
いかれた朝だ
「フェンス」

 

いかれてるよね。どうかしてる。そんな彼の音楽に惚れてる私もね。

 

 

*「HIROBUMI SUZUKI & GREAT SKIFFLE AUTREY」鈴木博文