月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

好きだー「ウォーターメロン砦」

画像

西村哲也さん(ユニット名「ウォーターメロン砦」)の新譜『ウォーターメロン砦』をずっと聴いている。おかげで、おべんとうのいり卵をかき混ぜていても「♪さってさて誰も知らない~ウォッターメロンのとりっで~」、洗濯機のふたを開け閉めしては「♪朝からタローは眠くてイっスから落ちる…」という日々。キャッチーなメロディが私の頭の中に住みついてしまった。

 

自主制作盤などで既に発表もしている曲を録音しなおした、7曲入りのミニアルバム。ということで、肩にチカラの入らない感じが心地よい。風通しのよい場所を、気持ちのいい空気が吹き抜けていく。でもね、ここがスゴイとこなんだよ。肩にチカラ入れずに、こんな音楽やっちゃう人が、ここにいるってことが。

 

西村さんの人柄そのままに、人をムリヤリ振り向かせるような派手さや強引さがあるわけではない音楽。でも、ひとたび立ち止まってその音の泉を覗きこむと、そこに映る色数の多さや複雑さにうっとりしちゃう。60年代後半から70年代のエッセンスを湛えたこんなグッドミュージックを、2005年のリアルな響きとして聴けるシアワセ。たった2日で録音したらしい(西村さんや夏秋さんの日記より)バンドサウンドも、うれしい。伊藤隆博さんのプログレ風味あふれるオルガンとか(あ、またしてもプログレをよく知らないままこの言葉使ってますけど)、夏秋文尚さんの主張しすぎないトコトンドラムとか、大好きなのだーーー。元・花*花の児島いづみさんの、かわいくて華やかなピアノやコーラスも色を添えている。

 

でねー。やっぱり…私にとっては、このギターの響き、なのですよーーー(泣)。グランドファーザーズが青春で、鈴木博文さんのソロが人生の指針で、という私のような人間にとって(つくづく特殊な人間だ)、西村さんのこのギターは、他の何にも替えられない。もう身体の中に入っちゃってる血液みたいなものなのだ、大げさに言えば。例えば「エレクトリック・ラバー」で聞けるギターは私をぶっ倒れさす典型で、小気味よいフレーズがポップさを支えているかと思うと、後半クレイジーに壊れていく。もー、これが、西村さんのギターなんだよねー。おとなしそうな顔をして、どっかタガが外れてるんだよ。危険でしょ、これ。んもー悶える。

 

そして西村さんが素晴らしいのは、そのギターの腕前や音楽への深い造詣を、あくまでポップミュージックの成分のひとつにしてるところ、だと思う。このギターが弾けて、でもギター自慢にならない音楽家ってスバラシイ。私の好きなギタリストはみんなそうですが。あーもう素敵ステキ!(←少々コワレ気味…。)それと今回のアルバムで強く感じるのは、popholicさんも書いていたけれど、西村さんのボーカルの魅力。今までにないぐらいのガッツを声の中に感じて、目を見張る。こりゃどう見てもギタリストの片手間シゴトではない、正真正銘のロックアーティストのアルバムだよ。

 

さあこうなると、いやがおうでも9月のバンド編成レコ発ライブが楽しみになっちゃう…。っていうか楽しみすぎて重圧さえ感じるんですけど。なんて筋ちがいな重圧なんだ…。90年ごろ、グランドファーザーズのライブのためにいっつも渋谷ラ・ママに開演前ずっと早くから並んでた20代の私。そのときと同じかそれ以上の興奮を、今もこうして音楽から受け取ることができるなんて、30代や40代も昔思ったほど悪くない。というより、ずいぶん輝いている。それは、いろんなものと格闘しながら今もこんな音を届け続けてくれるアーティストがいるからなんだ。

 

*「ウォーターメロン砦」ウォーターメロン砦