月夜のドライブ

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本多劇場と関内ホールで観た!ヨーロッパ企画『九十九龍城』

問答無用におもしろい遊園地のアトラクションのようなお芝居を楽しんだ後に、「めちゃめちゃ楽しかったー!」以外の感想をクドクド書くのも野暮なような気がするのだけど、少しだけメモっておこうかなって思う。ヨーロッパ企画『九十九龍城(きゅうじゅうくーろんじょう)』。2021年12月の栗東プレビュー公演から始まった長いツアー、私は1月20日本多劇場で観て、どうしてももう一回観たくなり(この時点で本多劇場分は完売)、関内ホール2月26日のソワレ、ほんとの千穐楽公演のチケを取って観に行った。

 

ちなみにヨーロッパ企画は京都のお友達経由で知り、まだ3回観ただけの初心者!2017年に『出てこようとしてるトロンプルイユ(第36回公演)』を、2018年に『サマータイムマシン・ブルース(第37回公演)』と『サマータイムマシン・ワンスモア(第38回公演)』を(関内ホールでマチソワ連続で)観ていて、2019年の公演は見逃してる。

 

ヨーロッパ企画第40回公演『九十九龍城』
■作・演出:上田誠
■音楽:キセル
■出演:石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、藤谷理子、本多力/金丸慎太郎、早織

 

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まず驚いたのは、目の前に立つ九十九龍城のセットのまさに「魔窟」のような入り組みっぷり!そして出演者がたった12人だとは信じられないような人の密っぷり!ひとりが2役3役以上を兼ねていて、その人数が複雑なセットの中を上へ下へ右へ左へ表へ中へと自在に動き回る。役者さんたちの運動量がそのままお芝居の熱量をグンと上げていた感じ。誰がどれをやってるのかも判然としない慌ただしい混沌っぷりも楽しかった!右上の麻雀部屋なんか、次々とどかどか人が集まってきて、あれ、さっきまで左下にいた人とか下にいた人とかいない!?って。(ちなみに、ヨロ企初心者ということもあって役者さん自体をちゃんと認識できてなかったためにわからなかったのが角田さんと土佐さん、意外すぎて最後までわからなかったのが本多さんがやってたカタコトしゃべりのサプライヤー。酒井さんは、遠目ではわからなかったけど醸し出される“あの感じ”で「酒井さんだ!」とわかった。)

 

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せわしなく動く人、大きい声でしゃべりあう人、一斗缶をガンガンたたく音、にぎやかでパワフル。香港映画に特別詳しくないけれど、メンバーで事前に資料の香港映画などを見て芝居に取り入れたというスキンシップの多さ…石田さん演じるブローカーが頭をわっしゃわっしゃしてくるのとかも(ただでさえ顔立ちが暑苦しい石田さんがそれをやるからさらに)、うっとおしくて元気が出た!あとは諏訪さん好きなので、左上の肉屋でのやりとり好きだった。西村さん演じる奥さんとのやりとりも絶妙だったし(ああいうディスり合いを延々やってる夫婦っていいよね~、愛を感じる!)「ぶたぶたぶた~人間~!」ってあやすのくだらなすぎてサイコーにおかしかった。

 

そこまででも仕掛けありまくり(特殊技術で中を覗いているっていう設定からして)だったので、まさか後半でさらにあんな大転換があるなんてほんとうにビックリ、もうそろそろ終盤かなと気を抜いてたジェットコースターが今までにない加速つけてこれまで以上の最高地点に駆け上がるような心地した。あれ(香港映画の世界)とそれ(テレビゲームの世界)をひとつの芝居の中でやってしまおうという上田さんの果敢さ!!!!世界のフェーズが変わると、無為にぶらぶらしてた謎の看板民(土佐さん)やパイフォン(偽iPhone)工場の工場長(酒井さん)や肉屋の奥さん(西村さん)が、急にイキイキ輝きだすのも笑ったし、ちょっと夢があったな。

 

3次元の生の舞台と2次元の映像が絡み合うのだけれど、それも、「うまいね」とか「上手に使ってるね」とかいうのをはるかに超えた必然性と切迫性があって、そのはざまで必死で闘っている、2次元なのか3次元なのかよくわからない目の前の人たちに、すこぶる感情移入してしまう。九十九龍城にいるみんながみんな、失敗を重ねて落ちぶれて裏街道で必死に小さき人生を生きているのだけど、そのダメな登場人物全員がいとおしい。ラストで、映画のエンドロール風にリアルな役者たちがNG集を演じるのもその遊び心にニヤニヤしたし、もっと言えば、3次元の役者が2次元を模したNG集を「生身で演ずる」ことが、エンターテイメントに身を供するという誇らしい宣言にも思えてグッときてしまった。

 

九十九龍城に迷い込まされた2時間、おもしろかったし楽しかったし元気が出たなあ。この扉を開けたら何が出てくるんだろう?次の部屋では誰が待っていてどんなことが起こるんだろう?という底知れぬワクワク感は、まさにロールプレイングのゲームのようだったし、体験型アトラクションのようでもあった。肉屋の奥さんだと思ってたら実は魔法使いだった!みたいに、自分も勇者(土佐さん)から突然指差されて何かの役割を振られるんじゃないか!?というドキドキするような巻き込まれ感さえあった。

 

本多劇場で買ったパンフ収録の対談で上田誠さんが、「2年ぶりの本公演なので、演劇のよろこびというか『絡み合って笑って』みたいな演劇のおもしろさ」をやりたかった、という意味のこと(超大意です)を話していたんだけど、なんか、人がいっぱいいる暑苦しさ、密なコミュニケーションのおもしろさ、そこがすっごく楽しかったなって!そして、(これもパンフかインタビューで読んだんだと思うけど)たしかにふと気づくと今私たち、知ってる人知らない人がわいわいとどっかに集まってどうでもいい話をする、っていう形のコミュニケーションを、コロナ禍以降しなくなって久しい。必要や目的があればリアルで集まってマスクをして話すけど、どうでもいいことを話すためには集まらないし、知らない人が混じってる集まりはちょっと怖いような気もしちゃう。だから生の演劇が、とりわけヨーロッパ企画が繰り広げてみせるような他愛のない会話の集積が、香港を舞台に無駄にパワフルな人々の生活を描いたお芝居が、いつもにも増してめちゃめちゃ楽しかったんだなーって、今思う。

 

関内ホールで観た公演は大千穐楽だったので、役者さんたち、何度も何度もカーテンコールに応えてくれた。最近見ているお芝居どれにしてもそうなんだけど、カテコで舞台に一列に並ぶ役者さんたちの、眩しいほどに輝く表情を見ていると、この困難な時期に渾身でお芝居を届けてくれることの貴重さに泣けてしまう。劇作家や役者さんたちが、一番好きで得意で他の誰にもまねできない「芝居」という仕事で私たちを笑わせたり驚かせたりしてくれて、キラキラ満足そうに顔を輝かせている、やっぱりそんな世界に住んでいたいな…と思う。

 

 

オープニング映像もカッコよかった。キセルの音楽も不思議でせつなくてよかった。実際に2回足を運んでしまうお芝居ってそんなにたくさんあるわけじゃないので、いろいろな特別な引力があったんだろうな。まだ全然書き足りていないけど、思いついたらまた追記します!

 

 

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ヨーロッパ企画第40回公演『九十九龍城』

■作・演出:上田誠
■音楽:キセル
■出演:石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、藤谷理子、本多力/金丸慎太郎、早織

PLANNING STAFF
作・演出=上田誠 音楽=キセル
舞台監督=大鹿展明 演出助手=山田翠 美術=長田佳代子 照明=葛西健一 音響=宮田充規 衣装=清川敦子 ヘアメイク=松村妙子 映像=大見康裕 アニメーション=たかくらかずき(範宙遊泳) 大道具=俳優座劇場舞台美術部(竹内智史、大橋哲雄) 特殊造形=中川有子 小道具=酒井善史 山田翠 中西美穂 高橋かほり 杉浦訓大 後藤円香 美術アシスタント=小島沙月 衣装アシスタント=吉川凛

TOUR STAFF
舞台監督=大鹿展明/岩澤哲野 演出部=磯村令子/杉浦訓大/大槻めぐみ/山田翠/高橋かほり 照明操作=葛西健一/上田耕司/加藤泉 音響操作=宮田充規 運送=植松ライン(西村春美/谷山正明/武澤裕行)

PRODUCE STAFF
制作=井神拓也 宇高早紀子 後藤円香 竹岡あかり 吉田和睦 制作補=天恵祐子 大瀬千尋 アートディレクション=堀口努(underson) 宣伝イラスト=たかくらかずき(範宙遊泳)


《滋賀プレビュー公演》
■日程:2021年12月18日(土)
■会場:栗東芸術文化会館さきら 中ホール
■お問い合わせ:077-551-1455(栗東芸術文化会館さきら

《京都公演》
■日程:2021年12月23日(木)~26日(日)
■会場:京都府立文化芸術会館
※前売完売。当日券はお問い合わせを。
■お問い合わせ:06-6357-4400(サウンドリエーター)

《東京公演》
■日程:2022年1月7日(金)~23日(日)
■会場:本多劇場
■お問い合わせ:0570-00-3337(サンライズプロモーション東京)

《広島公演》
■日程:2022年1月26日(水)
■会場:JMSアステールプラザ 中ホール
■お問い合わせ:082-253-1010(TSS事業開発部)

《福岡公演》
■日程:2022年1月28日(金)~30日(日)
■会場:西鉄ホール
■お問い合わせ:092-532-1830(ヨーロッパ企画福岡公演事務局)

《愛知公演》
■日程:2022年2月3日(木)
■会場:名古屋市芸術創造センター
■お問い合わせ:052-320-9100(サンデーフォークプロモーション)

《富山公演》
■日程:2022年2月6日(日)
■会場:新川文化ホール 小ホール
■お問い合わせ:0765-23-1123(新川文化ホール)

《高知公演》
■日程:2022年2月11日(金・祝)
■会場:高知県立県民文化ホール グリーンホール
■お問い合わせ:088-824-5321(高知県立県民文化ホール

《愛媛公演》
■日程:2022年2月13日(日)
■会場:砥部町文化会館 ふれあいホール
■お問い合わせ:089-933-0322(テレビ愛媛事業部)

《大阪公演》
■日程:2022年2月19日(土)・20日(日)
■会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
■お問い合わせ:06-6357-4400(サウンドリエーター)

《神奈川公演》
■日程:2022年2月26日(土)
■会場:関内ホール
■お問い合わせ:0570-003-117(tvkカウンター)

■公式サイト:http://www.europe-kikaku.com/e40/