月夜のドライブ

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ムーンライダーズ『It's the moooonriders』レコ発ライブ! @ 昭和女子大学 人見記念講堂

3月に野音でライブ、4月に11年ぶり(!)の新譜発売、その後雑誌やらラジオ出演やら店頭イベントやら(最近ではちょっと記憶にないほど大量の)新譜プロモーション活動を経て、7月にはビルボードで『マニア・マニエラ』ライブ、8月に良明さんプロ生活50周年ライブ、大阪でもライブイベント、とアラウンド70バンドにあり得ない怒涛の2022年を駆け抜け中のムーンライダーズ。新譜発売が予定より遅れて野音ライブのほうが先になったために先送りになっていたレコ発ライブが、とうとう!発売から5カ月にして!満を持しての開催!

 

しかしこの週末、ちょうど東海・関東の沿岸をまさかの台風が襲い交通機関も乱れ、遠方からの方たちは大変な思いをして東京に向かっている様子がうかがえた(中には、来られなかった方もいたかも…)。東京にいる私は、夕方頃には雨上がるかなーとかのんきに考えつつ出かけたら、三茶の駅出た瞬間、前が見えないぐらいのとんっっっでもない大雨!遠征組の方たちほどの苦労ではないものの、人見記念講堂までのわずか5分ほどで遭難するかと思った…。初めてのホールだったし今後も滅多に来ることなさそうだったから外観写真ぐらい撮りたかったけど、そんな余裕どこにもなし!

 

でもずぶ濡れながらもホールに着けば「ムーンライダーズのライブが始まる」という特別な高揚感が。プレミアムーンシートのお土産を受け取ったり物販を眺めたりしてから着席。人見記念講堂、広くてキレイ~。席はあまり前ではないものの、センターブロックでまあ全体がそこそこ視界に入るから良しとしよー。場内に流れる音楽ともつかないざわめきSE(リハの様子を録ったものを流していたのだとか)を聴きつつ開演を待つ。

 

moonriders LIVE 2022

2022/09/24(土)
東京・昭和女子大学 人見記念講堂

moonriders鈴木慶一(vo,g)、武川雅寛(vln,tp)、鈴木博文(b)、白井良明(g)、夏秋文尚(ds)、<岡田徹(k)さんは残念ながら欠席>
澤部渡(スカート/vo,g)、佐藤優介(k)
Guest(Crescent Horns):湯浅佳代子(tb)、東涼太(sax)、渡辺隆雄(tp)
Special Guest:DAOKO

開場17:00 開演 18:00
チケット価格(税込/指定):スペシャルムーンシート(お土産付)¥13,200 / 一般指定席¥8,800
主催:オン・ザ・ライン
企画:ムーンライダーズ・ディヴィジョン
制作:オン・ザ・ライン

 


開演時間を迎えると、向かって右端にセットされたピアノにスポットライトが当たり、博文さんがイン。おもむろに鍵盤を鳴らし始める。いつのまにかすっと下手のキーボードに入っていた優介さんとともに、美しく不穏な旋律を。しばらくしてメンバーも静かにポジションにつき、アルバム1曲目の「monorail」。レコーディングでは一人ひとりバラバラに録ったというリーディングのようなボーカルを、目の前でナマで!うわ、これぞレコ発…!『It's the moooonriders』というアルバムをつらぬく混沌とした「声」の印象が、ステージからダイレクトに伝わってくる。メンバーそれぞれの好き勝手な速度や緩急が、集まってうねって揺るがぬムーンライダーズという存在になっている、このバンドそのものを表明するような曲だとあらためて思ったな…!そして、この曲がはらむ湾岸の空気のままに演奏された2曲目、「ボクハナク」。博文さん×澤部さんの声の組み合わせもよかった。ちなみにこの日(に限らずだけど)、澤部さんボーカル大活躍!

 

「こんばんは、ムーーーー(長い)ーーーンライダーズです!」と慶一さんの挨拶を挟んで「岸辺のダンス」、いよいよレコ発っぽくなってキタ!くじらさんのバイオリンがうなりまくる!この曲を初めて聴いたのは昨年6月の"THE SUPER MOON"ライブでだったけれど、あのときは『タンゴか~』ぐらいにしか思わなかった(スミマセン鈍くて)この曲が、録音を経て今や恐ろしいほどの凄みをまとってる!こうした音の変遷をリアルタイムで味わわせてもらえるのも、同時代のバンドを追う醍醐味。ありがたやー。

 

最初のMCタイム、「ここしか僕しゃべるとこないんで」と言いながらくじらさんがトークを。(これは長くなるなとばかりに、立ってた慶一さんや良明さんが途中から腰かけちゃったのオモシロかった。)博文さんの車でリハスタに行くときに、ふーちゃんがよく道を間違える!とか(笑)。あとなんか演歌っぽい即興曲を弾き語ってたな、自由なくじらさんにメンバーも思わず苦笑(笑)。

 

と、そこからの!「S.A.D」のカッコよさ!!!!野音でも披露されたこの曲、間違いなく今回のアルバムのリードトラックよね!これさーーーーこの(めんどくさそうな)ギターのリフ、良明さんひたすらずーーーっとナマで弾いてるんだよね。派手なソロの印象強いけど、一方で盤石なリフでバンドを支えに支える良明さんの屋台骨っぷり、カッコよすぎないか!?くじらさんが吠える!バイオリンがうなる!ホーン隊が暴れる!そして夏秋さんのドラムの地を割るような壮大な響き!この日、ホールの音がイマイチだった…という感想がチラホラあって、たしかにボーカルや繊細な音がきれいに聴こえづらかったような気もするけど、その代わり(代わりなのか?)音がまとまったときのどっかーん!っていう迫力はあったように感じて、夏秋さんのドラムは終始すっごくいい音で鳴ってたと個人的には思った。カッコよかったなあ…。曲終わり、良明さんのギターリフだけが残り、エンディング…と思いきや少しずつ音階を変えていって「駄々こね桜、覚醒」のイントロに!なんちゅー粋なつなぎ方!客席大盛り上がり~!ホーン隊が扇フリフリを指南してて可愛かった!

 

アルバムの曲順をなぞって、次は慶一さん曲「雲と群衆」。アルバム発売から半年、ここにきて今、ワタシの中ですごくキテる曲!この日の演奏聴いてても、あらためてポップさ際立ついい曲だなあって。ボーカルチーム(慶一、澤部)×ウォウウォウチーム(くじら、良明、博文…だったかな?)の掛け合いがめっちゃいいー、ムーンライダーズの歌好きーーー!(この叫び、この日何度も繰り返す!)「次は岡田君がいないんですが岡田君の曲を」で「三叉路のふたり」、これも個人的に今キテる曲。澤部さんの詞、とてもとてもしみるよね。レコ発っていいな、全部やるの。耳の奥で岡田さんのアコーディオンの音を補完しつつ聴く。ふたつとないあの音を元気な岡田さんがまた聴かせてくれる日、楽しみに待ってる。

 

「親より偉い子供はいない」は“澤部昇太”バージョンで。よしあき~!のセリフに良明さんが「はいっ!」「わかりました!」と返事してたの楽しい(笑)。このあとにさざめくようなイントロダクション…なんと久しぶりの「夢ギドラ85'」。湯浅さんのフルートとくじらさんのバイオリンが、この世のものとも思えぬ美しさ…。湯浅さんフルートも吹かれるのか~。美しい曲にさらにアシッドみが加わって、突入したアウトロの混沌は凄いことに!はーーーかっけー。

 

待ってました「再開発がやってくる、いやいや」!良明さんの不可思議音色のイントロにのって、スペシャルゲストのDAOKOさんが呼び込まれる!キラッキラのふんわりトップスにシュッとした黒いパンツのDAOKOさんがセンターのマイク前に。かっわいいー&かっこいいー!黒髪ゆらゆらさせながらチャーミングなボーカルをたっぷり聴かせてくれてうっとり。良明さんとのデュエット素敵。この曲を生のバンドで聴けたのも貴重だったなー、ディラ・ビートだっけ、独特なリズム夏秋さんが叩いてるの見られて。

 

曲のあとのMCでDAOKOさんは、お父さんがムーンライダーズのファンで小さい頃からレコードを聴いていたので今日は光栄ですと。ここにもムーンライダーズ本体をはみ出したムーンライダーズが。この日、(SUPER MOONのときに引き続き)私は勝手にグッときてしまってた…ムーンライダーズムーンライダーズをはみ出してもうどこにでもいるんだ、って。澤部さんもそう、優介さんもそう、ステージを撮っている撮影クルーの背中を見てもそう思ったし、DAOKOさんも。ムーンライダーズが撒いてきた音符の数々は、土中に深く埋まったり、風に載って遠くに飛ばされたりしながら、時を経て思いもよらぬところで次々発動してるんだと思う、すごい勢いで。次なるクリエイトという形で。

 

DAOKOさんはそのまま残り、なんと…「ニットキャップマン」!わー意外!そうきたか!思えばかなり久しぶりに聴く!アッコちゃんパート担当のDAOKOさんのボーカル、とてもキュート。ライダーズらしさ大爆発のユニゾンコーラスも相変わらずよい。思いもよらず飛び込んできたこの「ニットキャップマン」が、突如私の中で新譜の「彷徨う場所がないバス停」とつながり、勝手にどばばーと思いがあふれてきた。ムーンライダーズは昔から今に至るまでずっと変わらず、川のほとりの空き地や都会のバス停に居る寄る辺ない人々の魂をこんな美しいメロディで歌うんだな…って。そういうミュージシャンが、そういうバンドが、いてくれるから、私も生きていけるんだって思う。

 

さらにDAOKOさんにもう1曲一緒にやりましょう、と声をかけて「世間にやな音がしないか」。しょっぱなから夏秋さんのドラムが凄い音してたな…。この曲を聴きながら、(たぶん)『ムーンライダーズのステージで夏秋さん作の(共作以外の)楽曲が初めて演奏された瞬間だ…』と思ってグッときちゃってた。夏秋さんがムーンライダーズのサポートに入った時からずっと、ツインドラムという一番近い距離で夏秋さんの隣にいたかしぶちさん、今日のこの時を見ててくれたかな?

 

3曲ご一緒してくれたDAOKOさんを送り出して慶一さんがしみじみ「素敵でしたねえ…」。そして古い曲、かしぶちくんの曲をと言って「Beep Beep Be オーライ」!あとから明かされたところによると、新譜から唯一やらなかった1曲「彷徨う場所がないバス停」の位置にこの「Beep~」、だったのだと。バスつながり!レコ発にかしぶち曲を滑りこませる思いと鮮やかさ、なんとしびれる…。

 

告知コーナー挟み、さらに澤部さんが歌うかしぶち詞の「D/P」。この「D/P」が…めちゃめちゃよかった…!レコードはもちろんライブでも何度も聴いている曲だけど、この日の「D/P」はこれまでのどれともまた違ってたような気がしたなあ。なんかフラワームーブメントを感じたし、なぜか「バーズの霧の5次元だ!」と瞬間的に思ったんだよね。バーズに詳しくないのでたぶん全然違う可能性が高いけど(笑)、とにかくよかった、澤部ボーカルとコーラスワークの妙だったんだろうか。慶一さんの「最後の曲です」の紹介で、「Smile」。この曲の、メインボーカルを次々回していくのと、2声重なる部分の2人の組み合わせが変わっていくの、大好き。

 

捌けたメンバーが大きな拍手でステージに戻ってきてくれて、アンコール。「スイマー」!ぎゃーーーかっけーーー!全員カッコイイけど特に優介さん!私の位置からはずっとやや隠れぎみだったんだけど、この曲の優介さんバキバキだったな!まるで試験前日の受験生みたいなカッコよさでキーボードに挑み倒してた!9月といえば?のコールで演ってくれた「9月の海はクラゲの海」、聴けて嬉しかったな。そして、ほんとにほんとのラスト曲、アルバムでも最後を飾る「私は愚民」。淡々とした曲調からの、インターバルの夏秋さんのドラムの迫力…そしてラスト、激しいインプロビゼーションへ。博文さんはギタースタンドでベースを弾き、夏秋さんはシンバルでシンバルを叩いていた…!目の前で渦巻く混沌。最後の最後、慶一さんが指揮者のようにバンド全体を伸ばしたり止めたりまた動かしたり好き勝手に操作し(どこかのタイミングでピアノに移ってた優介さんは慶一さんに背中向きだったので指揮を見るのが大変そうだった 笑)、幕がするすると下り、音の鳴るままジ・エンド。すぐに規制退場のアナウンス。アバンギャルドだ!

 

でも実は、ジ・エンドじゃなかったんだって。幕が下りて、規制退場のアナウンスがばんばんされていたあいだも、ムーンライダーズとクレッセントホーンズは幕の向こうでずっと演奏を続けていたのだと。最後のお客さんが退場するまで。なんという演出!

 


新譜とともにステージに現れた最新のムーンライダーズは、すさまじかったな…。カッコよさの密度と圧!!!!『It's the moooonriders』ってアルバムの凄みをリアルに思い知らされるようなライブだった。老齢ロックって、好々爺の余技じゃないんだよ、まさに時代と斬るか斬られるかの果たし合いのような音。

 

去年の12月、「生涯バンド宣言」がされ、新譜も出ると発表されたとき、“ムーンライダーズが活動してさえいれば、それでシアワセ…”って思った。でもこのバンドはやっぱり、「活動してさえ」なんていう悠長な状態ではとどまらず(とどまれず)、動きだしたら最前線の向こうへとびゅーんと突き進んでいって、あんなアルバムを作ってしまいこんなライブをしてしまう。彼らが20代だった頃の「スイマー」のヒリつきと、新譜の曲たちの切迫感を、変わらなく感じるもの。あいかわらず大人げなく、音が時代にぶっ刺さってた!

 

まさにこの当日、12月のライブも発表になった。ムーンライダーズにまた会える!!!!今回は療養の途上ということでライブ出演を見合わせた岡田徹さんに、クリスマスには会えますように!

 

ひどかった雨も帰りには小やみになっていた。今回、物販でポスターなど紙モノを持ち帰った人も多かったから、よかったよね。ムーンライダーズのみなさん、澤部さん、優介さん、クレッセントホーンズのみなさん、DAOKOさん、スタッフのみなさん。カッコイイレコ発ライブをありがとうございました!

 


*セットリスト

01.monorail
02.ボクハナク
03.岸辺のダンス
04.S.A.D
05.駄々こね桜、覚醒
06.雲と群衆
07.三叉路のふたり
08.親より偉い子供はいない
09.夢ギドラ85'
10.再開発がやってくる、いやいや
11.ニットキャップマン
12.世間にやな音がしないか
13.Beep Beep Be オーライ
14.D/P
15.Smile

(encore)
16.スイマー
17.9月の海はクラゲの海
18.私は愚民