月夜のドライブ

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「乙女座ダンディライオン」を語る

画像「乙女座ダンディライオン」というこの曲を初めて聴いたのは、去年12月、ジャック達のクリスマス・イヴ・ライブでのこと。カッコイイ曲だとは思ったけど、そののちこれほどひどく私をマイらせてしまう相手だとは、そのときは気づいていなかった。でもこのライブの日は、もうひとつの新曲「水溜り画廊」の衝撃があまりに大きかったから、仕方ないかな。そしてアルバム『HILAND』が出て2カ月、私のプレイヤーでの「乙女座ダンディライオン」のリピート率にはちょっと驚く。そりゃもう、世界中で私が5番めぐらいに(つまり4人のメンバーの次ぐらいに)この曲を聴いてるリスナーじゃないかなって思うぐらい。

 

聴けば聴くほど、「完璧」。足りないところ(それは、一色進がボーカリストである、という時点で必ず出てくる「不足」なのだけど)があることも含めて、私にとっては「完璧」な曲。(不足がないと完璧じゃないのだ、逆説的だけど。)その詞、そのメロディ、ギターとベースのフレーズ、ドラムの音、そんなに全員総出で私の弱点を攻撃してこなくても…と思う。

 

歌い出しの一色さんのワンフレーズを追うようにドラムが入り、それをギターとベースが受ける。このパターンが前半に8つ並ぶのだけれど、4人の音のリレーがとにかく絶品。とりわけ、少しずつちがうパターンを叩くここの夏秋さんのドラムは、センスよすぎて鳥肌が立つ。もうね、聴くたびその場で力が抜けてへたりこんじゃうぐらいカッコイイ…。わりとプレーンに叩いたあとにくる3番めの「タトトン、タトトン!」がもー気持ちよくってゾクゾクするし、6番めのタメにタメて「タッタ、トット!」というのも困っちゃうぐらい快感だし、最後の「トンッタタッタ、タットンタトトン!」にいたっては、もう助けて…って感じ、その抗いがたさったら…。って文字で書くと、この人何言ってんだろう(笑)って感じだと思うけど、まあ、これは聴いてもらうしかないよね…。ああ、ほんと夏秋さんのドラムって言い知れない魅力に満ちてるな…。そしてそのドラムを受けて鳴るギターとベースは、めんちかつさんが「まるで『Drive My Car』な」と表現したように、それぞれがうっとりするような動きを見せながら絡みあって、とびきり印象的なフレーズになっていく。ああもう、この演奏の中に潜む、ジャック達というバンドのセンスのよさは筆舌に尽くしがたい!

 

そして全曲感想のときもさんざん書いたけど、中盤から入ってくる歪んだオルガンの音色が、おそろしいほどのよさ。ボーカルと対でメロディを鳴らす、粗くサイケデリックな音の、なんて強引な魅力。キーボードレスのバンド・ジャック達のもとで、こんなオルガンロックが奏でられるとは…。

 

一色さんの非凡なメロディがその持てる魅力を全開にしている結果、この演奏を引き出していることは今さら言うまでもない。音符がリスナーを連れてふっと転調していく、その身のこなしの鮮やかさは、一色メロの得意技とはいえすばらしすぎる。メロディが駆け上がった先の「Party,party,…Movie,movie,…」のコーラスのせつなさは胸が痛くなるほど。

 

さらに、メロディと演奏ばかりか、この曲、詞がとんでもないことになってて。だって、最初のひとことが

 

魂は何g?

 

だよ? もう、いきなり、ヤバすぎるでしょ…。そこから先、最後にいたるまで、一行の例外もなく、一単語の洩れもなく、私の気を遠くさせない箇所がない。ここまで密度濃く、私をぐらつかせる言葉ばかりで埋められた詞にリアルタイムで出合うことってそうはなくて、歌詞カード読んだときほんとうにドキドキした。(読むと、今もドキドキする。)一般的な詞の評価としてすばらしいのはもちろん、一色さんの携える辞書って、どうも私に特別深く刺さりすぎるみたいで…。

 

「一冬~」から始まるサビのフレーズは、ためいきが出るぐらい美しい。この4行、「完璧」といっていい。まるで数学の定理を見るような美しさがある。まったく完璧、ほんとに。そしてこの4行に、私は聴くたびなんどでも、気を失う寸前まで追いやられる。だって、ね。こんなセリフ、目の前で吐かれてごらんよ…。

 

一冬越せない恋のくせに
心が野蛮な メロディー紡ぐ
からくりPoeticism 夜明けに沈む
魔法の呪文なら 一度だけ唱え

 

この詞、このメロディ、この演奏が、ひとつに集まっているとき、おそろしいほど強い重力がはたらく。そんなことが、たった3分42秒の中で起こってる。こんな魔法に出合えるから、ロックってすごい。

 

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どうでもいい話を付け加えると…、私の場合、これまで好きになった乙女座の男の人はたくさんいるけど(何座でもたくさんいるんだけど)、付き合った、といえる相手は、たぶんひとりだけ。リビングから墓地の見える集合住宅の一階に住む人だった。抱き合う視線の先にお墓があっても気にしないような、そんなタイプの歴代彼女の、私は何人めかだったんだと思う(たぶん)。銀縁メガネの似合う、細っそい人だった…そういえば。60’sガールグループが好きで、編集テープをよく作ってくれた。いくつかの歳の差ぶんのことを、いろいろ教わった。あまり実生活に役立つようなことじゃないけど。彼のことを乙女座的と感じたこと、その短い季節のあいだに、何かあったかな…。

 

でも、この「乙女座ダンディライオン」の詞、個人的には、どう見ても獅子座の一色さんそのものじゃん、って思えるけどね…。特に、サビの4行は。

 

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この曲がらみでまだ書こうと思ってたことあったんだけど、長くなっちゃったのでそれはまた別記事にします。っていうか、1曲でここまで語らないよなふつう…。参ってます、完全に。