月夜のドライブ

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ジャック達『december 18 スペシャル』@吉祥寺MANDA-LA2

画像2007年最後のジャック達ライブは吉祥寺マンダラ2にて。今年、ジャック達はぜんぶで7回のライブをやったと思うのだけど、なんとかフル参加できた…かな。いちばん好きなバンドのライブをぜんぶ見られたんだもん、これ以上のシアワセないよね。ありがとー神様。

 

『december 18 スペシャル』
12月18日
@吉祥寺MANDA-LA2
18:30open 19:30start
出演
トリコミ:番一郎(vo,g)、かわいしのぶ(b)、ホアチョ(dr)
ジャック達:一色進(vo,g)、宙GGPキハラ(g)、福島ピート幹夫(b)、夏秋文尚(dr)

 

■開演前

開場時間少しすぎたマン2に降りると、まだ人の数はまばら。年末の平日だもんね…。席に着いて、もらったチラシをパラパラと眺めてたら、うわっ、『HILAND裏攻略本 夏秋編』が(笑)!きゃー、うれしー。10月のレコ発では一色さんによる、先月のニューベリーではピートさんによる、『HILAND』裏解説が配布されて、ピートさんが「次はナッキーに書かせる」と冗談ぽく言ってたのだけど、ホントに夏秋さん書いてくれたんだー。これ受け取れただけでも今日来た甲斐があったかも…。時間があったのでゆっくりと目を通す。夏秋さんって、やっぱりビミョーにおかしな人だ…。「スーパーソニック・トースター」の解説で「何度かライヴでやってるのに、途中の4小節がドラムソロパートだと言う事を知りませんでした」って…(笑)。そのあとの「たいしたソロ出来ないけどね...。」というつぶやきも夏秋さんぽくておかしい。夏秋さんの文章やっぱり好きだなー。

 

トリコミ

とそんなことをしてるあいだに開演。最初の出番はトリコミ。ジャック達とは05年の12月06年7月、に続く3度めの対バンだと思う。どっちかのときに一色さんが「トリコミとはまた対バンしたいですね。まあ、1年に1回ぐらいで十分だけど」みたいなこと言ってたような覚えがあるんだけど(笑)、その通りになってるな。ボーカルの水谷紹さんはなぜか今回から自称「番一郎」さんに。ギターのストラップに「バン」って書いたバッジ(?)をつけてたのがおっかしかった。トリコミ、相変わらずヘンでよかったなー。水谷さんの声ってものすごく甘くて素直だし、メロディは水彩画のような淡いせつなさに満ちてるし、ギタープレイはオーセンティックな魅力があるし、ま何よりイケメンでもあるわけだし(ココ大事)、これらの要素をストレートに出していきゃフツーに「モテ系ポップス」なんじゃないの?と思うんだけど、そうしない(できない)のが水谷さんのサガなんだろうなー、ああすばらしい。また、その水谷さんの13回転半ぐらいひねくれたパッションを、寛容に受けとめアグレッシヴに表現するホアチョさんとかわいさんがすばらしい。基本的にヘンテコな演奏・ヘンテコな音楽なんだけど、時折ふっと「ふつう」の3ピースバンドの音(ドラムとベースとギター)になったときのカッコよさったらとんでもないよ。でもそれをちっとも有難がらないとこがトリコミのよさなんだろうな。それと、水谷さんの詞はホントいいねー、あたしは殺し屋の娘とかこの部屋クーラーもないの?とかあたしの値段はいくらなのとか結婚式なんてだれもよろこんでないのよとか、人を喰ったような言葉が並ぶんだけど、それが、底の浅い「等身大」ソングよりずっとリアリティあるんだよな。

 

と、そんなトリコミは1時間ほど演って終了。で、休憩時間はさんで、ジャック達~。

 

■オープニング

私の大好きな「こんばんは~、ジャック達です!」のセリフを、たっぷりタメをきかせて放つ一色さん。あー、生きていてよかった、と感じる瞬間(私ヘンかな…)。そして始まるオープニングチューン、いきなり「今すぐ帰りたい」だって!サイコー(笑)。レコ発ライブ以来聴くのは3度めだけど、ホントにイカシた曲だなあ。一度聴いたら忘れられない強力なギターリフ、粗さと甘さが絶妙に混じりあったメロディ。あーそして、前回メロメロにされちゃった全員コーラスが今日も!一色さんのボーカルを追いかけて、ちょっとぎこちなくピートさんキハラさん夏秋さんがマイクに向かう姿、もうもう、ドキドキしすぎちゃってダメだー。そうそう、ここの歌詞がね、3人のコーラス部分はちゃんとわかったの(笑)。あの少年みたいな3人にあんなメロディで「♪バラの花のせいで…」(たぶん)なんて歌われちゃったら、ほんと気失うって…。っていうか、一色さんのほうで歌詞わかれよ!と思ったけど、そこがジャック達の持ち味かな(笑)。あーほんとにピートさんとキハラさんと夏秋さんのコーラス、素敵だ~…。

 

■9針

このあとのMCだったと思うけど、「残念なお知らせが」って。いったい何?と思ったら、なななんと、ジャック達の「ライブの生命線」(一色さん談)であるふたり、ピートさんが4針の、夏秋さんが5針の、ケガを足にしてるって…。うわ、そんな…。これを聞いたあとはもうずっと、ライブ終わるまでそのことがちらついちゃってステージ観てても気が気じゃなかった…。でもピートさんも夏秋さんも坦々と演奏してたなー、さすが水瓶座と天秤座。夏秋さんなんか、5針縫った右足で(しかもまだ抜糸もしていないらしい)、バスドラどうやって踏んでたんだろう?と思うけど、たぶん言われなかったらこっちはぜんぜん気付かなかったと思う。そのぐらいフツーに叩いてた…。(でも大事にしてくださいね…、思い出すだけで泣きそう。)

 

■セカンドから

そのあとはセカンドから「乙女座ダンディライオン」「スーパーソニック・トースター」。「乙女座~」の入りで一色さんが歌い忘れてやり直したのがおっかしかった。「誰だよ歌ってないの?と思っちゃったよ」って、一色さーん(笑)!この日は、ずっとそんな感じを受けていたのだけど、一色さんのボーカルがものすごくあらくれてた。演奏もいい意味で好き勝手で、少々荒っぽいところがじつにジャック達的で。こういう粗さも含めてほんとにいいバンド、今日みたいなジャックも大好き。

 

■サードアルバム曲3連発~「スクーター・ガール」

そのあとがまたすごかったな。一色さんがいつものように「やだなー。難しいんだよなー」とさんざん逡巡したうえで突入する、サード用レパートリーなんと3連発!まずは「Easy To Fall」。キハラさんのスライドギターはこれでもかってぐらい甘くてキュンとする。次は待ってました、「ジャンパー」!ああ、ソリッドでメチャメチャカッコイイー。このすさんだ感じ、ほんと66年ごろのロンドンのバンドみたいだ…。それから前回のニューベリーで初披露してくれた「Jet Set」!あー全員コーラスカッコイイーーー!ビートが勢いよく走ってった先で、一気に空に駆け上がるように広がっていく間奏の響き。ジャック達だけが知ってる魔法のかけ方。さらに『HILAND』から「スクーター・ガール」。あーなんだか粗くて勢いがあってせつなくて。青春なんてとうの昔にどっかいっちゃったはずなのに。

 

■新曲

で。前々記事でもチラッと書いたのだけど、この日初お披露目の新曲が!また凄かった!のだ…。ジャック達が「今日初めてやります」と言って放つ新曲に驚かされる経験は、これまでもなんどもしている。赤坂グラフィティで「スーパーソニック・トースター」を聴いたときニューベリーで「キャンセル」を聴いたときその9カ月後のニューベリーで「水溜り画廊」を聴いたとき…。そのそれぞれの瞬間を、今でもあざやかに思い出せるほど、ジャック達の新曲はいつも衝撃的で…。「いい曲だねー」とかいうのん気な感想じゃないんだよ、いつも「何これ!?」っていうショックに近い。知らない世界のドアをいきなり目の前でバン!と開けられて、一気に心拍数上がる感じ。そしてこの日の新曲にも、やっぱり、心底驚かされた。「東京一悲しい男」。やーほんとすごかったよ、この曲!こんな曲をカタチにしてるバンド、日本中でジャック達だけだろうなー。ものすごいヘンテコでトリッキーな曲なんだけど、甘くてせつなくて。やーもうほんと、これだからぜったいジャック達のファンはやめられない。彼ら以外にこんな音楽演ってるバンドどこ探してもないもん。(過去にはタイツがあったと思うけど。)はー。すっげーなーーーー。でも最後になぜか一色さんの歌詞がちょっと曲からこぼれて終わり、「おかしいな?なんで余ったんだろう?」だって(笑)。今日しか聴けない「字余りバージョン」だったらしい(笑)。

 

■ラスト

一色さんが「いつもの最後の2曲いくよ」って。ああ、もうラストなんだー、今日はしょうがないけど、あまりにあっというまだった…。「キャンセル」。この響き。この演奏。私がジャック達を聴いている理由。そして間奏のキハラさんのギター…。この日は、ものすごーくタメがあって、じらし方がハンパじゃない。そこから一気に…あー、もうダメ…。キハラさんのギターって、ほんとに不思議だな…同じ曲の同じ間奏をなんど聴いても、一度として同じってことがない。特にこの「キャンセル」のソロはそう。音符をなぞるという視点はいっさいなくて、たぶん、「その日のキハラさん」がそのままギターの音となって出るんだろうな。一度として同じソロはない、それは「バリエーション」なんて小賢しいものじゃなくて、もっと深くから湧き起こる、キハラさんそのものなんだと思う。…そう思ったら、ジャック達のライブで聴ける、そのたびごとの彼らの演奏が、たまらなくいとおしくなってきちゃった。ほんとうに一回一回、とうとい瞬間に立ち会わせてもらってるんだなと思う。最後は「水溜り画廊」。一色さんの歌詞を、胸に沈みこませるように聴く。ふと気付くとジャック達っていうバンド、こんな場所にまできているんだもんな…。3年前には、だれも、メンバー自身さえも、こんな地点を想像もしていなかったかもしれない。もうこうなったら、行くしかないよね、この4人で次の場所へ。

 

■アンコール

アンコール。なんと駆けつけてくれた美尾洋乃さんがゲストで入り、「ハイランド」!この日の美尾さんは靴磨きの少年みたいなキュートないでたちで、相変わらず惚れ惚れするような美しさ…。あー、ヴァイオリン入りのゴージャスな「ハイランド」、やっぱりカッコよかったー。キハラさんのギターストローク(アルバムではアコギで弾いてるフレーズ)と美尾さんのヴァイオリンが重なるイントロダクションのまばゆさ!夏秋さんの叩くドラムのスケールの大きさ!すばらしい…。そしてもう1曲、レコ発で美尾さんのヴァイオリン(と、そのときはヨシンバ西村さんのピアノ)入りで聴いて「こんなバージョンが!」とびっくりした「My Beautiful Girl」。素敵だった。

 

■from 2007 to 2008

そうそう、驚くべきことにアンコール最後のこれがこの日初めてのファーストの曲で。「昔は曲なくて苦労して、ナイジェルのナンバーとか演ってたのになー(笑)」と一色さん。セットリスト、すでにセカンド6曲、サード(予定)5曲、って半々に近かった。ジャック達もいよいよ、ライブでやる曲を選ぶ時代に入ってきたんだなーと、勝手に感慨深く思う私。でも、ここ2回、ワンマンでどっぷり、が続いてたから、この日は時間的にちょっと物足りなく感じたのはしょうがないよね…(嘆)。

 

でもね、セカンドが出てたった3カ月しか経っていないのに「オンボロ」も「ロッカバラッド・クロック」も演らずに新曲をぶちこむというある意味無謀なセットリストに、「今のジャック達」を見る気もした。ライブ全体に、どことなく進行形の勢いと粗さを感じたのは、その彼らの前傾姿勢のせいかもしれない。「円熟」なんて言葉にはやっぱりあんまり興味がない人たちなんだと思う。そのときの彼らが飛んで行き得るいちばん遠い場所で、ただひたすら、ギターを弾き、ベースを鳴らし、ドラムを叩き、マイクに向かう4人。マン2のステージに浮かび上がる、その「ただのロックバンド」それ以上でもそれ以下でもない姿が、ほんとうにうつくしかった。

 

2008年のジャック達に、もうドキドキしはじめてる。来年も、今年よりもっと、今年よりずっと、よろしく頼みます。そして、ピートさんと夏秋さんは早く傷を治してくださいね。くれぐれもお大事に。

 

*ジャック達 セットリスト

 

01 今すぐ帰りたい
02 乙女座ダンディライオン
03 スーパーソニック・トースター
04 Easy To Fall
05 ジャンパー
06 Jet Set
07 スクーター・ガール
08 東京一悲しい男
09 キャンセル
10 水溜り画廊(ギャラリー)

(encore)
11 ハイランド (with 美尾洋乃
12 My Beautiful Girl (with 美尾洋乃