月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

グレてる50代、テレビに現る

あーなんてカッコイイおじさんたちなんだ!もう私完全にダメです。一昨日のNHKムーンライダーズon 「夢・音楽館」。思った以上に被弾してしまった。どうしよう…。もうムーンライダーズとはそれなりに長い付き合いだし(って私のほうから一方的にですけど)、その音楽も濃く深く味わってきてるから、何がブラウン管から出てきたってこれ以上そうはよろめかないだろうと思ってたのが甘かった。「夢が見れる機械が欲しい」が始まった途端、撃沈です。何、このヤバイ音。全員が50代に突入して、ますます静かに危険さを増してるんじゃないだろうか、このバンドは。

 

日頃ブツブツ言いながら日本放送協会に納めている受信料が、過度な退職金や接待のためにではなくあのようなセットと照明と撮影と音作りのために使われるのであれば、もう過度にでも過激にでもじゃんじゃん使ってください!とこの日ばかりはつくづく思いました。もともとカッコイイ6人を、あーなんて妖しく素敵にするんだろうあのセットと照明ったら。そしていったい何台あったんでしょうカメラたち。岡田さんの背中越しの良明さんとか、手前に博文さん奥にかしぶちさんとか、もうショットがいちいちカッコよくて悶えたーーーっっっ。

 

「夢が見れる機械が欲しい」。抑えめの演奏の中にたっぷり仕込まれた毒に酔う。4人の女性の美しいストリングス(棚谷さんアレンジ~!)を従え、ポツリポツリとボーカルを空間に置いていく慶一さん。その歌詞と演奏と微妙なあごヒゲとが、あまりにも妖しい…。ピアノの上を流麗に動く岡田さんの指先にうっとり。そのスーツ姿もきりりと美しく何だかもー“元祖帰国子女”のお坊ちゃまらしさと気品があふれ出してる~。そして、曲を急所で纏め上げるようにそして時々裏切るように鳴る武川さんのヴァイオリン、やっぱり世界でただひとり彼にしか出せない音色なのだよなあ。あーかしぶちさん、ドラム叩いてる姿だけで危険なのに、その憂いを含んだ視線を不用意に投げちゃいけません公共放送で!しかも胸元はだけ気味だし~。そして番長こと良明さん、私はバリバリでギンギンのときの彼のギターも好きだけど、実はこういう抑えめプレイのときの、目に見えぬ有害成分的ギター(何だそれ)にもメチャクチャ弱い。知らずにヤラレて後から気づくのだ、ヤバイもの入ってたみたい、って。ベースの博文さんは、いつにもまして寡黙でいつにもましてストイック。態度は不埒なくせにそこからどうしようもなく相手を魅了する何かがこぼれ出しちゃってる無防備さも、あーいつもながらだ。

 

2曲目は島谷ひとみさんとのコラボレーションで「夢見るシャンソン人形」。ワタシ的にはこれも相当ヤバかった。遅い時間とはいえNHKでこれを流していいのだろうかと思っちゃうくらいエロティックな歌と演奏。「シャンソン人形のダークサイド」と慶一さんは言っていたけど、それをアレンジと演奏で生ぜしめるアンダーグラウンドの深淵、空恐ろしいものがある。50年以上ずっとグレて生きてきた証拠だよな。やっぱ普通じゃない。その普通じゃないおじさんたちに囲まれて歌った島谷さんエライ。

 

そして彼らの3曲目は一転、スタンディングでの演奏で「Video Boy」!あーまっとうにカッコいいぜ、6人の立ち姿!実験的だとかニューウェーブだとか反主流文脈で語られることが多いムーンライダーズだしそれは間違いなくそうなんだけれど、今こうしてこの曲を演奏し歌っている彼らを見ていると、無茶苦茶ロックバンドじゃん!って思う。もうもう私、こういうムーンライダーズも大好きなのだーーーー。ありとあらゆる方法論やスタイルが萌しては枯れていったあとの2004年の音楽の地平に、立っていたのはやっぱりこの6人だったし、意外なようだけれど彼らの「身体」が鳴らす音楽だったんだ、と思う。慶一さんのヘンなボーカル(ホメ言葉)、岡田さんのヴォコーダーボイスとキーボード、良明さんのさりげに超絶なギター、ヴァイオリン左肩で弾きながらの武川さんのコーラス、ひたすら淡々と低音を刻む博文さんのベース、色気をにじませながらスティックさばきは男っぽいかしぶちさんのドラム、あーもうカッコよすぎーッ。この、ある意味バラッバラな6人が、せーので音を出した途端「ムーンライダーズ」に駆け上がる鮮やかさが快感だし、たぶんご本人たちにとっても、そうなんだろうな。

 

50代の悪意と10代のやんちゃさ。望んできれいにロックバンドになるんじゃなくて、あがいて転がってどうしようもなく情けなくロックバンドであり続けてるその覚悟。完全にグレてるもんなあ。どう見てもまともな大人じゃない。ほっとくと危険な感じが、隠そうにもブラウン管からあふれてた。

 

そういうわけで放送から丸一日以上経つっていうのに、延々リピート視聴して立ち直れない大人です。ああどうしよう。こんなヤバイもの見せてくれたNHK夢・音楽館」ありがとう…!