月夜のドライブ

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ムーンライダーズ『MR First & Last Gig 2007』@渋谷CLUB QUATTRO

画像ムーンライダーズの今年最初で最後のライブ(26日は最初で最後の「パーティー」らしい)。そして今回はサポートドラマーが夏秋文尚さん(fromジャック達)。この組み合わせが私に及ぼす破壊力といったら…。もう開演前から期待と緊張で重力崩壊しそうだった…。(以下、いつものことだけどムダに長い)

 

『MR First & Last Gig 2007』
2007/12/25 Tue @渋谷CLUB QUATTRO
open 18:00 start 19:00

 

■個人的思い入れ

去年の8月、四国のフェス「MONSTER baSH」にライダーズが出たとき、かしぶちさんが体調を崩し、急遽代打でドラムを叩いたのが夏秋さん。(私は観てないけど。)ライブのMCでも慶一さんが言っていたけど、このときは本当に急な代打で、事前リハもなければ当日リハもなし、あったのは楽屋での口合わせリハだけだったって。良明さんが夏秋さんに「あのとき、最初のカウントはさすがに震えたでしょ(笑)?」とツッコんでたけど、そりゃ30年もやってるバンドに事前リハも当日リハもなしで本番参加したら震えますわな…。で、その四国の話を聞いて以来、夏秋さんがライダーズで叩いてるのをいちど観てみたいなーというのが私のひそやかで個人的な願いだったのだ。でも、まさか、かなうとは。

 

■開演

それにしてもクアトロ、メチャ混み!去年4月のロフトに次ぐ密度だったかも。みんなふだんライダーズのことなんかちっとも気にしてない素振りして、じつはめちゃめちゃ好きなんじゃん!これがいわゆる、ツンデレ? オーディエンスは弱冠、男性のほうが多い感じ。混みすぎて、ステージ特に後方はほとんど見えず。

 

開演時間になり客電が落ちた中を、メンバーご入場~。セッティングは前列左から武川さん、慶一さん、博文さん、良明さん、後列は左から岡田さん、かしぶちさん、右にサポートの夏秋さん、という、ここのところ定番の位置取り。そして衣装は、武川さんが緑のセーターに赤いジャケット、博文さんがえんじのジャケットにクリスマスモチーフのバッジ、夏秋さんも赤のチェックのジャケットを着てたから、「クリスマス」で揃えたのかな?と思ったけど、あとは慶一さんはふつうに迷彩のパーカだったし、岡田さんもかしぶちさんも良明さんもそれぞれ。武川さんがあとでMCしてたように「バラバラ」だった(笑)。

 

■前半

1曲め「さよならは夜明けの夢に」のイントロが聴こえてきて、慶一さんのボーカルが入り、ドラムが入ってきた途端、その音圧に一気にふっ飛ばされそうになる。カ・カッコイイ…。前記事でも書いたけど、かしぶちさん×夏秋さんのツインドラムを底に据えたこの日のライダーズ、サウンド全体がずしっと重たくて、ほんとうにすばらしかった。特に、夏秋さんのドラム、博文さんのベース、良明さんのギター、この右側3人の次男坊たち(笑)の重いドライヴ感が、バンドを牽引してた気がする。どんなライダーズだっていつでも無条件に好きだけど、この、ラウドであらくれてて戦車みたいに重たい音を出す無敵のライダーズが、最近はほんとに大好き。「琥珀色の骨」や「11月の晴れた午後には」といった新しい曲だけでなく、繊細な印象の「さよならは夜明けの夢に」や「D/P」まで、この日は壮絶な重力とともに放たれていて。ああ、すばらしい…。序盤から、慶一さん、博文さん、良明さん、武川さん、かしぶちさん、とライダーズならではのボーカル回しも堪能。コーラスも冴えてた。これぞライダーズ!それにしても「琥珀色の骨」で、それまで慶一さんがとっていたボーカルを、最後のパートでおもむろに博文さんが「終わる夢もない…」と歌い出す、あれは反則ぎみのカッコよさだなあ…。去年もそうだったけどこの日も、わかっていてもクラッときた。

 

■ソロコーナー

中盤、バンドはいったん捌けて、ソロコーナー。まずは慶一さんがひとりで、来年2月に発売のソロ作から「白い浮標(ブイ)」を。慶一さんのメロディ、相変わらず謎めいてる。次に良明さんが入ってきて、慶一さんとふたりでなんと「ビタキャン」!ふたりがまるで少年のように弾き語るスウィートくんとビターくんとキャンディちゃんの物語に、思わず涙腺がゆるんでしまう…。博文さんソロはものすごく珍しい曲で、これ何だっけ何だっけ…ああ、あれだ、メトロトロンのクリスマスのに入ってる…とやっと思い当たる感じ。でも博文さんの歌はいつでも、言葉をたいせつに抱えるようにして、ひとつも取りこぼすことなく、聴き手のほうへやってくる。だから、いつの時代の曲でも、聴くたびハッとさせられるんだね…。武川さんは「最後の木の実」。21日に誕生日を迎えたばかりの武川さん、なんと57歳になったそうだけど、私の目には、20年前の青年館で「A Frozen Girl,A Boy In Love」をみかよさんと歌っていたあのころとまったく変わらないように見える。次はギターを抱えたかしぶちさん、武川さんのヴァイオリンと岡田さんのアコーディオンを従えて「冬のバラ」。かしぶちさんのメロディ、かしぶちさんの声、かしぶちさんの世界。退廃的でうつくしい…。ソロコーナー最後の岡田さんは、映画『マニアの受難』の中でそのエピソードを語っていた、トム・ウェイツのカバー「Grapefruit Moon」を。ひっそり月明かりに照らされるような岡田さんのピアノと良明さんのギター、ものすごく綺麗で色っぽかった。…というわけで全員のソロコーナー、なんとなーくだけど、冬っぽくてクリスマスっぽい選曲、だったのかな。

 

■後半

さてふたたび7人編成のバンドとなって後半戦。何しろ、この後半1曲めが…。「駅は今、朝の中」は、これまでもなんども書いているけど、私がムーンライダーズでもっとも好きかもしれないナンバー。原曲が好きすぎて、これを超えるバージョンはないと思っていたけど、この日のラウドバージョン、ちょっと心臓が破裂しそうなぐらいよかった。かしぶちさんと夏秋さんの重たいツインドラムが空気を圧し、良明さんのギターがヘヴィーにうなりまくる中、高校生のころからいっときも忘れたことのない歌詞のひとつひとつを、胸に刻むように聴く。これは今日の私へのクリスマスプレゼントだ…とか、勝手に思いながら、ね。その次の「静岡」も凄かった…、今まで聴いたことないぐらい厚く重くうるさくて。ああ、今日のライダーズ、最高!「ウスクダラ」は、じつはそんなに好きな曲じゃないんだけど、この日のこれは驚くほどカッコよかったーーー。夏秋さんのドラムが良明さんのギターとともにふっと駆け出すフレーズが…ヤバイ、カッコよすぎだ…。次がまた「Beep Beep Beオーライ」って、マイる。慶一さんと武川さんが掛け合うこのボーカル、なんど聴いても絶品。「One Way To The Heaven」をはさんで、「酔いどれダンスミュージック」もよかった!この曲こそ、はちみつぱいのころからもうどれだけ演奏し尽くされてるかわからないぐらいのナンバーだけど、この日のバージョン、ビュンビュン走っててカッコよかったなあ。こんな「酔いどれ」もあるんだ~、と驚くぐらい。かしぶちさんと夏秋さんのツインドラムの音が、ものすごくポップでイカしてた!

 

■本編最後、ソロ回し

そして…本編最後が「ヤッホーヤッホーナンマイダ」だったんだけど、これ長かったなー楽しかったなー。途中ナント、たっぷり7人全員のソロ回し!慶一さんが「今年最初のくじらのトランペットソロです!」と振って、武川さんが吹き終わると「次は今年最初のマンドリンソロです!」、さらにヴァイオリンソロ、果ては「トランペットとマンドリンとヴァイオリン!」まで同時にやらせてた(笑)。そして岡田さんのキーボードソロ(たぶんメロトロンだったかな)。博文さんのベースソロがまた破壊的にヤサグレててカッコよかったー。次が慶一さんだったかな、「今年最初のギターのカッティングソロ」って、ノコギリみたいなアグレッシヴな音で。さらに良明さん、そりゃもう流麗な旋律、うっとり。そして…慶一さんの「夏秋文尚のドラムソロ!」の声で突入した夏秋さんのドラムソロ…もう、真っ正面から弾丸に撃ち抜かれたぐらいのショック。めったにソロを叩かない人なので、もう、その衝撃度が並じゃない…ヤバイ…カ・カッコよすぎる…。しかもそれがムーンライダーズのステージで披露されているというのも感慨深くて、なんだかもう、泣きそう。はー…、崩壊。タメイキ。たたみかけるように最後をシメたかしぶちさんのドラムソロも、ユニークで迫力あってカッコよかった!ああ、贅沢な「ヤッホー」だったなー。

 

■アンコール

場内いっぱいの拍手に戻ってきてくれた7人、「ダイナマイトとクールガイ」、そして「Cool Dynamo, Right on」という、14年の時を一気に超える連作を。「Cool Dynamo, Right on」、会場中みんな歌ってたね。私も歌ってたさ。この日ずっと感じてたんだ、ライダーズの曲っておもしろいなって。だって、オーディエンスがいっしょに歌えるんだよ、「ビーチでジャンボリー」なんていって。「ビタキャン」とか「駅は今、朝の中」とか、この日の選曲が特にそうだったのかもしれないけど、ライダーズの歌ってちょっと青春唱歌みたいなところがある。カラオケ的な閉じた感じではなく、ユースホステル的な。音は激しくねじれていて孤高なくせに、「みんなで歌える平易さ」をメンバー全員が悪くないと感じてる感覚が、ものすごくおもしろいよね。どっかにやっぱりフォークの精神(在野という意味での)を持つロックバンドなのかな、とか、ちらっと思ったり。

 

アンコール2曲終えて、7人が並んで挨拶。メンバーもみんなうれしそう。サポートドラマー夏秋さんは、控えめな人柄そのままにだれよりも深々と長ーくお辞儀して、ニッコリとキラースマイル。そしてヒュー!でもなく、イェー!でもなく、ただ淡々と帰っていった…。つくづくクールな人だ…。

 

■夏秋さんのドラム

以下、もう相当特殊な視点の感想文であるのを自覚しつつ書き続けますが。とにかく、夏秋さんのドラムに参った。ライダーズ相手に、こんな凄い音を叩き出すなんて、想像以上だった。今年、夏秋さんのドラムはそこそこの回数聴いているのだけど、その中でもベストアクトだったんじゃないかな。彼のSONORの鳴りも、私が知ってる中では最高だった気がする。(というか、ライダーズのサウンドにものすごく合ってた気がする。)なんかね、ちょっとショックなぐらいだったなー。夏秋さんがこんな重い音を叩き出すドラマーだったなんて、わかってたようでぜんぜんわかってなかったな、と。ふだん気軽に「夏秋さんはいちばん好きなドラマー」とか言ってるのだけど、私なんかがそんなこと言うの恐れ多くなっちゃうぐらいの凄みと迫力があった。

 

それと、(特殊にもほどがある感想だと自覚しつつさらに書きますが、)ムーンライダーズとジャック達ってぜんぜんちがうんだな!というのも目からウロコのような発見で。私の中では、ムーンライダーズとジャック達って、ヘンテコな音を鳴らすイギリス的なロックバンド(ずいぶん大ざっぱだけど)という位置づけで、ほぼ同じ線上にあったのだ。でも、夏秋さんがライダーズで叩いてるのを観て、ジャック達とはあまりにちがうのでビックリした。そうかー、ライダーズとジャック達ってぜんぜんちがうんだなあ。(当たり前か。)でも、夏秋さんはやっぱり夏秋さんで、まぎれもない彼らしい音やパターン、聴くたびドキドキした。なぜなのかは相変わらずわからないけれど、やっぱり好きだなー、夏秋さんのドラム。31年も続いてるロックバンドで、ひとつも臆することなく堂々と彼らしいドラムを繰り出してる姿にも、なんだかじーんとしちゃった。いろいろ含めて、とにかくすごく感動…。

 

■ライダーズ2008

それにしても、この日の重たいライダーズ、ほんと私好みだった。このライブの「さよならは夜明けの夢に」「D/P」「酔いどれダンスミュージック」「駅は今、朝の中」は、ちょっと忘れられそうにない。もう評価が確定しているだろうと周りが思う大名曲でも、じゃんじゃん新しいアレンジへと転がしていくライダーズのラディカルさは、ちょっと他のバンドにはないものだと思う。つくづく、守りに入るのが嫌いな人たちだ…。来年はアルバムも出すよ、と慶一さんが宣言。ひたすらこのヘヴィーな路線で突っ走るライブ、観てみたいな。

 

*セットリスト

01 さよならは夜明けの夢に
02 琥珀色の骨
03 トラベシア
04 帰還~ただいま~
05 D/P
06 11月の晴れた午後には
07 白い浮標(ブイ) (鈴木慶一ソロ)
08 Sweet Bitter Candy (白井良明ソロ)
09 メリークリスマス (鈴木博文ソロ)
10 最後の木の実 (武川雅寛ソロ)
11 冬のバラ (かしぶち哲郎ソロ)
12 Grapefruit Moon (岡田徹ソロ)
13 駅は今、朝の中
14 静岡
15 ウスクダラ
16 Beep Beep Beオーライ
17 One Way To The Heaven
18 酔いどれダンスミュージック
19 ヤッホーヤッホーナンマイダ

(encore)
20 ダイナマイトとクールガイ
21 Cool Dynamo, Right on

画像


(しっかし長げーな…でも、まだ書き足りないことがあり、それはまた)