月夜のドライブ

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JITABATA

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「JITABATA」。
鈴木博文さんの90年のソロアルバム「石鹸」に入っているこの曲が、
私は、とにかくたまらなく好き。詞もメロディも、博文さんの声もギターも、何もかも。
聞くたび心の奥深くに、言葉にならない何かがねじこまれて、
私はただ息を呑んで立ち尽くしてしまう。

愛をふりまいた ぼくはもう
じたばたしない 袋小路の どぶにしゃがんで 君を待ってる
夜に逃げない 待ち疲れたら 星を数えて 時を忘れる
ぼくは逃げない

彼の「待つ」という言葉が抱く、壮絶さ。静けさの底に沈む、乱暴な覚悟。
「待つ」ことが、こんなにも荒々しく、同時にやさしさに満ちた行為だなんて、
この曲に出合うまで気づかなかった。

答えのない場所で。約束のない場所で。人は待ち続けられるんだろうか。
「待ち疲れたら 星を数えて 時を忘れる」くらいの、
激しい覚悟と果てないやさしさを、持てるんだろうか。

そう、
待つことは、祈りにも似ている。
形のないものを信じようとする、見返りを求めない強さ。

攻撃もせず、威圧もせず、ただ「待つ」と言い切るだけの、
彼のようなこんな強さを、自分は持てるのかと
この曲を聞きながら、いつも私は自分に問いかけてる。たぶんこれからも、ずっと。


この曲、「石鹸」に入っているオリジナル・バージョンは、
Darieさんのピアノや夏秋さんのハイハット鈴木慶一さんのバックグラウンドボーカルが
入る以外は、すべてを博文さんが演奏している宅録仕様なのだけど
(まあメトロトロンのレコードはすべて宅録仕様といえばそうだけど)、
ここで聞ける博文さんのギターの音も、本当に好き。
博文さんのサウンドはいつも青山陽一さん西村哲也さん坂東次郎さんといった
ギター巧者に支えられていて(それにしても好きなギタリストばかりだ…)
それももちろんイイに決まってるのだけど、
博文さんの、技巧的とは言えない、どうにも粗っぽいギターの音は、
理屈抜きに私の心を乱すのだ。
この音を聞くと、博文さんってロックの人なんだとつくづく思う。
生きてる限りロックし続ける他ない人。

と言いながら
青山陽一(g)、西村哲也(g)、青木孝明(b)、伊藤隆博(key)、川口義之(sax,perc)、夏秋文尚(dr)”
というおそるべきバッキングメンバーによるライブアルバム
「HIROBUMI SUZUKI & GREAT SKIFFLE AUTREY」に収録されているバージョンも、
重たくて大好き。おススメです。

 

*「石鹸」鈴木博文