月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

かなわぬ恋のコレクション

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急に聞きたさが募って注文していた、アソシエイションのCDが届く。メロウなコーラスとうつくしいメロディ。このごろすっかり魅入られてる世界。「GREATEST HITS!」というタイトルのベスト盤だけれど、後からの編集モノではなくて、4枚のオリジナルアルバムを出した後の68年に出た、彼らの正規のカタログの一枚。ジャケットの写真、うつくしい。タイトルの入り方もすごくいい。好きなジャケットだなあ。

 

NO.1ヒットの「Cherish」も「Windy」もいいけれど、何よりも「Never My Love」。イントロのギターの音色に、もう倒れる。うつくしいメロディとハーモニー、素朴なエレピの音、オルガンのせつない間奏。目立たない場所でひっそりと静かに水をたたえている、どこまでも深く冷たい泉のよう。たった3分間、その透き通った水に包まれてたゆとう陶酔の果てしなさ。

 

邦題「かなわぬ恋」だけれど、それは誤訳という話で、詞にある本来の意味は「Never,my love」という恋人への呼びかけ。「ぼくがきみに飽きるときが くるんじゃないかってきみは聞くけれど けっしてそんなことはないさ /ぼくのこの心がきみへの思いを 失うんじゃないかってきみは疑うけれど けっしてそんなことはないさ」(私のいいかげん訳ですが)。

 

誤解と不安と行き違いと言葉足らずと。いつの時代も恋は永遠にその周辺を巡り続ける。少しの曇りもないと思えるしあわせな時間なんて、円錐のてっぺんで見る夢のように、あっという間のときでしかない。でも、それでも。ふたりのあいだにどうしても生まれてしまう小さなささくれや軋みを、痛みを感じながら見つめる時間がいとおしいとも思う。何度傷ついても、無駄にしかならなくても、誤解を修復しようとするバカげた努力こそ、恋なんだとも。

 

“if there’ll come a time when you grow tired of me”と、相手に聞く恋ばかりだったと思う。ブッキラボーで女よりギターのほうに興味がある、たいがいそんな人を好きになってしまうから、たしかな答えが返ってくることなんて殆んどなくて、私は “Never,my love”っていう相手のささやきを、彼の煙草を吸う仕草や窓の外を見遣る表情の中に追いかける。ずっとそうだったし、きっといつまでもそうだ。

 

もしかしたら、「かなわぬ恋」って、誤訳ではないかもしれないね。恋なんて、かなわぬ恋ばかり。私の心の缶カラの中には、やりかけの「かなわぬ恋」がいくつもそのまま放り込んである。ふたがへこんでうまく閉まらないから時々困るのだけれど。

 

*「GREATEST HITS!」THE ASSOCIATION