月夜のドライブ

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『銀平町シネマブルース』を川越スカラ座で!先行上映&舞台挨拶

小出恵介さん主演の映画『銀平町シネマブルース』。小さな映画館が舞台となるこの作品、撮影された場所が川越スカラ座で、2/10の映画公開以降ここでも上映があると聞いていたので、公開中に一度は足を運んでみたいなと思っていたら、なんと舞台挨拶付きの先行上映があるとのお知らせが!これは行きたい…!ということで、予約して行ってきました。昨年11月TAMA映画祭での最速上映のときに続いて、2度目の鑑賞。

 

川越スカラ座『銀平町シネマブルース』先行上映&舞台挨拶
●日時
2023年1月21日(土)15:45の回上映後
●ゲスト
小出恵介さん、宇野祥平さん、城定秀夫監督
●チケット
一律1,900円

 

当日。足を踏み入れた川越は思った以上に観光地化していて、人波がわんさかあふれる中をスカラ座へ。なんとなく人気のない町はずれにぽつんとあるイメージだったので、ちょっとびっくり。すぐ近くに人が行列するので有名らしい和風のスタバも。でも、目に入った川越スカラ座は映画の中のまさにあのままの雰囲気だった。ここで、小出恵介さんが、あの錚々たる役者さんたちが、映画を撮っていたのだなあ。

 

整理番号順に並んで中へ。

 

わーーー!銀平スカラ座だー!みんなが行きかってたあのロビー。

 

常連さんたちが座っていたあの長椅子も!

 

館内も…。

 

映画をテーマにした映画を、その撮影された映画館で観るって格別な体験だったなあ。しかも、映画内映画もあるから、川越スカラ座のスクリーン(現実)の中の、銀平スカラ座のスクリーンの中の、「はらわた工場の夜」や「監督残酷物語」を観るというフシギな入れ子体験も。

 

2度目の鑑賞だけれどやっぱりとてもよかった。好きなシーンを挙げたらきりがない。隅々までとーーーっても好きな映画だ。

 

映画の感想はまたあらためて書くとして、この記事では、その後の舞台挨拶のことを少しメモっておきたいなって。かなり貴重な話もあったと思うので…。(とはいえ覚えてるのはほんの一部、さらに細かいところは記憶違いもあると思うけれど。)

 

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(※以下の舞台挨拶部分はネタバレがあるので、映画観ていない方は観てからのほうがよいかな~と思います)

 

舞台挨拶の進行は、川越スカラ座の方と映画スタッフの方(たぶん、企画の直井さんという方かな?)のおふたり。すぐに、小出恵介さんと宇野祥平さんが呼び込まれて登場。なんと、もうお一人登壇予定の城定秀夫監督は、電車を乗り間違えて横浜に行ってしまい(!)今、川越に向かっている途中なのだと。なので、監督到着まで小出さんと宇野さんのお話でなるべく引き延ばすとのこと!俳優のトークを延ばして監督の遅刻をカバーという贅沢な状態に(笑)。舞台挨拶どころかティーチインぐらいの長いトークを観ることができて、小出さんファンとしては想定外のごほうびだった。結局、小出さんと宇野さん、50分ぐらいマイクとっていたのではないかしら。

 

進行の方とのお話と、そのあと観客からの質疑応答も。以下、うろおぼえだけれど、個人的に印象的だったお話を一部メモ。(私の記憶の中のお話なので、細かいニュアンスはかなり違ってたりすると思います。)

 

スカラ座でのシーンのこと
『銀平町シネマブルース』の撮影は2021年の11月頃。川越スカラ座での撮影は2回に分けて行われたそうで、その中でも「スカラ座60周年祭り」の場面をかなり最初のほうで撮ったとのこと。長回しの素晴らしいシーンがあるのだけど、小出さんいわく「全キャストが絡むこのシーンを、ワンカットで撮ると聞いたときは衝撃だった」、でもとても良いシーンになったと。そう、あのワンカットは本当に印象的で忘れられない。それまでに絡んできた主要キャストが、カメラの向こうに次々とあらわれる幸福きわまりないシーン。ちょっと強引なところも含め監督らしい演出だなって思う。(そういえばTAMA映画祭のトークのときに監督が、あのシネマ祭りのシーンはファンタジーです、という意味のことを言っていたと思う。)

 

●木更津
映画内映画のゾンビ工場の撮影は木更津で行われたそう。そしてゾンビになってしまう社長役は、制作会社のプロデューサーさんが演じているのだという打ち明け話も!ゾンビ社長のメイクのままでスタッフとして役者の誘導したりしてましたよねと小出さんが笑ってた。また、平井亜門さん演じる助監督の思い出のカットなどは、中でゾンビ工場を撮っているときにその外で撮っていた、無駄のない撮影、と。なるほどー。あと、川岸の野辺送りのシーンも木更津だと。

 

●小出さんと宇野さん
小出さんと宇野さんは2度めの共演だそうで、でも前回の映画ではあまり話す時間もなかったので、一緒のシーンが多かった今回は近づくことができた感じがしてよかった、とおふたりとも。小出さんの宇野さん評「宇野さんは役と一体化していて、どこまでが宇野さんでどこからが佐藤かわからない」…確かに(笑)。

 

スカラ座のシーン
川越スカラ座の方が、映画館を素敵に撮っていただいてうれしい、小出さんにトイレ掃除までしていただいて…という感想を。小出さん「掃除するまでもなくキレイでした」!それと上映後の館内のゴミを拾うシーンは、スカラ座の方が「うちのお客さんはあんなにマナー悪くないです、と監督に言いました(笑)」と。たしかにTAMA映画祭のトークのときに監督自身が「観ていて思ったけど、ゴミちょっと多すぎましたね(苦笑)」と言っていたよね(笑)。それから、映画の中で館内に貼られていたポスターは権利の関係でクロックワークス配給の映画のものが多いというトリビア

 

●骨折
撮影4日目に城定監督が骨折して、小出さんと宇野さん「あれで一致団結しましたね(笑)」。スカラ座での2回目の撮影時、監督は車椅子だったので映写室に上がれず、映写室のシーンはモニター越しで演出していたのだそう。監督の骨折の現場は誰か見ていたのかとか、ライスの関町さんは見ていたんじゃないかとか、(小出さんも宇野さんも)年をとると思わぬところで怪我したりしますよねとか、この話のくだりおっかしかったな。

 

●監督役
映画監督役は初めてだったという小出さん。学生の頃、自分でも8ミリで小さな映画作品をつくったことがあるそう。ゆらゆら帝国の曲を使ったミュージッククリップみたいなもので、自分で脚本を書き、出演もしたと。スカラ座の方に「監督になりたかったんですか?」と聞かれて「なりたかったですね」と答える小出さん。俳優になったけど、それは監督になる手段だと思っていたと。その話は聞いたことがあるな~、元々作り手として映画に携わりたくて、業界に潜り込む手っ取り早い手段として役者になったって。今、小出さんの、他では替えのきかない演技を受け取っている側としては、役者になってくれてよかったと感謝するしかないけれども。

 

●監督の演出について
城定監督はあまり演出を感じさせずに演出する人、と宇野さん談。ほとんどは台本に沿っている(アドリブもほとんどない)けど、ところどころ、現場で台本にはない監督のアイデアが盛り込まれた箇所があるそう。小出さんから明かされたそのうちのひとつは、ラスト、近藤(小出さん)が海に出たシーンでダンスを踊るところ。あれは台本になかった監督のその場での演出だそうで、小出さんいわく「あれのおかげで、いい意味で気持ちが入らなかった。ああいうシーンだと普通、万感の思いをこめて、みたいな演技になるんだけど、あの動きをしてたからいい意味でそれができなかった。城定監督らしい演出だと思った。」という意味のことを。ここ、全トーク中、一番心にグッときたエピソードだった。演出の何たるかを思い知らされるような気がしたな。そして、私がこの映画を初めて観たときに感じた「ややもすると湿っぽくなりそうなのがそうならない」魅力は、城定監督のこういう演出から生まれているのかなとも思った。いいエピソードだなあ…、監督の演出も、役者の小出さんがその意図をこうして感じたということも。あの印象的な画と共にずっと覚えておきたい。

 

●質疑応答
進行の方とのトークもたっぷりあったのだけど、途中からは観客の質疑応答の時間も。これも監督が到着するまで(結果的に)た~っぷりの時間。そして、どの質問にもしっかり考えながら一つひとつ答えてくれる小出さんと宇野さん。その真摯な態度にますますファンになってしまう。

 

●人生最後に観たい映画
なんと観客からの最初の質問が「人生最後に観たい映画は何ですか」。小出さんが「いきなりめちゃめちゃ難しいじゃないですか」と(笑)。うーんと考えての答えは、小出さん「パッと思いついたのは、ゴダールの『気狂いピエロ』か『勝手にしやがれ』か、ダニー・ボイルの『トレインスポッティング』。一番最初に初期衝動を与えてくれたものに、最後戻る」。宇野さんは、城定監督のピンク映画「恋の豚」。

 

●『銀平町~』の中で思い出に残ってるシーン
小出さん「野辺送りのシーン。ちょっと今まで経験しないような感じだった」。宇野さん「撮影でここ川越スカラ座に通っていたけど、今日久しぶりに来たら、向かいの建物がなくなってた。そのことですかね…」と。

 

●監督到着
横浜に行ってしまった城定秀夫監督が川越スカラ座に到着したのは、小出さんと宇野さんと進行のおふたりがさんざん(…たぶん50分ぐらい)しゃべったあと。観客の割れんばかりの拍手の中を、監督パタパタと入場。そこからは(たぶん制限時間もあったと思われ)、ほんの10分に満たないぐらいの時間をダーッとしゃべって、お開きに。城定監督の短いお話の中で印象に残ったのは、タイトルについての質疑応答。

 

●タイトル
実はこの映画は当初、黄金町で撮る予定にしていて(舞台がシネマ・ジャック&ベティになる予定だったということかな)、タイトルも「黄金の町(街?)」ということで進んでいたのだそう。でも川越でということになったので、タイトルも金色じゃなく銀色、と考え「銀色の町(街?)」に。その後、そのタイトルだと今ひとつインパクトが弱いというプロデューサー陣の進言を受けて『銀平町シネマブルース』になったのだそう。そんないきさつがあったとは!貴重なエピソード。

 

●小出さんの監督役はどうだったか
と聞かれて城定監督は「僕も若いときはあんなだったかなと思いました。ちょっと汚い感じの(笑)」って。でも監督にそう言われるのは、役者みょうりに尽きるよね。

 


他にも興味深い内容や印象的なエピソード、小出さんと宇野さんのおもしろいやりとりなどたーくさんあったのだけど、とりあえずざっくりこのぐらいで。(上記に書き出した内容も、あくまでも私の脳内変換を経たうろおぼえトーク内容なので自信なしですが…。)

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監督の話もそこそこに、ラストは撮影タイム。私たち一般のお客も撮影OKですよということで、またしても私のカメラロールにナナナ生の小出恵介さんの姿が収まるという令和の大事件(その2)が。しかも川越スカラ座こじんまりしているものだから、俳優さんたちとの距離がめちゃ近かったなあ…。

小出さんは手を振ったり指ハートしたりファンサたくさん(笑)。小出さんと宇野さん、思いもよらず長丁場になったトーク、観客をたっぷり楽しませてくれてありがとうございました。監督も、スタッフのみなさまもお疲れさまでした!

 

帰りはすでにとっぷりと闇に包まれていた川越スカラ座。いい映画と楽しいトークで、ロビーを出口へ向かう人たち、みんなほんのり上気した幸せそうな顔してた。まさにあの、銀平スカラ座の祭りに集った人たちのように。映画のもつマジカルなチカラを最大限に引き出す、たしかにそんな場所のひとつと感じさせてくれた川越スカラ座。先行上映&舞台挨拶(監督の遅刻、のハプニング付き!)という貴重な機会に足を運べてよかった。関係者のみなさん、小出恵介さん、宇野祥平さん、城定秀夫監督、ありがとうございました!

 

 

 

当日、ポストカードのプレゼントもいただけた。うれしい!