月夜のドライブ

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恋するバカの「恋は底ぬけ」

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前々記事へのfullmoonさんのコメントでカーネーションの「恋は底ぬけ」という曲名が出てきた。倒れる私。そう、カーネーションとの出逢いの曲なのです、コレ。だからものすごく思い入れがあるし大好き。それは、とあるカセットテープの1曲目だったのだ。


A
1 恋は底ぬけ/カーネーション 
2 ハンバーガーですね/カーネーション
3 SLOOP JOHN B/ビーチボーイズ
4 You Mary Me/ルイ・フィリップ
5 スター・マウンテン・ロコモーション/あがた森魚
6 二人はSPACY/あがた森魚
7 7時のニュース/ピチカート・ファイヴ
B
1 59番街の歌/ピチカート・ファイヴ
2 YOU'RE MY SPECIAL/鈴木さえ子
3 ガラスの一秒/渡辺美奈代
4 Child/鈴木博文
5 いとこ同士/ムーンライダーズ
6 さよならは夜明けの夢に/ムーンライダーズ
7 How Men Are/アズテック・カメラ

 

なんというポップさ、なんというマニアさ。そして私を3度卒倒させて余りある。これを私に送ってくれた彼と、私はそのころまだ顔を合わせたことがなかった、ヘンな話だけど。私から彼に初めてテープを送って、そのお礼って、くれたのがコレ。88年の秋。とっても忙しい人だったけれど(たぶん今も)、1度目の結婚と2度目の結婚のちょうどあいだだったから、私にこんなテープ作ってくれる暇があったんだろうな。

 

まあそんな思い出話は私にとって以外どうでもいいのだけれど。この1曲目がスピーカーから飛び出してきたときは、イスから滑り落ちましたよ、マジで。清水の舞台や東京タワーの展望台にいたら文句なくそこから滑り落ちていただろうからイスで済んでよかった。もう何度も書いているけれど、私が初めて直枝政広(そのころは政太郎)という人を知ったのは、86年のムーンライダーズの「ボクハナク」だった。でもそこからすぐ彼の音にたどり着くにはカーネーションはまだマイナーすぎたし、私は不熱心すぎた。直枝さんの名前が心の隅に引っかかったままの私に、季節ふためぐりくらいして届いたのが、このカセットテープ。「これが、カーネーションだったんだ!」そりゃもうハンマーで打たれたようなショック。すぐにレコード手に入れたんだと思う。88年、だったから「Young Wise Men」と「GONG SHOW」を、ちょっと後追いで、たぶん同時に。

 

「Young Wise Men」。融通のきかない強情な若さと、不穏な鋭敏さが、永遠のカタチで刻まれてる。完成度でいえば、カーネーションの他のアルバムのほうが上かもしれないけれど、どんなアーティストの場合でも処女作にしか存在し得ない何かが、カーネーションのこのアルバムの中ではひときわ光を放ってる。B面1曲目、イントロの確信犯的なギターの響きの痛快さは、たぶんこのあと10年経っても20年経っても、初めてレコードに針を落としたときのままの鮮やかさで、そのたび飛び込んでくるのだろうと思う。

 

いちど人を好きになるとその人しか見えなくなっちゃうクセは、音楽を聞くときにも出てしまうようで、いったん好きになってしまった音楽を、「音楽シーン」とか「ロックの歴史」なんてものの中に冷静に位置づけることがなかなかできない。だから初期のカーネーションってフォークっぽいよね、とか言われても「とにかく私この人のこと大好きなの」という見当はずれな答えしか返せないのだ。でも、すこーし冷静に、例えばこの「恋は底ぬけ」なんか聞くと、たしかにフォークロック的かもね。でも私、フォークロックも大好きだし。と言うに至っては、やっぱり恋するバカにつける薬はないのだ。

 

私を、カーネーションへの切実な(と同時に中休みさえある悠長な)恋に陥らせたこの1本のカセットテープに、とても感謝している。バカキュンのほうに書いたあがたさんの「ミッキーオの伝説」も、このテープで出逢っているのだなあ。そして、このカセットテープは、その他に私を発熱させる別のリアルな出逢いも連れてきたわけだけど、その話はまた機会があれば。

 

*「Young Wise Men」カーネーション