月夜のドライブ

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MONO第53回公演『退屈忍者』 @ 吉祥寺シアター

MONO第53回公演『退屈忍者』
作・演出:土田英生
出演:金替康博 水沼 健 奥村泰彦 渡辺啓太 石丸奈菜美 高橋明日香 立川 茜 土田英生
<東京公演>吉祥寺シアター
2026年2月27日(金)~3月8日(日)
<全席指定>一般 4,800円

 

昨年と同じ時期に、同じ吉祥寺シアターで、MONOの東京公演を観劇(3/5木のマチネー)。いつも時代や場所にとらわれずさまざまな設定で群像劇を見せてくれる土田英生さんが、今回選んだのは「江戸時代の忍びたち」。それを聞いたときになんとなくドタバタな感じをイメージしていたのだけれど、会話のズレや思いの行き違いから生まれるMONOらしいユーモアには終始笑わされつつ、でも、意外にしっとりと個人の内面にまで思いを至らせることになるお芝居だった。

 

家業である“忍び”の仕事が必要とされなくなってきた世の中で、素性を隠しながら生活する忍びの一派。日々をなんとなく平穏に過ごしていただろう彼らが、頭(かしら)の禁断の恋、そして村で起こる騒動に巻き込まれていく。そんな中で見えてくる、彼らの弱さや本音、人間らしい部分。時代劇などでは「忍者」というプロの仕事人として描かれることが多い彼らが、時代の本流から外れてしまったときにふっとばらばらの「個」の内側を見せるのは、土田さんらしい設定の妙味だなあと思った。土田さんの脚本は人の可笑しみと機微を丁寧に描き、役者さんたちはその味わい深く人間味あふれる人物像を、仕草や表情や言葉や動きのすべてをもって丁寧に舞台上に立ち上げる。時流に抗いきれず流される者、身の振り方を思案する者、信念をもって生業を続けていこうとする者。登場人物それぞれの内面が、役者さんの個性とともにじんわりと観る側に染み入ってくる。と同時に、時代の変化に取り残されて右往左往する彼らが、今の私たちにも重なって見える。自分はこの中のどの立場に近いかなあなんてことも、観ながら考えた。

 

仲がいいようなそうでもないような、微妙な距離感のいとこ同士の忍びを演じた水沼さんと金替さん、しみじみよかった。ぼんやりしている風の吉兵衛(金替さん)の意外な意地にどきっとしたり、いいかげんに見えた茂助(水沼さん)の奥底の義侠心にぐっときたり。慎み深い言動を貫いていた頭(奥村さん)が、ラスト近くにふっと鬱屈と重責に苦しんでいた本音を漏らすシーンはたまらない気持ちになった。全体をテキパキ取り仕切りすぎる様子がおもしろい静尼(しずね)(高橋明日香さん)、思いきり憎らしく同じぐらい可愛らしいお茶目なお貞(石丸さん)、若さゆえの生硬さがとても魅力的なお久(立川さん)、がさつで無遠慮だけど憎めない又五郎(渡辺啓太さん)。そしてだいぶうつけ者な感じの代官(土田さん)にはめちゃめちゃ笑わされた!ノー眼鏡な土田さんも新鮮でまじまじと眺めてしまった。

 

登場人物はみんながみんな欠点も美点も持っていて、簡単に「善悪」とか「新旧」とか「敵味方」とかいう言葉で線引きできない。この割り切れない感じこそMONOだなあと嬉しくなる。大衆をザーッと投網でさらうような“大きなわかりやすいストーリー”ではなく、人の思いや営みがぶつかったりすれ違ったり絡みあったりする様(さま)を丁寧にすくいとることで紡がれる、唯一無二の物語。それを観客それぞれがそれぞれの受け止め方で持ち帰れる、なんて贅沢なことだろう。そしてMONOのお芝居の登場人物はみんなそれぞれに、その人なりの(うまく結果に結びついていないとしても)小さな向上心や前向きな気持ちがあって、観たあとなんだか元気になれる!

 

MONOはいつも舞台美術もとってもよくて、今回も開演前からうっとり隅々まで眺めてしまうようだった。階段や腰壁や手すりの木肌の感じとか、漆喰の壁とか、小窓から灯りが漏れるのとか。忍びの話ということで、舞台に仕掛けもいろいろあって楽しかった!(目まぐるしい芝居の中であれを操る役者さん凄い!)あと、音楽もカッコよくてよかったな。

 

最後にひとつ。昨年、MONOを退団されて俳優業も辞められた尾方宣久さん。大きな存在だった尾方さんがいない寂しさは、そりゃ感じた。とは言ってもお芝居に物足りなさを感じるとかではまったくなく、去年は同じ時期、同じ場所に尾方さんがいたな…と思い出す、不在の寂しさ。でもその寂しさと同じかそれ以上に、目の前の8人のMONOメンバーに揺るぎない頼もしさも感じた2時間だった。劇団創設以来の大切なメンバーを欠いても、やっぱり劇団を続けようと決めて前に進んでくれた土田さんたちMONO、そのお芝居をこうして観続けられることに大感謝。メンバー、スタッフのみなさん、ありがとうございました。

 

 

【2026/03/10記】