月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

The End Of Summer

画像たぶんそれは博文さんのライブ盤で若い彼らの演奏と直枝さんの声を聴き返しちゃったせいだと思うけど、ふだんなら思い出しもしないようなナンバーなのに「防波堤のJ」の直枝さんのタメイキのようなボーカルが頭の中を巡り出して止まらなくなり、昨日は久しぶりに『Young Wise Men』を聴いて、私の中の“なにか”をたしかめて眠りについた。そしたら、今朝起きるとこんどは「The End Of Summer」のリピートだ。ああ、ダメだ、私がカーネーションでいちばん好きかもしれない曲。そんなのが鳴り出しちゃったら、せつなくってさ。

 

それで、♪タッタカタッタタタタタ~タッタカタッタタータタ♪とアルプス一万尺のイントロ口ずさみながらおべんと作って子どもたちを送り出して、そして『天国と地獄』を聴いてる。私もそうだったけど、ほかにも何人もの人たちが、このあいだ「日本のロックアルバム25選」にこのアルバムを選んでるのを見かけたっけ。

 

考えられないほどの重力。夏のクレイジーさとオレのどうしようもなさと青春のくだらなさを、ひとつ残らず集めて、とことん煮つめてぶちまけたような、ほんとに狂ったアルバム。こんな狂ったアルバムって、ちょっとないと思う。人をグラグラと足元から不安にさせるほどの。そして、狂気の先にうつくしさを感じるほどの。

 

『Young Wise Men』のアナログから聴いてた私が、リアルタイムのカーネーションのファンだったのは、このアルバムまでだ。そのあと10年ぐらい、私自身が冬眠に入ってしまったから。92年8月25日、そうか、やっぱり夏の発売だったんだね。細かな記憶はもうないけれど、このアルバムは、とにかくショックだった。それこそ、狂ったように聴いてた。

 

前作『エレキング』で加入した鳥羽さんのギターとサウンドの志向がこのアルバムでは全開で炸裂してるし、グランドファーザーズが解散してこのアルバムからカーネーションに入った(びっくりしたっけな…)大田さんのベースがサウンドをより重たくして、こんな傑作が生まれたんだろう。今のトリオカーネーションのすばらしさはそれとして、ここで揃った、直枝政広矢部浩志、棚谷祐一、鳥羽修、大田譲、というこの5人、ロックバンドとしてこんなに完璧なメンバーって考えられない。これ以上のバンドってこの先もまず出てこないんじゃないかな。「日本ロック三国志」というゲームソフトでもあって(←あったらオモシロそうだ)最初に好きなメンバーをピックアップできるとしたら、真剣勝負に出るならまちがいなくこの5人を選ぶな。(ま、そこでヘンな好みとか出しちゃってボーカリストに一色進選んじゃったりするから勝負に向かないんだけどね、私…笑。)

 

それにしても、このありえないほどの濃度。好きな曲は…、と書き出そうとすると、ほとんど入ってしまうほどの名曲の嵐。「体温と汗」「ハリケーン」「ファームの太陽」「おはよう」「愛のさざなみ」「The End Of Summer」「地球はまわる」「天国と地獄」…青春のくだらなさとその中のちょっぴりのとうとさに一生とりつかれて逃れられないような人間は、こんな曲たちを胸に抱きしめたまま生きてくしかないんだ。

 

“夏のおわりのどろどろアイスクリーム”なんて歌詞にどろどろにされちゃってからもう15年も経って、私だってカーネーションだっていいオバさんとオジさんになったはずなのに、結局何も変わってやしない。今もずっと“最低な青空”に呼ばれっぱなし。最低な青春、最低な毎日の真ん中でへとへとになって、それでも、相変わらずくだらない“なにかひとつ”を信じようとしてる。

 

バカげてるけど、でも、そこにしか、ほんとのことなんてないのさ。

 

*『天国と地獄』カーネーション