月夜のドライブ

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岡田徹さんのことを思う

ムーンライダーズ岡田徹さんが亡くなってしまった。あまりに突然のことで、まだよくのみこめていない。亡くなったのは2月14日バレンタインデーの朝だったとのこと。公式にそれが明かされたのが22日だった。

 

つい1カ月前、ファンクラブのイベントで姿を見た(私は位置的にスピーカーの陰になり、実際に姿を見られたのは最後だけだったけど)ばかりだった。とてもお元気そうな印象で、イベント前半のトークでも狭山に住んでいた頃の思い出を面白おかしくしゃべっていて、『そういえば活動休止前のムーンライダーズで、MCで一番よくしゃべるのって岡田さんだったよな』と久しぶりに思い出すほどだった。後半のミニライブでも(良明さんがお休みだったため)総勢5人のライダーズサウンドの中で、岡田さんのアコーディオンの音はひいき目でなくとても力強く存在感があって、これはもう復活ののろしだなと感じたところだった。2年前の骨折での入退院以降の地道なリハビリが確実に実を結び、あとはもう上り坂に快復していかれるばかりだなと、100%そう確信していたところだった。なのに…。

 

ムーンライダーズ内最年長で、骨折で入院されたときにもう70歳を超えていたことを考えると、(年齢的には自然である)肉体的な下降線に抗うことが、まして復調へもっていくことが、どんなに大変かは想像に難くない。だけれど岡田さんは、2021年6月、退院翌日(!)のライブのアンコールに車いす姿で現れて「さよならは夜明けの夢に」を弾きファンを驚かせ感激させたのを皮切りに、少しずつ、でも確実に、ライブのたびに元気さを取り戻す様子を見せてくれていた。21年12月の、慶一さんの口から「生涯バンド宣言」が飛び出した恵比寿のライブのときは、「(新譜用の)フォトセッションでけっこう車いすから動いてカメラマンを驚かせちゃった、みんなからもスタンディングオベーションもらいました」なんて、お茶目な感じで話してた。『It's the moooonriders』のブックレットに収められた写真なんかがそれなのかしら。

 

22年3月の野音、健康な若者でも天候次第ではキビシそうな野外のライブ、メンバーもそうだしとりわけ岡田さん大丈夫かしら、と事前に心配していたものの、天候には恵まれ、車いすの岡田さんは優介さんに寄り添われながら自分の脚で歩いて入退場するシーンさえあった。まわりはいつもちょっと心配だったと思うけど、たぶんステージの上ではより頑張って、元気なところをファンに見せてくれようとしていたと思う。毎回てらいなく「リハビリ頑張ってます」と言い「次はもっと元気になります」とファンに約束してくれ、実際にいつもそうなっていた。

 

22年7月のビルボードでの本編ラスト、メンバーが全部捌けた中でひとり残った岡田さんが弾く「青空のマリー」のピアノの音、忘れられない。指運びもまだ完全復調ではなく、時々旋律を確かめるように止まるところもありながらだったけど、岡田さんだけのあの美しくロマンティックな音がしていた。ムーンライダーズ岡田徹ここにあり、と宣言するような音だった。9月の人見記念講堂でのレコ発ライブこそお休みだったけれど、12月恵比寿の『マニアマニエラ+青空百景』ライブでは、再び「青空のマリー」のピアノを聴かせてくれた。7月のビルボードのときよりもはるかに力強い音で。

 

そして、つい1ヵ月前のファンクラブイベントでも、アコーディオンをよいしょとかついで毎曲岡田さんにしか鳴らせない“ムーンライダーズの鍵盤の音”を力強く響かせていたから、その存在感がいつになく大きかったから、きっとこれからはますます快復の一途なんだろうなと感じてた。今年も加速しそうなムーンライダーズの活動の中で、演奏においても創作活動においても岡田さんの存在感がふたたびどんどん増していくんだろうなと思ってた。その未来を想像してちょっとニマニマしちゃうぐらいだった。『It's the moooonriders』では体調のことがあってけっして力を十分に発揮しきれたわけではなかっただろうから(「岸辺のダンス」も岡田さん以外のメンバーでアレンジを決めたと聞くし)、そのぶん、次のアルバムでは岡田徹の筆が火を吹いちゃうのかなって。すごいメロディやアレンジや演奏がまたバンバン出てきちゃうのかなって。そう思ってた。

 

なのに。

 

ほんと、約束違いだよ、岡田さん…。「リハビリ頑張って、次はもっと元気になります」って、イベントのときも言ってくれてたじゃん。インプロアルバムの発売もあるのに。狭山のコンサートもあるのに。インスタグラムにあげてくれるリハビリも兼ねたピアノ演奏動画も、驚くほどの快復ぶりを証明してくれてたのに。みんな、今年の活躍を信じて疑わなかったのに。

 

寂しい…。寂しい。まして、メンバーは、と思うと、それもつらい…。

 

追いかけぶりにムラがある不熱心なファンなので、ムーンライダーズ岡田徹さんの活動をもれなく追い続けられてるわけじゃないけれど、ここ数年観た中での岡田さんの姿を繰り返し繰り返し思い出してる。いつもお洒落でお茶目でユーモアを忘れることのなかった岡田さん。誰もが息をのむ、圧倒的に美しいメロディを書く岡田さん。寂しい…。

 

少しだけ気持ちが軽くなったのは、発表翌日の、岡田さんの娘さん(little moaさん)のツイートで「昨年末のライブには復帰することができ、翌日本当に幸せそうな顔で『ライブ最高だった』と言っていた父の表情が忘れられません」という言葉を、そして「きっと最期はいつもの調子で『サンキュッ!皆んなにヨロシク♬』そんな風に旅に出たと思います」という言葉を、読ませていただいて。岡田さんなら、きっとそんな感じかもしれないな、と思えて。

 


2/22にメンバーが次々にツイッターに投稿した青空の写真。そんなことだったなんて、思いもしなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

(※楽器をたくさん持ち替えていたのはファンクラブイベントのときでなく12月のライブでだね。記憶が混じったまま書いてた。初出の文章を訂正しました。)