月夜のドライブ

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小出恵介さんが「寝太郎」役を!舞台『日本昔ばなし』 @ 東京芸術劇場 シアターウエスト

小出恵介さんが主演するということでチケットを買っていたお芝居。つい2カ月ほど前にはこの同じシアターウエストで緊迫感のあるキレッキレの現代劇(「12人の淋しい親たち」)を演じていた小出さんが、今回は「日本昔ばなし」の主人公に。振り幅!

 

「舞台『日本昔ばなし』貧乏神と福の神~つるの恩返し~」
2022年11月17日(木)~27日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエス
監修・原作協力:「まんが日本昔ばなし」(愛企画センター
脚本・演出:モトイキシゲキ
出演:小出恵介中村ゆりか / 丹羽貞仁、黒田こらん、大倉空人、中西良太、原日出子安寿ミラ / 星田英利片岡鶴太郎生島ヒロシ / 肥後克広星田英利、レギュラー、コロコロチキチキペッパーズひょっこりはん、かなで(3時のヒロイン)、彦摩呂
※キャストは一部日替わりでの出演。

 

 

日本昔ばなしを舞台化」という、聞いたときはやや受けとめに戸惑う謎企画ではあったのだけれど、例えば明治座とか新橋演舞場とかで年末年始にかかるような、軽い娯楽作というような位置づけの作品なのかなと考えたら、なんとなく腑に落ちた。いくつかの昔ばなしをモチーフにしたオリジナルのストーリーで、小出さんは主役の「寝太郎」役。福の神役を日替わりゲストが演じ、さらに本来は仲本工事さんが演じる予定だった貧乏神役を、公演前の仲本さんの急逝によりこちらも3人のキャストが日替わりで演じる形に。私が観劇した11/27大千穐楽は、福の神が彦摩呂さん、貧乏神が生島ヒロシさん。なんともにぎやか。オープニングのナレーションをAIによる市原悦子さんの声で再現、というのもウリだったようだけど、これはちょっと微妙だったかな…。

 

個人的に楽しみにしていたのは、寝太郎の母役を演じる安寿ミラさん。ヤンさんは私が後追いでハマッた宝塚星組トップの日向薫ネッシー)さんと活躍時期のかぶる花組トップさんなので、映像ではけっこう見ているのだけれど(TMP音楽祭とか…)、ナマでお姿を拝見するのは初めて!芝居はまさに、ヤンさん演じるおはるさんのシーンから始まる。登場した瞬間、『う、美しい…』とうっとりしてしまう佇まい。そして、舞台に響きわたる凛とした声が、さすが宝塚のスターという風格。息子の寝太郎を女手ひとつで育て上げ、何があっても守り通すという決意をにじませる、優しくも強い女性像をとっても素敵に演じていらした。観られてよかった!そして鶴の精霊役を演じた原日出子さんも私はナマで拝見するの初めてだったと思うけれど、鶴を模した銀白髪と白い衣装がとても美しく、セリフ一言ひとことの説得力がさすが。ちなみに今Wikiって知ったんですがヤンさんと原日出子さん、ナント同学年の62歳&63歳ですってよ(驚)!おふたりともなんという美しさ…。

 

小出恵介さんは、太く鷹揚に出来事を受けとめ、貧しい暮らしにも腐らずまわりの人に大きな優しさを与えていく役柄。ゆったりとしたセリフやふるまいに、小出さんの明るく誠実な魅力がストレートに出ていた。そして小出さんの和装はあいかわらずカッコよく眼福…。(小出さん本人もどこかで言っていたけれど)今どき稀有な“昭和の香りのする”俳優さんなので、着物の着こなしも堂に入っていてとてもお似合い。相手役の中村ゆりかさんや町の豪商役の大倉空人さんといった若手の役者さんをリードし、日替わりの福の神や貧乏神のアドリブをよい塩梅にさばき(ゲストによって毎回展開もだいぶ違っただろうと思われ…笑)、舞台をひとつにまとめる頼もしい座長ぶりだったと思う。

 

それにしても小出恵介さん、中世の貴族でも人間くさいブルーカラーでも昔ばなしの主人公でも、器用さに頼らずそのたび真摯にその人生を生ききる役者さんだな…。今年は復帰作も含め3つの舞台で彼を観ることができて本当に嬉しかった。また来年も小出さんが舞台でいいお芝居するのをたくさん観られますように。