月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

【あとからメモ】カムカムミニキーナ『>(ダイナリィ)~大稲荷・狐色になるまで入魂~』 @ 座・高円寺1

(主にその日のツイートを中心にまとめたものを自分メモ用にあとからアップ。2022年04月)

 

カムカムミニキーナ『>(ダイナリィ)』は、初演の2015年にも観ていて、その凄さ面白さに打ちのめされた作品。しかも再演の今回は、あの驚くべき構造(三方向からの囲み舞台)はそのままに、配役がガラリと変わると。あのズッパマリとしか思えなかったやましげさんがあっちの役で、清水宏さんがこっちの役で、という噂…ええっホントなの!?この目で確かめるのが楽しみ…!

 

劇団カムカムミニキーナ vol.65
>(ダイナリィ) ~大稲荷・狐色になるまで入魂~
2017年11月2日 (木) ~2017年11月12日 (日)
座・高円寺
一般:5,000円(全席指定・税込)
作・演出: 松村武
出演: 山崎樹範 / 藤田記子 / 松村武 / 吉田晋一 / 田原靖子 / 未来 / 亀岡孝洋 / 長谷部洋子 / 栄治郎 / 元尾裕介 / 渡邊礼 / 菊川耕太郎 / 福久聡吾 / 大倉杏菜 / 柳瀬芽美 / 成清正紀(KAKUTA) / 広澤草 / 豊原江理佳 / 本間茂樹 / スガチヅル / 津留崎明広 / 丸山雄也 / 美都 / 山本ユウ / 清水宏

 

 

初日の11/2と千穐楽の11/12を観劇。

 

【11/2】

昨日、カムカムミニキーナ『>ダイナリィ』初日を観劇!はーあまりに言葉を超えた体験…!

 

容れ物に容量があるように時間空間にだって詰め込める限界ってあると思うんだけど、完全に超えちゃってる、『>』は。時間と空間と次元を大幅にあふれ出て押し寄せる芝居!端的に、オソロシイ!芝居の濃度も普通に考える限界をはるかに超えてる。そして初演と違う配役、ええっと二度見するほどの。藤田記子さんと清水宏さん、特濃にもほどがある二人に、山崎樹範さんのこれまたとんでもないテンションの憩健太が絡んで凄いことになってた。これもアリなのか、むしろアリなのか!

 

まあ何しろ清水宏さん!初演時の劇団主宰役はもう清水さん以外あり得ない!と思ったけど、今回ガラリと逆のまさかの表現規制側、そのあくどさがまた凄くて。そして紅葉役もよくよくドギツイんだけど、はらりと漂う切なさがね、たまらなかった…。清水宏さんの表情が照明の当たってないときまでくまなく魅力的で、目が離せなかったなあ!そして終演後ロビーに出たら汗だくの紅葉の衣装のままで帰るお客にチラシ配ってた!あんな凄い芝居して息もゼイゼイなのに、手渡してくれながら丁寧な説明付きで…惚れてまうやろー!

 

何しろ360度上から下まで隠れるところのない特殊な舞台。目の前の芝居は、今カムカムミニキーナが演じる劇団・芸能革命。…が演じて解いていく、だいなり明神の話。さらに板の下では役者が着替えたり水飲んだり。虚と実とオンとオフと過去と今と。完全に迷い込んで出られなくなる。たぶん暗転がたった2回しかなかった。あの特殊構造におけるあの怒涛の芝居が、殆ど止まることなく疾走していく、どんなに体力を奪い死力を尽くさせる芝居か!もう驚愕と言うしかない。一見「熱さ」の極みに思える表現が、緻密な設計と技術に支えられてることにグッとくる。

 

初演の、塞いだ挙句の暴発、みたいな役どころがまさにやましげ節と思ってたけど、今回の憩健太役がいけすかなさ大爆発でこれまたやましげここにアリ。かたや前回やましげさんがやってた役を演じたプリタさん、ぜんっぜん違う説得力で舞台を丸呑み。役者さんってすごい…。

 

 

【11/12】

『>(ダイナリィ)』千穐楽観てきた!圧巻…!

 

私は役者と詩人という職業を絶対的に敬っていて、それは人類がある限りなくてはならないプリミティブな仕事だと思うからなんだけど、目の前のカムカムミニキーナの芝居はまさにこの原初的な演劇なんだと感じた。もうそれはストーリーや思いを表現したいから、とかではなく、演じることでしか生起し得ないものをあらしめるために何かに要請されてそこに生まれているものだ、という気がする…。まさに憩健太の台詞「徹底的に祀るんだ、完膚なきまでに祀るんだ!」のような芝居。

 

いやそれにしてもやましげさんがカッコよく見え清水宏さんがカッコよく見えることこの上ない芝居!劇団芸能革命の憩健太VS表現規制調査会の岩清水、の構図は、そのまま山崎樹範VS清水宏という役者同士の一歩も引かない対決に見えて心底シビレたなぁ…!そして軍服姿でマイク握る松村さんを見て、『狼狽』のときも思ったことだけれど、松村さんの書くアジテーションの言葉は蠱惑的で本当に怖いなあ…と思った。中身が空っぽでも嘘だらけでも、魅力的な言葉でパンパンに膨らませられるんだと。初演時よりますます世相とも重なり。

 

削ぎ落とすことを目指す表現は多いけれど、カムカムミニキーナはとりわけ『ダイナリィ』は、削ぎ落とさないこと、盛り込めるだけ盛り込むことを目指す芝居。瞬間瞬間のためにそこに存在する、溢れんばかりの人台詞動き小道具大道具!時間と空間をありえない濃度に煮詰める松村さんの離れ業、圧倒的…!舞台の隅々まで過剰さ濃厚さが行き渡ってるから、うっかりどこ見てもおもしろくて。表現規制調査会のガサ入れのシーンで委員の大倉杏菜さんが芸能革命の劇団員と肩が触れて蔑むような目で肩を払ってたのとか、舞台脇の暗がりで起こってたことだけど視界に入ってツボったり。

 

たしか大倉さんや柳瀬さんは初演ダイナリィがカムカム初舞台だったかと。初演時、若手さんがいっぱい出てきた印象があって「演劇の継承」みたいなこともストーリーと重ねて勝手に受け取ったんだけど、2年後の今回その若手さん達が皆見る見る頼もしく存在感も出てきてて親戚のオバちゃん目線で胸熱。

 

千穐楽の2度目のカーテンコールで、客演を代表してと松村さんに挨拶を求められた清水さん、劇団員でもないのに劇団の誰よりも熱く「こんな芝居をする劇団は他にありません、これからもこのカムカムミニキーナをよろしくお願いします!」と深々と頭下げてて、泣けたな…。