月夜のドライブ

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『Tokyo7』のジャケ裏のこと

画像タワレコで手にとって買ったときにはそのことにまったく気づいていなかったのだけれど、『Tokyo7』のジャケ裏には、ほんとに世界がひっくり返るぐらい驚かされて、いまだその動揺の中にいる感じ。まあ、私じゃなくても、「あれ?」とは思うよね。デザイン的なモチーフとしてでなく、メンバー以外の人物の写真がジャケに載ってたことなんて、今までのムーンライダーズのアルバムで記憶にないから…。

 

ムーンライダーズ6人が並ぶ記者会見場、のジャケをひっくり返すと、エピローグのようにその同じ場所に別の人間がぽつんとひとり、という飄々としたデザインに、バンドの遊びゴコロも感じるし、それと同時に、この夏秋文尚さんというサポートドラマー(インナースリーヴのクレジットでは「Additional Musician」)に、ムーンライダーズが寄せる信頼と連帯感の大きさを感じて、ちょっとたとえようもないぐらい心を動かされてしまった。それは、私がここ最近の「7人」でのライブを見てきているから感じること、だと思うけど。

 

ジャケ裏にもまして、インナースリーヴの写真もパンチがあるんだよね…。かなり衝撃的だった。こんな並びも、見たことないから。夏秋さんはもともとメトロトロン周辺で活躍してきてるドラマーで、慶一さん博文さんとはじゅうぶん切っても切り離せない存在なのは事実だけれど、ムーンライダーズ本体の中にこういう形で位置づけられるというのは、まったく別の意味があると思う。すごく重くて、大きいこと。

 

話はずいぶん前に戻るけど、07年の12月に、夏秋文尚さんがサポートに入ったムーンライダーズライブを観たとき、この7人編成で出てきた音があまりにすばらしくて、私は「一色さん(ジャック達リーダー)、ぼんやりしてると、夏秋さんのことムーンライダーズに引き抜かれちゃうかもよ!?」って思ったんだ(笑)。さすがにそれは記事には書かなかったけど(笑)。でも、引き抜く引き抜かれるは冗談にしろ、今、ムーンライダーズの中での夏秋さんの存在感はほんとうに、このジャケに象徴されるぐらい重いものになってるんだな…って思う。

 

クレジットによると、じっさいに夏秋さんが演奏に参加しているのは、アルバム13曲中5曲(ドラムス4曲、コーラス1曲)のようだから、目に見える分量だけで言えば、とりたてて大騒ぎするほどではない、まあ通常のサポートミュージシャンの範囲内、だと思うんだ。

 

なのに、どうしてこの裏ジャケか、どうしてこの中面写真か、といえば、これこそが、『Tokyo7』というアルバムについての、ムーンライダーズのアティテュードの表明なんだと思う。つまり、「ライブバンドとしてのムーンライダーズ」ってことじゃないかなと。慶一さん自身が「バンド時代再来」と言い「ライヴをやっていたことが、アルバムにすごく反映されてると思う」と語る(公式内特設サイトのインタビューより)今回のアルバムを出すときに、バンドの枠組みを、ずっとライブをやってきた夏秋さん込みの7人編成として捉えることは、わりと自然だったんだろうなって。

 

私は東京以外の公演は観れていないのだけれど、07年12月のクアトロ、08年12月のAX、09年に入ってからのロフト3連発だった、1月2月3月、そして4月のAX、さらにこのあいだのWORLD HAPPINESS、と、ここ2年ぐらいのライブをずっと観てきて、ムーンライダーズのメンバーが、今またあらためてバンドで演奏する面白さに身を熱くしてきてるってことは、肌で感じてた。それとともに、バンドの現役感がおそろしいほど増してきてることも。やっぱりバンドって、演奏することでどんどん鳴りがよくなって、機動力もドライヴ感も出てくるんだなって。そして、特に最近の、70年代から00年代までにわたるレパートリーを次々と演奏し倒すことになったライブの中で、夏秋さんのドラムが果たしてる役割が大きいことも感じてた。

 

なんていうのかな…、ムーンライダーズって、高度で複雑な装備をした重戦車みたいなもので、ものすごく戦闘能力が高いけど、これをライブで駆動させるのって、大変な力仕事だと思うんだよね、メンバー自身にとっても。その演奏を起動し燃焼させ続けるための、瞬発力の高いエンジンの役割を、今ライブで担ってるのが夏秋さんのドラムと良明さんのギターなんじゃないかなって。ずしっとした重たさとスピーディな緩急を併せ持つ夏秋さんのドラムが、ムーンライダーズの音の取っ付きに勢いよく手をかけ、そこから、バンド全体がぎゅんぎゅんドライヴしていく様(さま)、ちょっといわく言い難い凄みがある。今のムーンライダーズの演奏、まさに、重戦車がコーナー攻めながら疾走するのを見るような、あってはならない感があるもんね…(笑)。

 

と、そんなことを、ライダーズの中での夏秋さんのドラムについてはずっと感じてたので、まあ、ジャケに登場、も、リクツの上ではすんなり、です。が、しかし…、じっさいこのジャケ裏は、なんど見てもどきどきするね…。“うっとり”というより、夏秋さんの置かれてる立場の重さを想像して、こっちまで緊張で心臓が痛くなる(笑)。なにしろ、ほかでもない、ムーンライダーズだから…。今までサポートしてきた矢部さんにしろ坂田さんにしろそうだったと思うけど、この一筋縄でいかないおじさんたちの巣窟に丸腰で入っていくって、そして対等にやりあうって、そうとうハードだと思うよ。もちろんそれは、ミュージシャンとして最高にスリリングでエキサイティングで楽しい体験だってことも確実だけど!ああ、ムーンライダーズ、これから続くライブもほんとうに楽しみだな。

 

…と、以上、かなり妄想ぎみかつ偏った視点のエントリーだとは思うけど、個人的にここのところずっと感じてきたことを一気に書けた(昨夜放送の「ライブビート」関連で書こうと思ってたことまで書いちゃったな…)ので、私的思考のキロクってことでアップしときます。で、『Tokyo7』感想文は、まだまだダラダラと続く予定!

 

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