今年の私には、去年のof MontrealやYESほどわかりやすいブーム(アーティスト名がはっきりしてるという意味でわかりやすいだけですが…)は来ていないのだけど、それでも静かなムーヴメントは地下で潜行中。今年はなんといってもオルタナでエモでパワポでギタポな気分なのだ!!…と、えーと、ここは相変わらずコトバの定義がよくわかっていないのでじつはすごーく小さな声でしゃべってますが…。
で、最近ひっきりなしに回してるのはこれ。The Get Up Kids『GUILT SHOW』(04)。2005年に解散したこのバンドの、ラストオリジナルアルバムにあたるらしい。洋楽に疎い私、もちろんこんなバンドのこと名前さえ知りませんでした…。それがどうして行き合ったかというと、最近気に入ってるマンチェスターのインディーバンドThe Maple Stateが、「影響を受けた音楽」に挙げていたから。それで試聴してみて、このアルバムを買って、撃たれて沈んで今に至る。
ゲット・アップ・キッズ、「このバンドによって“エモ”という言葉が日本に根付いたといっても過言ではない」という存在らしい。私は「エモ」という言葉には、(その音楽を知りもしないのに、)あんまりいい印象を持ってなかった。私はたぶん、一生そのジャンルの音楽を聴くことはないだろうなとも。でも、たとえば「疾走感溢れ、正確なリズムとラウドなギターをベースにした」「哀愁のあるメロディと情緒的なボーカル」なんて言われたら(wikiの説明の一部より)、そんなの私がキライなわけないじゃんとも思ったり。
レッテルの話はともかく、中身。この『GUILT SHOW』という彼らのラストアルバムは、掛け値なしの名盤。こんなうつくしいアルバムが、つい4年前に出ていたなんて。4年前の(いや、今も)私のアンテナはとてもそんなところまでは届いていなかったから、リアルタイムで出合えなかったのは仕方ないけど。
アルバム通して楽曲は粒揃い。私が特に参ってるのはM4、M5、M8、M12あたり。
M4「Wouldn't Believe It」、ポップでゴキゲンでチープにさえ聞こえる曲調は、ふつうにロックする元気のいいお兄ちゃん、の印象なんだけど、曲のアウトロ(というかM5のイントロのようにも聴こえる)で突如まったく別のトラックが挿入されるところで鳥肌が立つ。にぎやかな街角から宇宙の闇に突然放り込まれるような、ジャズエレクトロニカ的な音の無機質なうつくしさ。なんていうセンスなんだろう。
そのインタールードを引き取って始まるM5「Holy Roman」が、またすばらしく完成度の高いポップソング。空に向かって歌い上げられるサビ~間奏の気の遠くなるような輝き!M8の「Sick In Her Skin」が途中からのめりこんでいくサイケデリック感もたまらない。
M9「In Your Sea」あたりで見せる、肩肘張らないそれでいて巧みなポップソングぶりがこのバンドの基本形なのかなと思いつつ、私にとってのとどめはM12の「Is There A Way Out」に尽きる。この曲はイントロからもうヤバい。メロディ、ボーカル、楽器の音、すべてがあまりにせつなすぎる。そして曲半ばからすさまじく壊れていくさまが、息をのむほどうつくしい。圧倒的な存在感に、1曲聴くと疲労にも似た感じをおぼえるほど。(of Montrealの「No Conclusion」を聴くときに近い。)
もちろんこの前にアルバム3枚の歴史を持っているバンドだから、これだけ取り出してアレコレ言うのもちがうんだと思うけど、このアルバムだけポンと手渡されたら、「エモ」という言葉はあまり思い浮かばないだろうな。ジャンル分けの遥か彼方に存在する、完成度の高いロックアルバムだと思う。
ところで、これまでまったく知らなかったこのバンドのことをここにきていろいろ調べてたら、再結成するって…ホントなのかな?