月夜のドライブ

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ジャック達「Beautiful Girls & Highlanders」 @ 新宿ニューベリー

画像5月のはじめ、「ピートさんがジャック達を脱退することになった」という知らせとともに告知されたのが、この日のライブだった。一色進、夏秋文尚、宙GGPキハラ、福島ピート幹夫、オリジナルメンバー4人では最後のライブになる、と。その告知から1カ月、ジャック達のことを考えてるような避けてるような、ライブの日が来てほしいような来てほしくないような、フクザツな気持ちでずっと過ごしていたのだけれど、そんな思いとは無関係に時間は前にしか進まないもので、とうとうきちゃった、2008年6月15日。

 

Newbury presents 2008
ALCOHOILIDAY SHOW TIME Vol.33
「Beautiful Girls & Highlanders」
2008.06.15 Sun
at 新宿・Newbury
出演:ジャック達
open 18:00 start 19:00
前売 2,500円 当日 3,000円(1 drink付)

 

■開演前

やっぱりこの日のライブだけは何が何でもどうしても前の席で見たかったので、早めにニューベリーに赴く。開場20分前。だって、入れなかったら困るし…。結果から言えばじゅうぶんすぎるほど早かったけど(笑)、でもこの日は店の外に列ができてたよー。ジャック達で列ができてるのを見るのはマンダラ2のレコ発(「シディ発」by一色)以来かな。で、開場。

 

この日は気持ちがずっとどっか遠くに飛んでて、ふわふわ雲の上歩いてるみたいで、開演を待つ1時間のあいだも落ち着かなくて。やっぱり、たいせつに思ってきたバンドに訪れたこれだけ大きな変化を、私はまだまだ受けとめきれてないんだな…って。(それは、今もだけど。)

 

■第一部

いつものように、客席のあいだの通り道をピートさん、夏秋さん、キハラさん、一色さんが入ってきて、楽器調整始める。夏秋さんは黒の、キハラさんは赤の、「JACK-TATI」Tシャツ。ピートさんはモータウンロゴの黒Tシャツ。一色さんは柄モノシャツにストローハット。ピートさんの「ブブブン」というベースの音や夏秋さんの「ドンドン…」という軽いキックの音が交錯するこの僅かな時間、いつもすごくシアワセ感じる。

 

で、7時ジャストにスタート。最初の曲は、「WHAT'S NEW LOVE SONG」。うわ…これが1曲めだなんて…。イントロの、大好きなシンバルの音にイキナリ参る。夏秋さんのドラムは今日も驚くほどデカイ音で鳴ってた。私は、ジャック達のいちばん最初のシングルという意味でこのナンバーを1曲めに持ってきたんだな…と思っていて、「アルバム全曲演奏」なんて壮大な企画には、一色さんのMCがあるまでまったく気付かないでいた。「恋はこりごり」。は~…相変わらず夏秋さんのドラムはカッコいいなあ…。この短いフレーズにも陰影と繊細さがあるのが凄い。3曲め「月光」。ファーストアルバムを聴き始めたばかりのころ(もう3年も前なんだね…)はそうでもなかったのに、今はこの曲や「みみずく」を演奏するジャック達がすごく好き。3年のあいだに、私も変化してる。

 

ここで一色さんのMC、「みなさんもお気付きのとおり…今日はアルバムに入ってるとおりの順番で全曲演奏します!」客席、大歓声。アルバムの曲順…、うわ、そう言われてみればそうか…。特にファーストに関しては、CDの中のアレンジと最近のライブでの演奏がすごく変わってきてるのでまったく別物のような感じがあって、まったく気付かなかった。しかし全曲演奏って…ジャック達の体力的には空前の企画だなあ…。

 

「I KNOW, SHE KNOWS」。間奏のピートさんのベース…そう、これが私が知ってるピートさん。クールなくせにすごく熱っぽく、ドライなくせしてとびきり甘くメロディアス。ピートさん自身もそんな人なんじゃないかな…、と勝手に妄想してるけど。それにしても…ピートさん最後のライブ、だなんてさ…。目の前のジャック達見てると、信じられないよ。「EASTEND JUKEBOX」、静けさから少しずつ破綻へと踏み外していくような夏秋さんのドラム、その音と結び合いながら高まっていく各楽器のテンションに、打ちのめされそうになりながら聴く。この魅力を知ってしまうと、ジャック達からはもう離れられないな…。

 

タイトルチューン「MY BEAUTIFUL GIRL」。ほっとくとどんどんセンチメンタルに傾く私は、やっぱりこの曲で“ジャック達前夜”のエピソードを思い出しちゃってた。この世でもっともうつくしい物語のひとつ。「MY BEAUTIFUL GIRL」というこの曲には、いつも「この4人を結び付けてくれてありがと」って思ってたし、4人最後の今日も、心の中でありったけの思いをこめてそうつぶやいた。「みみずく」も凄かったな…。1曲にこれだけの緊迫感をこめたら、ふつうはもう、あとの曲は適当に流すしかできないんじゃないかという、そのぐらい壮絶な演奏。でもね、この日はすべての曲がそんな迫力で演奏されてたんだ。全曲演奏という「数」よりも、その「質」が何よりすごかった。

 

で、次がモンダイの(笑)曲順まちがえで、「PICNIC FAMILY」、そして「MOTORCYCLE JUSTICE」と、CDと逆の順番で。誰か気付けよ(笑)!この2曲はライブで聴くのひさしぶりだったね。「MOTORCYCLE JUSTICE」なんて、えらいカッコイイ曲だとあらためて思ったな。このなんてことないリズムをこんなにイキイキ鳴らせるバンドって、やっぱりそうはいないと思うんだよね。いいバンドだなあ…ジャック達。

 

「STRANGE MOVE」、うはー夏秋さんのドラムカッコイイー!最初のフレーズから次に移るときの「チッ、チチーッ」ってきっかけのシンバルの音が、もうそれだけで、ハンフリー・ボガートのキメ台詞並にハートを直撃。ヤ・ヤバい、シンバルの音ひとつで墜ちそうだ…。そして「地球はまわる」で第一部は終わり。でも、夢のようだよね…このあとまだセカンドの曲をぜんぶ聴けるなんて。

 

■第二部

休憩はさんでセカンドパートへ突入。ピート曲のインストソルティ」は、4人の演奏でははじめてだったと思う。でもこれが、めっちゃカワイくてよかった!こういう曲を4人でこんなふうにセンスよく演奏できちゃうのを見ると、ジャック達って技術力のあるバンドだなーと思うのだ。で、「ソルティ」の終わり、キハラさんのトレモロギターが残るところへ夏秋さんのキックが入ってきて「オンボロ」。くー、カッコイイ!あのね、変な話だけど、私はここで自分の溶鉱炉に火種が入ったような感じがしたんだ。第一部では変にセンチメンタルモードに入ってしまって勝手にメソメソしてたんだけど、オンボロのこのイントロ聴いたら「キター!」って、カラダがカッと熱くなるような感じがして、急に元気出てきて。やーもう「オンボロ」の間奏ったら今日も凄かったなあ…。「凄い演奏」っていろいろあるけど、スケールの大きい雪崩を目の当たりにしてるようなこの感じって、ジャック達だけのものなんだよな…。

 

「キャンセル」。大切な大切な曲だから、アルバムどおりのこの位置で聴くのはもったいないような気もしちゃったけど。この曲を聴くと、特にピートさんが最後なんていうこんなライブで聴くと、やっぱりはじめてこの曲を聴いたジャック達初ワンマン@ニューベリー、のことを思い出してしまう。あのときの衝撃は今でも忘れられない。私にとってのジャック達は、慣性の法則だったことはいちどもなくて、ヴィヴィッドなあの「衝撃」がそのたび最新の恋の現場に私を引きずり出していくんだ。ただ、そのくりかえし。「キッチンでデート」はライブバージョンも大好き。カワイイんだけど荒っぽいのがベリー・ジャック達、と思う。間奏のスネアの音は、毎度のことながらカッコよすぎて崩壊寸前。ほんと夏秋さんのドラムは、何かに違反してると思う…何にかはわかんないけど…。

 

大大大好きな「乙女座ダンディライオン。でももう、「好きな曲」だなんて気付くのも曲が始まってしばらくしてからって感じ。それほど、演奏のほうが次々襲いかかってくるライブだった。この曲のドラムパターン、ライブのたびに毎回ちがってると思うんだけど、この日はじめて、かなりCDに近いパターンだったような気がして、すごくドキドキしちゃった。いつも好き勝手な格好してる男の子が、めずらしく制服着てるの見てかえってドキドキしちゃうみたいな。(←妄想すぎ) 

 

ここで前記事に書いたピートさんのトイレタイムがあり(笑)、ダラダラダラダラくっだらない話をさんざん展開したあげくに、スーパーソニック・トースター」!と言って、4つの楽器があのイントロをぶっ放す、その身の翻し方ったら鳥肌モノ。こんな落差のあるバンドって世界中にジャック達ぐらいだと思うよ…。最初のMCで「ちょっとズルもあるけど」全曲演奏、と言ってたのは「マラッカ」のことだったみたいで、なんと、めずらしく一色さんがソロでメロディをちょこっと撫で、そこから「ハイランド」。4人でのシンプルなライブバージョン、男っぽくてすごく好き。私ってつくづく、この4人のジャック達が好きなんだな…。

 

「ロッカバラッド・クロック」。もう、ライブで聴きたいと願ってた曲が手品みたいにぜんぶ出てくる。さすが全曲演奏。ふつうのバンドならどうがんばって演奏しても田舎町のビアガーデンのショータイム的に聞こえちゃいそうなこのナンバーを、どこまでもロックにどこまでも壮絶に鳴らすジャック達、稀有なバンドだなあ。キハラさんの甘ったるくて重たいギターソロ、最高!

 

次の曲は驚いた。この日いちばん驚いたかも。「セラピィ・アゲイン」。いつかのクリスマス・イヴ・ライブでCD-Rをプレゼントしておきながら、リハでカッコ悪くしかできなかったと言って生演奏は披露されず、レコ発でかろうじていちど演奏されたものの、その後はセットリストに上がることもまったくなく、「封印されたのか?」とまで思っていた(笑)あのナンバー。「見せ物の時間がやってきました…(笑)」とか「ヒロム、大丈夫?練習していいよ」「いや、ダメだったらもういちどやります」とかさんざん逡巡してたけど、始まってみたら超~カッコよかったよ!イントロのキハラさんのベタな早弾きも、70年代ぽくひずんだ間奏のギターも最高ー。こんなにカッコよくできるんだったら、もっとじゃんじゃんライブで演奏すればよかったのに。「やればできるジャック達」を痛感しました(って、子どもか…)。

 

セカンドもあと2曲。「スクーター・ガール」。タイトにキュートに突っ走るジャック達。もうここまでくると、寂しくて寂しくてしかたなくなる。終わらないでほしい…。最後のひとつ前に一色さんが「ゴーーーーー」って、夏秋さんの「・・・」をやって(笑)、そして、キハラさんの、うつくしい水滴みたいなギターのイントロが響き「水溜り画廊(ギャラリー)」。もうね…これは…この曲が、聴き手にどんなふうに伝わったかは、そのときそこにいた人にしかわからないし、それでいいんだろうと思う。4人の演奏が少しずつ壮絶さを増しながら登りつめていき、時間と空間を巻きこんで嵐のようにうねり始めたラストの凄さ。キハラさんのギターが、ピートさんのベースが、夏秋さんのドラムが、一色さんのギターが、それぞれ少しも譲ることなく鳴り響いてた。これがジャック達ってバンド。ほかのどこにもない、この4人だけの音。そうだよね。

 

■アンコール

大きな拍手に4人が出てきてくれてアンコール。…と思ったら、サプライズ!なんと、神園さやかさんが登場~~~!!!!これには本当にびっくり。ショートパンツで相変わらずキュートなさやかちゃん。ピートさんに花束を渡して、「卒業おめでとうございます!」ってニッコリ。卒業、そうかあ、卒業か…と、なんだか晴れやかな気持ちになる。さやかちゃん、すてきだな。で「せっかくだから1曲」と。前に一緒にやったことのある「恋はこりごり」とか…かなー、とぼんやり思っていたら、ナント神園さやか作詞・一色進作曲「地図にない道」!そうか、これがあったんだ…!不意討ちすぎてびっくりしたけど、この日ここでこの曲を聴けたの、すごくうれしかった。そう、これも確かにジャック達の足跡だから。聴けば聴くほど、スケールの大きな名曲。さやかちゃんの歌は堂々と高らかに響き、ピートさんの「卒業」を祝うようだったね。

 

さやかちゃんが去ったあと、一色さんが「これで終わっちゃアレなんでもう1曲…ピートさんとやる最後の曲は…新曲です」。客席、大爆笑。この期に及んで新曲って、一色進すぎる!「コメディエンヌ」。この曲、パッと聴き堺正章みたい~、と思ったよー(←私の言ってることだからあてにならないけど)。どんなにロックでも、どっかに歌謡曲っぽさ、GSっぽさ、B級っぽさが忍びこむの、一色さんならではだなー。

 

これで4人はステージを降りたのだけど、私も含めて、オーディエンス全員が「もう一度出てきて!」と強く求めずにはいられなくて、拍手、拍手。出てきてくれた一色さんは「もういいよ~」と言いながら、楽譜ファイルをガサガサ。4人ともガサガサやってたところ見ると、ほんとに予定外のアンコールだったんだね。で、最後の最後で私の願いがもうひとつかなっちゃった。「今すぐ帰りたい」。とっても聴きたかったから!!スリリングなビート、エキサイティングなギターリフ、甘いメロディ、魅惑のコード展開、ドキドキするコーラス、カッコよくない箇所が一瞬たりともない、余すところなくイカす曲。あー、ジャック達、大好き!!!!

 

■終演後

すべてが終わってしばらくは、目の前の、さっきまで信じがたい音を鳴らしていた楽器たちをぼーっと見ていた。時計を確かめるなんてこともすっかり忘れきっていたけれど、休憩も含めて3時間ぐらい演ってたのかな。

 

「Beautiful Girls & Highlanders」。このライブタイトルを決めたときすでに、ファーストとセカンドの全曲演奏という企画は決まってたんだろうか? それはわからないけれど、終わってみれば図らずも、アルバムの曲を順ぐりに演奏するというこの無骨とも思える進行の中で、ジャック達ってバンドは最大に輝いてた。ジャック達って、「音そのもの」なんだね、やっぱり。結局のところ、そこにしか彼らはいない。自分たちの曲をただ淡々と演奏していく彼らこそが、何よりもジャック達なんだなって思った。派手なことをするでもなく、奇をてらうでもなく、ただ、いい音を出すよろこびに衝かれて演奏せずにいられない彼ら。それこそがジャック達なんだなって。

 

一色さん、キハラさん、夏秋さん、そしてピートさん、すばらしいライブをありがとう!!ジャック達、大好き。今までも。これからも。

 

*セットリスト

01 WHAT'S NEW LOVE SONG
02 恋はこりごり
03 月光
04 I KNOW, SHE KNOWS
05 EASTEND JUKEBOX
06 MY BEAUTIFUL GIRL
07 みみずく
08 PICNIC FAMILY
09 MOTORCYCLE JUSTICE
10 STRANGE MOVE
11 地球はまわる

‐intermission-

12 ソルテ
13 オンボロ
14 キャンセル
15 キッチンでデート
16 乙女座ダンディライオン
17 スーパーソニック・トースター
18 マラッカ
19 ハイランド
20 ロッカバラッド・クロック
21 セラピィ・アゲイン
22 スクーター・ガール
23 ・・・
24 水溜り画廊

en1 地図にない道(with 神園さやか
en2 コメディエンヌ

en3 今すぐ帰りたい

 

画像