月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

DC5からオブモンへ

画像さらにゴキゲンな旅を続けてみたりしちゃおっと。of Montrealのディスコグラフィーの中でも、とりわけガッチャガチャにうるさくってイカした「バンド」の音がしてるのがコレ、『Aldhils Arboretum』(02)。of Montrealはアメリカのバンドだけど、もちろんフロントマンのKevin Barnes(はぁと)(←いちいち付けなくていい…)は、ブリティッシュ・ビートのエッセンスをカラダの隅々にまで巡らせてるソングライターであることはまちがいなくって、どのアルバム聴いてても、60年代のロンドンやマンチェスターのクラブで鳴ってたようなゴツゴツしたバンドサウンドをどっかに感じるんだよね、たとえそれがKevinひとりで形にした作品であっても。もーもー私などはそこがたまらなく好きーーー!!なワケですが。

 

で、この『Aldhils Arboretum』(しかし読みにくいタイトルばっかりだねオブモン…)。04~07年あたりのエレクトロニックな仕上がりのアルバム群を先に聴いてた私は、さかのぼって初めてこのアルバムにふれたとき、その生々しいバンドっぽさに逆にビックリしちゃった。私はまったく知らないけれど、これがリリースされたとき、メディアではきっと「ビートルズへのオマージュ」なんて、さんざん語られたんじゃないかな。だって、1曲め「Doing Nothing」のイントロのギターの響きったら、明らかに「I Feel Fine」!確信犯・ケヴィンのイタズラっぽい表情が、音の向こうに見えるよう。別の曲の中には“a long and winding road”なんて詞もふっと出てきたりするしね。5曲めの「The Blank Husband Epidemic」なんかも、相当ビートルズっぽい。アルバム全体で鳴ってるがさつな感じのドラムも、いつも以上に投げやりなボーカルも、めっちゃめちゃ勢いがあって、まわりを壊しそうだ!でも、メロディはやっぱり、ひねってねじってひっくり返して元に戻して素知らぬ顔、みたいな、いつものケヴィン節。「Isn't It Nice?」なんて、1週間みっちり歌の先生について練習したとしてもゼッタイ歌えなさそうだ…。

 

それにしても、これが02年の作品で、そこからたった5年で『Hissing Fauna, Are You The Destroyer?』の音像にまで道を開くケヴィン・バーンズの力は、つくづく恐るべき。それは『Aldhils Arboretum』が未熟で『Hissing Fauna~』が成熟した表現だとかいう意味ではまったくなくて、この2つの芯にあるものが同じだからこそ、そこからそれぞれの表現をこれだけの遠さに飛ばす行為が、どんなにか熾烈な遠心力を彼に強いるものだろう、と想像できるから。彼自身の中に、膨張する宇宙を抱えてるような、そんな感じじゃないかな。持ちこたえるのもぎりぎりの、相当ヘヴィーな感覚だろうと思う。もちろんそれが、彼の表現のエネルギーにもなっている(というか、そうするしかない)のだろうけど、ね…。

 

どうでもいい余談。昨夜8歳娘とお風呂に入ってたら、彼女が「英語が入った歌を歌いっこしよう」というので、つきあうことに。かわりばんこに「ABCの歌」とか「ハッピーバースデイの歌」とか「BINGO」とか児童らしいほのぼのレパートリーを歌ってたんだけど、答えに詰まった私が「What's New Love Song」(ジャック達)を出したら、娘が「あーそれもありか~。じゃああれも入るじゃん。うさぎの。ほっぺに赤いハムつけた人の。」……ケヴィンのことかよ!!USインディーが世界に誇る天才ソングライター・ケヴィンくんも、8歳娘にとっちゃ「ほっぺに赤いハムつけた人」でしかないようです…。ゴメン、ケヴィン。(その超どうでもいい顛末はココ。あと、彼女が言う「うさぎの」っていうのは、「Wraith Pinned To The Mist And Other Games」のPVのことを指してたのだった。)

 

*『Aldhils Arboretum』of Montreal